遺産分割協議で相続争いが起こった!対処法や対策法をご紹介
遺産分割協議は、相続人全員が納得する形に分配する必要があります。しかし、万が一遺産分割協議の中でトラブルが発生してしまった場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
遺産相続トラブルは「自分には関係ない!」と考えている人も多いと思います。しかし、それまではとても仲の良い家族であったものの、いざ遺産相続が起こると親族間の感情的な問題が絡んで相続トラブルに発展し、その後の関係に影響を与えてしまうことはしばしばあります。
今回は、そんな相続トラブルが起こってしまった場合にどう対処するべきか、また、相続トラブルを未然に防ぐためにはどうしたらよいのかについて詳しくご説明いたします。
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1. 遺産分割協議とは?
遺産分割協議とは、相続人が集まり、誰が、どの財産を、どのくらいの割合で相続するのかを話し合うことです。被相続人が有効な遺言を遺していない場合や、遺言の中で配分先が指定されていない相続財産がある場合は、この遺産分割協議による話し合いで財産の分割割合を決定します。
また、遺産分割協議は必ず相続人全員で行う必要があります。万が一遠方に住んでいる相続人がいる場合でも、電話やメールなどを使って意思疎通を行い、必ず相続人全員が参加しなければなりません。
重要なのは、最終的に相続人の全員が合意しているということです。つまり、誰か1人が反対していれば遺産分割協議は成り立たないということです。
2. 遺産分割協議の流れ
まずは、遺産分割協議行うまでにどのような手順を踏むのか、流れを確認しましょう。相続が発生してから遺産分割協議を行うまでの流れは次の通りです。
step1. 相続人を確定させる
遺産分割協議を行う前に、まずは協議に参加する相続人を確定させる必要があります。そのためには、被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本を取り寄せて、相続人の確定を行います。
step2. 被相続人の財産の洗い出しを行う
続いて、被相続人の財産を全て洗い出す作業を行います。相続財産は、預貯金や不動産などのプラスの財産だけではなく、住宅ローンや借金などのマイナスの財産も調べる必要があります。
もし遺産分割協議の後に見落としていた財産が発見されると、また一から協議をやり直さなければならない可能性も出てきます。
《参考》
相続財産の調べ方は?探し方や財産目録の作成方法まで解説|TASKI-相続税申告書作成システム-【相続・終活】|note
step3. 遺産分割協議を行う
相続人の確定と財産の洗い出しが済んだら、ようやく遺産分割協議に入ります。遺産分割協議では、相続人それぞれの意見があるため想定していたよりも時間がかかってしまうことは少なくありません。協議が長引くことを想定し、できるだけ早めに遺産分割協議を開始するようにしましょう。
最後に、遺産分割協議で相続人全員の合意が取れたら、その内容を遺産分割協議書に記します。
3. 相続争いは富裕層だけの問題ではない!?
ところでみなさんは、「相続トラブルは相続税がたくさんかかる富裕層の方の問題だから、私には関係ない」と思っていませんか?実はその考えは間違っています。遺産相続トラブルの多くは遺産総額5,000万円以下の一般中流家庭で起こっています。
令和2年の裁判所の司法統計によると、遺産分割事件が起こった中での遺産の額は、1,000万円以下の件が34.7%、1,000万円超5,000万円以下の件が42.9%となっており、約8割の事件は遺産総額が5,000万円以下だということがわかっています。このように、相続トラブルはごく普通のご家庭でも起こっており、誰でも身近に起こり得る問題なのです。
また、相続トラブルの全体件数は近年増加傾向にあります。同じく統計によると、平成14年における遺産分割調停や審判の事件数は11,223件でしたが、平成24年には15,286件とな約1.4倍に増加しています。この数値からもわかるように「まさか自分が…」と考えている方でも、相続トラブルは決して他人事とは言えない問題になりつつあります。
4. 遺産分割協議が長引けば長引くほどデメリットが多い!
相続トラブルが起こるとその分遺産分割協議が長引いてしまい、協議がまとまるまでに時間を要してしまいます。相続税申告が必要な方は、期限に間に合えばゆっくり話し合えばよいのでは?と考えがちですが、実は協議がなかなかまとまらなかった場合に起こるデメリットはたくさんあります。
①名義変更ができない
遺産分割協議がまとまらないと、あらゆる相続財産の名義変更ができないままでいることになります。特に不動産の名義変更ができないでいると、いざ不動産を売却しようとしても相続人全員の共有財産という扱いになっているため、相続人全員の合意が必要になります。
また、銀行預金の名義変更もできないため、遺産分割がまとまるまでは口座凍結のままとなってしまい預金の引き出しができません。そのほか株式や債券といった金融商品も同様です。
②相続放棄や限定承認の期限に間に合わない
相続はプラスの財産だけでなく借金などの「マイナスの財産」も相続することになります。しかし、故人に多額の借金が見つかった場合、相続人は「相続放棄」または「限定承認」を選択すればマイナスの財産を承継しなくてよくなります。これらの相続放棄・限定承認は、原則として「被相続人の死亡を知ったときから3か月」の熟慮期間内に手続きを行う必要があります。
相続トラブルで遺産分割協議がだらだらと長引いてしまうと、この3カ月の熟慮期間がいつの間にか過ぎていたということにもなりかねません。
ただし、3カ月の熟慮期間は正当な事情があると家庭裁判所に認められれば伸ばすことも可能なので、話し合いがまとまっていないまま焦って相続放棄や限定承認を選択してしまうことのないようにしましょう。
③相続財産の活用ができない
遺産分割協議が長びくということは、その期間にせっかくの相続財産を活用できないというデメリットもあります。例えば、預貯金があっても出金ができなかったり、不動産がある場合は賃貸に出して収益を得たりと有効に活用できるはずのものができなくなります。
それにもかかわらず、不動産は所有しているだけでも毎年固定資産税やその他管理コストもかかるので、相続トラブルが長引けば長引くほど損失も多くなってしまう可能性が高いです。
以上より、遺産分割協議が長引くとこのような様々なデメリットがあるため、なるべく相続トラブルを避けてスムーズな遺産相続を目指しましょう。
5. 相続トラブルが起こった場合の対処法はこちら!
