「自分には何の強みもない」という不安を解消するmy Brandの作り方

株式会社刀の代表取締役、森岡さんの著書の一つに、キャリアをテーマにした「苦しかったときの話をしようか」がある。

もともとは娘さんに向けて書かれた私的な文章だったとのことで、良い意味で非常にフランクで読みやすい。中でも「my Brand」の設計方法は、「自分には何の強みもない、何もできない」と感じてしまっている場合、すぐに実施してみることをおすすめする。

my Brandを作ってみる

自分自身、コンサルタントから経営企画、経営者とキャリアを積んできたものの、いつでも心の底では「自分って何ができるんやろ」と思っている。それをずっと抱えて社会生活を送っていくのもあまり健康的ではないので、改めてmy Brandを作ってみる。

引用:苦しかったときの話をしようか
引用:苦しかったときの話をしようか

これを作る際のコツや注意点はいろいろあるのだが、森岡さんが「苦しかったときの話をしようか」の中で非常にわかりやすく丁寧に書いてくださっているので、詳細が気になる人はぜひ読んでみてほしい。

これ、実際作ってみるとわかるのだが、なかなか難しい。

森岡さんも本の中でいっているように、現時点でこのブランドが確立している必要はない。未来において「こうなりたい、こうなるのだ」という設計図であるため、現時点で便益やRTB、手段やキャラクターが実像とかけ離れていても問題はない。それはわかっていても、ぼくたちは現在の自分をベースに考えるため、枠を広げきった設計図を作るのは簡単ではない。それに、シンプルに気恥ずかしい。笑

とはいうものの、それで止まってしまっては永遠にmy Brandの構築はできない。つまり、「自分って何ができるんやろ」という鬱屈した思いから抜け出ることができず、流されるがままにキャリアを歩んでいくということになる。当たり前だがそれは普通にイヤなので、頑張って自分verのmy Brandを作ってみた。

作ってみた

社会に出てからのコンサルティングや経営企画、経営者としての経験、自分の強みや得意なこと、実績などなどを組み合わせつつ、ざっと作ってみた。

my Brand設計における4つのポイント

my Brand設計にあたって、ポイントは4つあると森岡さんは述べている。

1.Valuable: 価値は十分強いか?

これが最も大切なポイントだ。定義された価値そのものが強いことが最も大事。なぜならば、相手にとって十分な価値のあるWHAT(便益)になっていないと、先方は君を買う必然性がないからだ。企業におけるほしい人材の価値にはさまざまなパターンがある。自分の価値の定義にはさまざまな正解があるだろう。どの要素で勝負しても良いが、少なくとも選んで勝負した価値が、向こうが欲しい人物像の急所を射抜いていると強い。

出典:苦しかったときの話をしようか

少し前に、「外資系企業の日本法人経営」という分野における、需要(外資系企業日本法人経営者のポスト)と供給(外資系企業日本法人経営者になりたい&なれる人の数)を調べ、まとめたことがある。

日本は縮小しているとはいえ、引き続きグローバルで見ても大きな市場である。購買力も高く、国としてのリスクも比較的低い。参入する魅力は十分にあるマーケットだ。一方、独特の商習慣や言語やカルチャーの壁があり、チャレンジするにはハードルがそこそこ高かったりもする。

そんな中で、日本に合わせてローカライズし、法人立ち上げからユニットエコノミクスの設定、PL責任を負ったうえでの事業運営をスムーズにしてくれる人材は一定の価値がある、という仮説は成り立つように思う。

実際、そこまで多くはないものの、外資系企業の日本法人立ち上げやカントリーマネージャーの仕事は定期的にLinkedIn等で目にすることがある。一般的なキャリアとは言えないものの、価値を感じてくれる人・会社はある程度いると言えるだろう。

2.Believable: 信じられるか?

どれだけWHATで強いことを言っても、実際に相手に信じさせることができなければ、相手は君の価値を評価することはない。自己認識に問題がある人間、あるいは嘘つきで信用ならない人間と思われて終わってしまう。したがって、自分の価値を相手に信じさせるためにエビデンスとなるRTBを明確にそろえておく。経歴書はそのエビデンスとなるRTBのショールームのように書かねばならない。

出典:苦しかったときの話をしようか

森岡さんも本の中で述べているが、結局重要なのは「問答無用な実績」だ。認知を広げるためにいろいろなところに顔を出したり、情報発信するのももちろん意味はあると思うが、実績がないのにそのようなセルフプロモーションに精を出しても、あまり意味はない。むしろ、プロフェッショナル達からしたらマイナスイメージを持たれる可能性のほうが高い。

だからこそ、今この瞬間のこの仕事に全身全霊を尽くし、なんとしても結果を出すことが重要になる。それさえできれば、自然とRTB(Reason to Believe - 信じる理由)が強化されていく。経歴書の内容も濃くなるし、話の内容も然り。自分の場合、幸いなことに日本におけるビジネスの全責任を負っている立場であるので、どこまでしっかり伸ばせるかにかかっている。

問答無用な実績に比べると劣後はするが、再現性を高めるための型化、言語化もしておくべき。人の記憶は本当にアテにならないもので、少し時間が過ぎたらほとんどのことは忘れてしまう。すべてを覚えておくことはできないにせよ、my Brandにおいて重要なプロセスについては、可能な限りわかりやすく、かつ詳細に言語化しておくと良いだろう。セルフプロモーションのためというよりも、同じことを再度やる必要が出たときの時間短縮やクオリティ担保、および自身の知見汎化による人材育成が主目的となる。

自分の場合はRTB二つ目の「日本GTMのプレイブック」がそれにあたる。今までも、以下のマガジンでプレイブック化は進めているが、より詳細に、かつ濃いものを書き続けていく。

3.Distinctive: 際立っているか?

