見出し画像

読書録011:HARD THINGS

読書録011です。シリコンバレーのベンチャーキャピタル(VC)、アンドリーセン・ホロウィッツ創業者、ベン・ホロウィッツの「HARD THINGS」です。

ビジネス書として学べるところはもちろんたくさんあるのですが、「起業家」「経営者」のリアルなストーリーが赤裸々に語られており、「自分は本当にこのような経験がしたいのか?」と自問自答するためにも大いに有用な本だと思います。

この本を読んで、「自分もこんな経験がしたい!!」と思えるか、「いやいや絶対こんなの嫌だ…」と思うか、大きく分かれると思います。前者の人は、ぜひ起業や経営というHARD THINGSに挑んでみるとよいのではと!

本書からの抜粋

  • メンドーサ監督はどんな行動が受け入れられない者かを詳しく説明した。「練習に遅れて来る?辞めちまえ!ぶつかり合いが嫌だ?辞めちまえ!全力で走らない?辞めちまえ!オレをチコと呼ぶ?辞めちまえ!」 これはそれまで私が聞いた中で最高に強烈な、詩的でさえあるスピーチだった。私は一発で気に入った。私は家に帰るなり、母親にこの話をした。母親は仰天し、恐ろしく思ったようだが、私はともかくこのスピーチが気に入った。後で考えると、これが私がリーダーシップというものを学んだ最初だった。コリン・パウエル元国務長官は「リーダーシップというのはたとえ好奇心からにせよ、人を自分の後に続かせる能力だ」と言った。私はメンドーサ監督が次に何を言うのか興味津々で、後に続くことを決めたのだった。

  • 「成功するCEOの秘訣は何か」とよく聞かれるが、残念ながら秘訣はない。ただし、際立ったスキルがひとつあるとすれば、良い手がないときに集中して最善の手を打つ能力だ。逃げたり死んだりしてしまいたいと思う瞬間こそ、CEOとして最大の違いを見せられるときである。

  • 困難は、おそらくすべてあなたの責任だろう。人を雇ったのも、決断したのもあなただ。あなたは、リスクがあることを知っていた。誰でも過ちを犯す。どのCEOも、無数の過ちを犯す。自分を評価して、「不可」を付けたところで慰めにもならない。

  • 私は会社の問題を心配することが自分の唯一の仕事だと思っていた。もっと秩序立てて考えていれば、心配しているのは私ひとりで、たとえば製品がどこかしっくりこないのは私がプログラムを修正しないからだと考えるなんて意味がない、と気づいたはずだ。その問題を修正できるだけでなく、熱中して意義を感じられる人間に任せるほうがずっとよい。

  • 「ベン、きみとマイクが探そうとしている特効薬は悪くないが、われわれのウェブサーバーは5倍遅いんだ。それを直せる特効薬は存在しない。だから、われわれは何にでも効く魔法の銀の弾丸ではなく、鉛の弾丸を大量に使うしかない」

  • 良い組織では、人々が自分の仕事に集中し、その仕事をやり遂げれば会社にも自分自身にも良いことが起こると確信している。こういう組織で働けることは真の喜びだ。誰もが朝起きたとき、自分のする仕事は効率的で効果的で、組織にも自分にも何か変化をもたらすとわかっている。それが、彼らの仕事への意欲を高め、満足感を与える。一方で不健全な組織では、みんなが多くの時間を組織の壁や内紛や崩壊したプロセスとの戦い費やしている。自分の仕事が何なのかさえ明確になっていないので、自分が役割を果たしているかどうかを知る由もない。非常識なほど働いて仕事を成し遂げた奇跡的なケースでさえ、それが会社や自分たちのキャリアにとって何を意味をするのかまったくわかっていない。すべてをより深刻にし、いっそう事態を悪化させることがある。それは、彼らがようやく勇気をふりしぼって、いかに現状が腐敗しているかを訴え出たとき、経営陣が問題の存在を否定し、現状を擁護し、そして問題を無視することだ。

  • 皮肉なことに、教育プログラムを整備するうえで最大の障壁は、時間がかかりすぎるという人々の認識にある。会社の生産性を改善するために、これ以上の投資はないことを肝に銘じること。忙しすぎて教育ができないというのは、腹が減りすぎて食べられないというのと同じだ。しかも、基礎的な教育コースを作ることは、さほど難しくない。