先ほど、遺産分割協議が長引くと様々なデメリットがあるとご説明しましたが、万が一相続トラブルが起きてしまった場合は争いを長引かせないよう、落ち着いて早期に解決させることが重要です。
では、相続トラブルが起こってしまった場合の対処法をご説明します。
5-1. 不動産を現金化する
遺産の中に不動産があると相続トラブルが起こりやすいと言われています。その理由の一つは不動産の分け方が複雑なことにあります。現金や預貯金などであれば、単純に法定相続分に応じて分割ができますが、不動産はそういうわけにはいきません。
不動産はそのままの状態では分けにくいですが、売却して金銭に換えれば簡単に分けることができます。ちなみに、このような不動産を現金化してから分ける遺産分割の方法を「換価分割」といいます。
もちろん、相続人の中に一人でも不動産を売却したくない人がいれば換価分割は実行できないため、この解決方法は相続人全員が換価分割に賛成することが前提条件になります。
5-2. 代償分割をする
代償分割とは、特定の相続人が相続分を超える財産を相続する代わりに、その他の相続人に対し代償金を支払うという遺産分割の方法です。
もし不動産を売却したい相続人と売却したくない相続人とで争いになった場合は、代償分割を検討してみると良いでしょう。代償分割を選択すれば、不動産を現金化することなく各相続人が法定相続分財産の額を取得することができるからです。
5-3. 話し合いで解決できなければ遺産分割調停を申し立てる
話し合いがなかなかまとまらず当事者だけで解決が難しい場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てて解決を目指しましょう。
調停とは、裁判所を利用して当事者間が話し合いをする方法です。具体的には、調停委員が間に入って当事者の意見を聞き入れ、妥協案を提示して話し合いで解決を目指します。
ただし、調停はあくまで話し合いの延長であるため、裁判所が財産の分割方法を決めるものではありません。調停の申し立ての詳細については裁判所のホームページに公開されているので、そちらをご覧ください。
《参考》
遺産分割調停 | 裁判所 (courts.go.jp)
5-4. 遺産分割調停で解決しなければ遺産分割審判へ移行する
もし、遺産分割調停をしても相続人同士の争いが解決しない場合には、遺産分割審判を申し立てることになります。
遺産分割審判は、裁判官が当事者の言い分を聞き入れて、さらに相続人が提出した書類や調査官による調査結果などの資料に基づいて遺産分割方法を決めることです。
また、調停から審判で解決するまでの期間は、ケースにより異なりますがおよそ数ヶ月〜約1年ほどかかると見込んでおくとよいでしょう。相続発生後は他にも様々な手続きの期限がありかなり忙しいため、相続トラブルが起こってしまうとかなりの時間と手間がかかり相続人の負担も大きいことがわかります。
6. 相続争いを未然に防ぐ方法とは?
相続トラブルへの対処法を見ていきましたが、もし相続トラブルをを未然に防ぐことができるのであれば誰しも防ぎたいと考えますよね。では、相続争いを未然に防止するためにできることをご説明していきます。
・遺言書を作成する
まず、遺言書の作成は相続トラブルを避ける最善の方法といえるでしょう。なぜなら、遺言書は亡くなられた方の意思ということもあり、相続人は納得して遺言書通りに遺産分割を終えられる可能性が高いです。
ただし、遺言書を作成する場合は「遺留分」の存在に十分な配慮をして作成する必要があります。遺留分を侵害した遺言書を作成すると、かえって争いの要因にもなり兼ねません。
・生命保険の受取人を指定する
生命保険には遺言のような役割があるといわれています。なぜなら、受取人が指定されている保険金は「受取人固有の財産」として遺産分割の対象の財産ではありません。
よって契約時に指定した人に確実に受け取ってもらうことができ、他の相続人が口を出すこともありませんので、相続トラブルを防ぐことにつながります。
・きちんと相続人同士でコミュニケーションをとる
相続人同士のコミュニケーションがきちんととれていないと、遺産分割の話し合いもスムーズに進行しません。相続争いを避けるためには、家族間でお互いをきちんと認め合えたり、しっかりと意見を言い合えたりするような関係性を築いておくことが大切です。
これは決して相続が起こってからの話ではなく、生前からコミュニケーションをとって、今後起こりうる相続に対して相続人間で認識を合わせておくことが大事です。
とは言っても、相続人同士の仲が悪い場合やめったに会うことのない疎遠な人と話し合いをするのは不安があるという方もいらっしゃると思います。そのような場合は、司法書士や弁護士などの専門家に依頼をして仲介をしてもらうことも一つの方法です。
まとめ
いかかでしたでしょうか。相続はお金に関することであるため相続人それぞれの主張が強くなり、それ以降の関係性にも影響を与えてしまうことも珍しくありません。
相続トラブルが増えている今だからこそ、将来のスムーズな相続のために何ができるかをきちんと考えて対策をしていくことをおすすめします。