転職だろうが新卒の就活だろうが、他の候補者たちの中に沈んでしまっていては面接を勝ち抜くことは難しい。君自身を差別化するブランド戦略が必要だ。正直言って、面接官も同じようなつまらない話ばかり聞いていると飽きてくるのだ。「おっ!」と君を際立たせる要素があればあるほど、君が選ばれる確率は上がるだろう。

出典:苦しかったときの話をしようか

日本に進出したい外資系企業は一定以上いるにもかかわらず、なかなかそれが困難な理由として「独特の商習慣や言語やカルチャーの壁」を先ほど挙げたが、実はそれ以上にクリティカルな理由の一つが「日本法人を統括できる候補者の不足」ではないかと感じている。

日本法人社長という立場になる際、もちろんある程度のレベルの英語力は必要となる。そして、この「ある程度のレベルの英語力」により、候補者がかなり絞られてしまう。さらに、PL責任を背負ってビジネスを回したことがあったり、ゼロイチで法人立ち上げから基盤づくりをしたり、コンサルティング経験があったり…などなどのMust have寄りのNice to have要件を積み上げていくと、意外とパイプラインが少ない。そういう意味では、一定程度の際立ちはあるように思う。

後は、実際に日本で知らない人がいない、とまではいかなくとも、業界内でトップクラスの企業になるまで育て上げることができれば、その経験そのものがDistinctiveになるだろう。

4.Congruent: 自分の本質と一致しているか?

強い価値や、素晴らしいRTBは紙の上だけならば好きなように書けるし、良心がなければ好きなように相手に大言壮語することもできる。別人格を演じて内定を取ろうと思うなら、君が大女優であれば不可能ではないかもしれない。しかしそうやって、実際の自分とは別人格を設計することは、君のキャリアの成功のために正しいだろうか?ここまで散々伝えてきたように、君のキャリアの成功が君の特徴を活用することを必須条件にしていることを考えれば、別人格でブランド設計することは、最悪の極みであることは明白であろう。

出典:苦しかったときの話をしようか

このmy Brandは、今までの経験から見えてきた自分の得意分野、やっていて楽しいこと、かつ需要が見込めることを中心に作成した。もしかしたら、さらに経験を積んでいくことで、もっともっと自分の本質に近しいものが出てくるかもしれない。

一方、実際に外資系企業の日本法人を統括するという経験をしてみて、やはりエキサイティングでもあるし、一定以上の適性はあるように感じる。少なくとも、CFOなり会計士なりプログラマーなどの専門職と比した場合、自分のパフォーマンスや情熱を注げるものであることは間違いない。しかしながら、まだ自身の社会生活は前半である。今後の経験により、さらに自身の本質が見えてきて、より自分らしいmy Brandの再設計をする機会もあるだろう。

my Brand = 虫眼鏡

my Brandを築くことは、太陽光を集める虫眼鏡のように、これから君が積み上げる努力の1つ1つの焦点を合わせて大きなエネルギーに凝縮させるだろう。ブランドのエネルギーが貯まれば貯まるほど、君の努力の投資効率は信じられないくらいに上がっていく。実績を出すチャンスをつかむ確率を劇的に上げていく。そしてブランドは更に強くなっていく。君自身をそうやって"ブランド"にしていくのだ。

出典:苦しかったときの話をしようか

残念ながらぼくらの時間は有限であり、あれもこれもできるスーパーマンにはなれない。とはいえ、ぼーっと生きているといろいろな方面から「あれやれこれやれ」と要請され続け、なんとか見よう見まねでこなすものの結局残るものは何もない、ということになる。

もちろん、脳死でハードワークしまくってその結果何かが残ればいいな、というのもアリっちゃアリだが、それができるのは体力&メンタルおばけだったり、家族や趣味を捨て去り仕事に全集中する修羅の道を選択している人である。

ぼーっとやって何も残るものがなく、使われ続けるだけのキャリアはもちろんイヤだ。とはいえ、とにかくハードワークし続けて何かが残ることを祈る運任せも歓迎できない。となると、限られた時間の中でやっている仕事や勉強のエネルギーや成果を一点に集中させ、「この人はこういうときにこういう価値を提供できるんだな」というブランドを創りあげる必要がある。

再掲

このmy Brandは初めて作ったものであるため、この後も修正していく必要はある。それでも、自分がどのような努力をすべきなのか、その羅針盤としては十分だと感じる。今の仕事で十二分に達成できているところも、まだまだであるところもあるが、このmy Brandに沿ってRTBを積み重ねていけば、ご飯を食べていけないことはないかな?という気がする。

ぼく同様に不安を抱えている人は、ぜひ一度やってみることをオススメしたい。

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