  • 自分が何が欲しいのかを知る一番の方法は、その役割を演じてみることだ。肩書だけでなく、実際に行動するという意味だ。私はこれまでに、人事担当副社長、CFOとセールス責任者を兼務してきた。CEOは、実務的な役職の兼任を嫌うことが多いが、それは自分の知識不足を心配するからだ。この心配こそ、CEOが兼務すべき理由そのものだー適切な知識を得るために兼務するのだ。実際、採用に必要な知識のすべてを得る唯一の方法は、その役割を演じることだ。あなたが探しているのは自分の会社にとって最適な幹部であって、汎用の幹部ではないからだ。

  • 私が真に知る優秀で、真に経験あるCEOたち全員に共通する重要な特徴がある。彼らは、組織的問題に対してあえて困難な答えを選択する。全員に同じボーナスを渡して丸く収めるか、実績を強く反映した報酬を与えて事を荒立てるかという場面に立ったとき、彼らは事を荒立てる。人気のプロジェクトをあらかじめ長期計画に入れていなかったという理由で今すぐ打ち切るか、士気を高めるために継続するかという選択を迫られたとき、優れたCEOは今日打ち切る。なぜか、それは優秀なCEOには依然、経営的負債を支払った経験があり、二度と同じ失敗はしたくないからだ。

  • 私は成功したCEOに出会うたびに「どうやって成功したのか?」と尋ねてきた。凡庸なCEOは、優れた戦略的着眼やビジネスセンスなど、自己満足的な理由を挙げた。しかし偉大なCEOたちの答えは驚くほど似通っていた。彼らは異口同音に「私は投げ出さなかった」と答えた。

  • 平時のCEOは会社が現在持っている優位性をもっとも効果的に利用し、それをさらに拡大することが任務だ。そのため、平時のリーダーは部下からできる限り幅広く創造性を引き出し、多様な可能性を探ることが必要となる。しかし戦時のCEOの任務はこれと逆だ。会社にすでに弾丸が一発しか残っていない状況では、その一発に必中を期するしかない。戦時には社員が任務を死守し、厳格に遂行できるかどうかに会社の生き残りがかかることになる。

  • フィードバックを与えるのは相手の成功を助けるためであり、失敗を願うからではない。相手の成功を願っているなら、それを相手に感じさせよ。感情を伝える努力をせよ。相手があなたは味方だと感じられれば、あなたの言葉に真剣に耳を傾ける。

  • 優秀なCEOに必要とされる能力はさまざまだ。繰り返すが、生まれながらCEOであったかのように自らを鍛え上げる基礎能力は、「不自然さに耐える」ことだ。もしあなたが創業者CEOで、自分がCEOとして無能だという意識を振り払えず、会社がどんどん成長していったらいったい何をしていいのかわからないと感じるなら、CEOクラブへようこそ。誰もがその恐怖を抱くのだ。私もまったく同じ感情を抱いた。私が会ったほかのCEOも例外なくそうだった。これは避けて通れない過程なのだ。それこそがCEOが作られるプロセスだ。

  • 苦闘を愛せ。今、私は日々起業家と接しているが、一番伝えたいのはこの教えだ。自分の独特の性格を愛せ。生い立ちを愛せ。直感を愛せ。成功の鍵はそこにしかない。私は彼らに前途に待ち受ける困難さを伝えることはできるが、困難に直面したときに何をすべきかは、彼が自ら判断する以外ない。私にできるのは、それを見出すための手助けだけだ。私はCEOでいる間、一度も心の平和を得られなかったが、運が良ければ時にはそれも得られるだろう。しかし、世界中の助言と後知恵を集めても困難な物事は困難なままだ。最後に私は、困難に立ち向かうすべての人々に「幸多かれ、夢の実現あれ」という言葉を贈りたい。

感想など

大きなくくりだとビジネス書ですが、現在経営者として悪戦苦闘している人、および今後起業していきたい人を応援する気持ちがにじみ出ているとても熱い本でした。キレイにまとめようとはあえてしておらず、自らの苦闘をベースにリアルなアドバイスがちりばめている良書でした。

ぼくは、創業者のもとで日本市場拡大をミッションとして働いている雇われ社長である一方で、Zenyum Japanの創業社長でもあります。ヘッドクォーターとの協力はもちろん強固にしていきますが、「自身が創業者兼CEOである」という強い気持ちを持ち、ひとつひとつの意思決定の精度を上げ、ハンズオンで事業を伸ばしていくことによりコミットしていこうと思えました。がんばるぞー。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?