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⑩好きな画集ベスト3!

画家・小河泰帆さんとの往復書簡10回目ですよ。
前回は小河さんの、持ってる好きな画集か図録のベスト3を伺いました。3つに絞るの難しい〜!って書いてありましたけど、本当にこれ難しいですね。本ひらくと見入ってしまいます。

小河さんの好きな画集は、ヴュイヤール、ルドン、トゥオンブリーとのこと。
私、ヴュイヤールは詳しくないのですけど、温かみを感じるグレーのイメージがあります。とても素敵ですね。8,800円すごいな。

ルドンは、三菱一号館美術館が《グラン・ブーケ》を購入してお披露目の展覧会にすぐ行きましたが、素晴らしかったです。あんなに大きいと思わなかったし想像より華やかで、色が本当にきれいでした。

トゥオンブリーは神様ですね!


さて、私のベスト3はこうなりました。


1つめは、「ウィレム・デ・クーニング展」
。
2014年ブリヂストン美術館の図録で「女」シリーズが中心です。

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解説文に、デ・クーニングが度々ルーベンスについて言及しているということが書いてあって、とても納得したのですよ。ルーベンスの描く裸婦ってすごくお肉がブヨブヨして柔らかそうですよね。物体としての女というか、そういう質感とか温度のある肉の塊としての女性を意識したとき、デ・クーニングの絵からすごくリアリティを感じたのです。「女」シリーズは完全な抽象ではなく、うっすらと顔の位置がわかる程度には具象なのですけど、それでも全体的にはよくわからん感じの絵です。こういう表現でも描けるリアリティってちゃんとあるんだなと、すごく勉強になったというか、ホッとしたというか、今後も安心して抽象的な表現で制作しようと思えたので、結構大切な1冊ですね。
ちなみにフランシス・ベーコンも肉の塊っぽい絵を描いてますけど、もっと筋肉とか関節とか感じて硬そうで、あれは男性なんだろうなと思います。


2つめは「狩野山楽・山雪」
。
2013年に開催した京都国立博物館の展覧会図録です。私は山雪が大好きで、お気に入りの襖絵がとてもよい印刷で掲載されているので、たまに眺めてはほれぼれしています。

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山雪は江戸時代、京都にとどまった京狩野の二代目です。梅などの伝統的なモチーフを描いてもデフォルメの仕方が度を超えているというか、ダイナミックで、うねっていて、筆致に感情がのっているように見えるんです。梅であること装飾であることよりも、形のかっこよさでゴリ押しして、強引にかっさらっていく感じ。とても面白いのですよ。

この図録は古本屋で手に入れたので展覧会には行ってないのですが、掲載している《梅花遊禽図襖》は2019年の東京都美術館「奇想の系譜展」で、《朝顔図襖(籬に草花図襖)》は2020年の東京国立博物館「桃山―天下人の100年」で実物と対面しました。とーっても良かったです。

3つめ、「SCHIELE DRAWINGS」。エゴン・シーレのドローイング集です。

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制作年順に掲載されてるのですが、線が豊かになっていく感じがとても面白いです。初期の厚みがなくてペラペラしてる肉体が、陰影つけてるわけじゃないのに、輪郭線だけではっきりと厚みを帯びていくんですよ。美術研究所にいた頃、こんな線が引きたくて憧れて、ドローイングをたくさん描きました。切り取り方や配置、省略の仕方もかっこいいです。
そしていま気付きましたけど、私いつも自分のサインなんとなく四角っぽくおさまるように書いて年号付けてたんですよね。これシーレと似てる!無意識に真似してたのかな。自分では日本画の落款のイメージで判子っぽく書いてたつもりなのに、むしろシーレだったな。びっくり。


もう好きな作家だらけなので、思い入れのある3冊を選びました。トゥオンブリーは別格なので避けてみましたよ。最後まで入れようか迷ったのは、ケーテ・コルヴィッツとヴォルスです。

最近の展覧会図録だと、「N・S・ハルシャ展:チャーミングな旅」「アネット・メサジェ:聖と俗の使者たち」「ブラジル先住民の椅子」がお気に入り。「ピーター・ドイグ展」も良かったな。
小河さんがあげた作家の中ではタピエス、ロスコ、クレー、ジャコメッティ、河鍋暁斎が特に好きです。


さて次の質問ですが、ヴュイヤールとルドンのお話うかがって、小河さんにとっての色のお話を聞いてみたいと思いました。
小河さんの作品はなんといっても色が鮮やかで、色の印象が一番つよく残ると思います。作品の構成要素として色とか形とか質感とかあって、組み合わせで画面を成立させるので当然どれも大切ですけど、色の鮮やかさの優先順位はかなり上位なのかなと感じます。
ざっくりしてますけど、色について、何でも良いのでお願いします。