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入院15日目
※今日の内容は基本的にお見せできるものではなく、不快に思われる方も多いと予想し、画像はありません。悪しからずご容赦ください。
昨日の終わりに眠れそうだと書いたが、過覚醒状態で眠れないわ、寝ても何度も目覚めてしまうのは相変わらずだった。
それでも、ぎゅっと目を瞑って耐えれば、2時間気を失える。パッと引き戻され、1時間ほど寝返りを打ち、また1時間落ちる、というのをひたすら繰り返せるだけ救いである。
過度の心理的肉体的苦痛を伴っていない限り、睡眠導入剤には頼りたくない。修学旅行の教員の見回りじゃあるまいし、どうしても眠れないというのであれば開き直って、暗がりで本を読んだり、ネトフリを観始めたりすればよいだけのことである。
5時には完全に活動を始め、共用の洗面所で顔を洗い、ナースステーション付近の体重計で体重測定をした。そこで夜勤の看護師さんに捕まり、その場で体温や血圧、血糖の測定もしてもらえた。これらはいつもベッドのうえでダラダラと待っていたため、こちらとしても精神衛生上よくてウィンウィンである。明日も早めに起きたらナースステーションに顔を出そう。
本日のメインは、明後日に迫った腎生検の準備として、床上排泄の練習。腎生検直後、(背中を浮かせてはいけないため)ベッドに仰向けのまま排尿をして、それを先生に確認してもらわなくてはならないのだが、ここでいざ出ないということになれば導尿カテーテルを挿入する必要がある。そのための練習なので、かなり緊迫感があった。
万一汚してしまってもいいようにと二重にシーツを敷いてもらい、尿瓶を渡される。カーテンを閉められ、ここからは自分との闘い。
横になったままオシッコをするというのは、意外にも難しい。一度やってみてほしいのだが、身体がとてもそのような仕組みになっていないのが実感いただけると思う。
なぜ難しいのかは上記の記事を読んでもらえばわかるが、要は、立った状態であれば重力とともに自然に腹圧をかけられるので排尿しやすいのだが、横になった状態だと余分な筋肉の収縮や緊張が必要になってくる、ということらしい。
また、排尿のメカニズムとして、副交感神経が優位に働くことで排尿筋の弛緩が起こる。
床上排泄には文字どおり全集中の呼吸が必要なのだが、変に肩を強張らせてしまうと交感神経が優位となり排尿筋が収縮する。それではオシッコを我慢している状態と一緒なのである。多かれ少なかれ、心因性EDとかも似たようなメカニズムだと思う。
カーテン一枚で隔たれているといえど、そこにはベッドで仰向けになり下半身を露出させた22歳男性がいる。遠くから看護師さんの足音が聞こえるたびに、もうそこまできていた尿意がサッと顔を引っ込める。
いちおう「長谷川さーん」と声をかけてくれるも、カーテンを開くまでのインターバルが基本的に短い。「長谷川さーん」の「は」で開く人もいるし、開いてから「長谷川さーん」と声をかけてくる人もいる。
いつ開かれるものかとヒヤヒヤしながら、出ないものを必死で絞り出す作業は、余計に排尿筋を締め上げた。
ヤケになってお茶をがぶ飲みして、何度目かのトライ。もう膀胱は破裂寸前である。お腹の子を労わるように横になり、ラマーズ法で呼吸を整えたところ、ようやくダムが決壊した。と、思いきや、慣れない尿瓶に我が息子が拒絶反応を示し、力なく、それもあらぬ方向へと寝返りを打ち始めた。
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。
シーツを二枚重ねにしていてよかった。とりあえず手元のファブリーズで応急処置はしたものの、おねしょを親に打ち明ける心境でナースコールを押す。
来てくれたのは島田珠代似の看護師さんで、とても手際がよく、瞬く間にシーツが入れ替わった。「最初はみなさんよく汚されますので」と、慰めの言葉すらいただいた。
およそ二時間後、再度尿意が押し寄せてきたので、リベンジ。
今度は息子を宥め、なんとか尿瓶に溜めることに成功。ここ最近で一番嬉しかった。無意識でガッツポーズが出たくらいである。嬉しすぎて風呂の予約枠をすっぽかしてしまった。
僕は結構苦戦したほうだと思っていたが、初日では出ない人も多いらしく、他の看護師さんからも褒められた。尿瓶に溜まった尿をみて「すごーい」と言われてなんだかとても居た堪れない気持ちになりました。
その後も、何度も練習。コツは掴んだつもりだが、念のため明日も引き続き練習する予定である。
不安を拭うには、表向きにはなるようになれという表情をしておきながら、裏でそれに向けた準備を黙々と重ねるしかない。僕は基本的に横向きでないと寝れないのだが、今日は仰向けで寝れるかの練習もかねて床に就く。
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