囀り240502。

前回囀りの末尾に豚肉と筍のカレーでも作るかと書いて思い出したことがある。今世紀の初頭、何年か神田猿楽町の古いビルにオフィスがあった。神田といえば「カレー激戦区」。今では「神田カレーグランプリ」なるイベントも行われ、S&Bがグランプリ受賞店のレトルトを売り出したりもしている。
駿河台交差点をちょっと神保町方向に進んで右に入る、猿楽町と神保町に挟まれた通りにも当時からカレー専門店が数件あった。もっとも有名だった店は、一度入ったがあまり気に入らなかった記憶がある。まだあるだろうか。よく通ったのは早稲田の有名店「メーヤウ」の暖簾分け的な、若いカップルがやっている店だった。そんなある日、果敢にも「メーヤウ」の斜向かいにカレー専門店を出した若者がいた。
カレーは玉葱を丁寧に炒め、スパイスを効かせた本格的な味。だがメニューは、いわゆるインド料理店にはないオリジナルだった。チキンカレーやキーマカレーが看板メニューだったと思うが、ぼくは豚の角煮カレーが気に入り、よく通うようになった。野菜カレーもその時々の旬の野菜を使ったオリジナル。いつも豚角煮と野菜をセットにしたメニューを注文していたと思う。
茄子、法蓮草、トマト、獅子唐、茸、旬の野菜に日本はこと欠かない。がある日、店主が「これから冬になってどうしようかと思ってるんですよ」と言った。ぼくは「大根でしょ」と、たぶん即座に応えた。その冬、彼の店のメニューに、スパイスの効いた大根の野菜カレーが登場した。美味かった。
いまgoogle mapで検索してもそこに店はない。残念ながら店の名前さえ思い出せない。移転してひょっとしてここかなとも思う店はあった。「パンチマハル」。確証はない。彼は元気だろうか。


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