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DeNA南場氏「コンサルティング経験は実業の足かせになる」は本当に正しいのか?

こんにちは、伊藤祐です。Zenyum Japan(ゼニュムジャパン)という透明マウスピース矯正サービス企業の代表取締役社長を務めております。

今日は、「コンサルティング経験の実業への有用性」に関して、コンサルティング経験を積んだうえで事業会社の経営をしている実体験をベースに考えていきます。

DeNA創業者である南場智子氏のインタビュー動画を拝見し、この件について改めて考えてみたいなと思いました。インタビュアーの方の「もし南場さんが21歳に戻れるなら?」という質問に対して、以下のように回答されていました。

私ねだからね、コンサル行っちゃったんだけど、コンサルは絶対行かないな。私やっぱりいまだに残っている”実業家としては不要な水”をまだまだ完全に入れ替えるのに結構苦労しているところはあるんだ、正直。ロジックが先に立っちゃうし、理屈が先に立っちゃうし、やっぱり賢くて頼りになる人と思われなきゃいけないっていうさ、ちょっと背伸びをする癖とか、インプレスしようとしちゃう癖とか、ちょっと知ったかぶりをする癖とか、すごく戦ってるよ。

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上記は南場氏の素直で本音の回答かと思います。ただ、南場氏にとってこれが正だとしても、「本当にコンサルティング経験は実業にとって”不要な水”である」という説が、全員にとって当てはまるわけでもないと思います。この南場氏の発言を切り取って「やっぱりコンサルは意味ないんだ!」と考える方も一部いらっしゃるのではないかと思います。

ぼくは新卒でアクセンチュアというコンサルティングファームに入社し、そこで約4年半コンサルタントとして経験を積みました。その後、フロスト&サリバンという別のコンサルティングファームで約3年半働きました。合わせて8年ほどコンサルタントとして働いたことになります。その後、事業会社で経営企画として働き、現在Zenyum Japanの代表取締役社長として経営をしています。直近3年間は事業会社で働いていますが、20代はコンサルタントという立場で経験を積みました。

「コンサルティング経験は不要だった」と考えているかというと、そんなことはないです。むしろ真逆で、「コンサルティング経験がなければ、事業会社の経営者になることは不可能だった」と思っています。

ぼくはロジックとか数字にはあまり強くなく、直感とノリで動くタイプです。コンサルタントとして働いていく中で、それとは真逆の「理詰め」「分かりやすい表現」「数字」「具体的」という思考/行動を習慣づける必要があり、とても苦しかった覚えがあります。ただ、そのような思考/行動は、経営をしていくにあたって必ず必要になる要素です。

事業経営をするにあたり、短時間である程度の情報を集め、それを並べて現状把握、課題抽出、打ち手立案をし、アクションプランに落としていく、という流れはとても重要ですし、それをある程度のクオリティでできているのは、コンサルティング経験のおかげに他なりません。

コンサルティング経験を長く積んでいると「ロジックや理屈が先に立っちゃう」「ちょっと背伸びをしたり知ったかぶりをしたり、相手にすごい!と思わせようとしちゃう」という南場氏の主張は本当におっしゃる通りです。「ロジカル」「人からすごいと思われたい」という組み合わせは、すぐに「なんか鼻につくイヤなヤツ」になってしまうというリスクもはらみますし、それは確かに実際に事業を回していくうえでは大きなデメリットになります。

とはいえ、コンサルティングファームで学べることが経営においてデメリットばかりか?というとそんなことはありません。南場氏のように「コンサルティング経験は邪魔になる」と仰っている方は、論理性や数字で語る力がもともと強いところに、コンサルティング経験でさらにその能力に磨きがかかってしまったタイプなのかな、と思います。

一方、「コンサルティング経験は経営をするにあたってとても役立っている」と捉えているぼくのようなタイプの方は、もしかしたらもともとの論理性やビジネスモデルの理解度合いがそこまで強くなく、それをコンサルティング経験で磨くことができたタイプなのではないでしょうか。

 「コンサルティング経験は実業の足かせになるかどうか」は、究極的には各個人によって捉え方が変わりますし、「コンサルティング経験」「実業」も、決してひとつには収斂しないワードです。とはいえ、その人のもともと有している適性や能力に応じて、「コンサルティング経験のおかげで事業経営をスムーズに回せるようになる」という側面もあります。現在コンサルティングファームで働いている人も、あまり卑下することなく、胸を張って仕事を進めていってもらえればいいなと思います。

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