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私小説「”骨髄移植”経緯」~9~

9.移植当日
「では、隙間を埋めていきます。」
放射線治療室のベッドに横になりアクリルの板で四方を囲まれると、看護師さんたちが”ビーズクッションMOGU”みたいな白いクッションで体を動かないように押さえつけていく。肩、二の腕の下に敷いたら今度は体を上から押さえつけ、足は三角の膝あてに曲げて固められ。棺桶に入っているというより、冷たくない雪崩に埋まった遭難者。何とか複式呼吸はできるものの。体は固められて動かせない。このまま、ナースコールを握って40分。
昨日の免疫抑制剤二日目は無事に済みました。夜「生存確認に来ました。」という先生に何ともなかったことを伝えると、「だから私の言ったとおりだったでしょ?」ですと。DOKOGA!と大声を出しそうになりました。

午前の照射が無事に終わり朝食をあらためてとる気が起こ科らず部屋で休んでいると、吐き気と発熱が。アレルギー反応を抑える点滴に吐き気止めを混ぜてもらい、発熱のほうは解熱剤カロナールを服用。昼食も完全パスでとにかく寝てました。

午後、体の反対側からの放射線照射を終えて部屋に戻ると、前の劇団の知人から動画メッセージが。「病院には入らずに外で応援して帰る。」わざわざそのために来ていただき、本当にありがとうございます。メッセージに返信し、抗アレルギー剤を入れてもらい待つこと15分。届いたばかりの骨髄液をもって先生が現れます。手際よく点滴台で生理食塩水とつなぎ私の首へ。いつもの輸血より薄い赤色をしています。量は260mlと、最低必要な量の約2倍です。これだけの量をドナーさんが提供してくださったことに感謝と、これから何日か入信を強いることに対する申し訳なさでいっぱいです。見ず知らずの人間に、万が一の危険を顧みず大切な骨髄液を提供してくださったことをいくら感謝してもしつくせません。

本日採取したいわゆる”とれたて“のため保護剤も入っていない”生“の状態で、40分もかからず体に入っていきました。
ちなみに今の血液型はA型なのですが、ドナーの血液がO型なので、当分は「赤血球はA型、血小板はO型」の状態だそうです。ゆくゆくは完全にO型になるとのことですが、どれだけかかるかは個人差がある、と。

一山超えたとはいえ、ここからが回復への始まりです。放射線の副作用で粘膜がやられるのはこれから。白血球がゼロの今日から、だんだん自分のものとして白血球が増えていくのを待たねばなりません。

ということで、よろしければもう少し、レポートにお付き合いくださいませんか?