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【八宮めぐる考察】ふたり色 クレオールを、読まないのか?

ごきげんよう。クレオールおじさんと申します。


ふたり色 クレオールを、読まないのか?


先日、シャニマサーの友人が所持ユニット一覧を見せてくれたんです。所持ユニット一覧。そしたら【ふたり色 クレオール】八宮めぐる の姿があったんです。

花咲「トワめぐ居るじゃん!」
友人「トワ…?ああ、お前の担当の子か。持ってたっけな、そう言えば」


「持ってたっけな、そう言えば」


???????????


もうね、アホかと。馬鹿かと。


いやアホと馬鹿は言い過ぎだけどさ。サポートが揃ってないとTrue End到達は厳しいだろうから、担当じゃないけど鉱脈としてとりあえずWINGを進めよう、とはならないよ。仕方ないと思う。それにこっちもお前から勧められたFGOとプリコネを全くやってないし、お互い様だよな。

けどさ、いつかは読んで欲しいんだよ。

そして、八宮めぐるを知って欲しいんだよ。

【注意】
本記事はPアイドル【チエルアルコは流星の】【ふたり色 クレオール】の内容を前提としています。したがって、未読の方は当該コミュに一度目を通すことを推奨します。



1.クレオールとチエルアルコ

【ふたり色 クレオール】八宮めぐる は2023年11月に実装されたトワイライツコレクション限定P-SSRアイドルです。

【ふたり色 クレオール】八宮めぐる

めぐるの他のカードと比較して物憂げな表情が印象的ですね。
しかし、めぐるのこんな表情も珍しくはあれど、初出というわけではありません。恒常P-SRアイドル【チエルアルコは流星の】【小さな夜のトロイメライ】でも同様に、アンニュイな面持ちのめぐるが描かれています。

とりたて【チエルアルコは流星の】については、表情以外の点においても【ふたり色 クレオール】との関連性を強く感じられる描写が多々あるのではないでしょうか。

本記事では、【チエルアルコは流星の】と【ふたり色 クレオール】の比較を通して、八宮めぐるを追っていきます。


・カードイラストの類似点

まずはカードイラストを比較してみましょう。

チエルアルコは流星の
ふたり色 クレオール

先述の通り、やはり表情が似ていること、そして、どちらのカードにも共通して反射しためぐるの姿が描かれていることが分かります。

(反射について、恐らくこれは何らかのメタファーとして登場させられたものでしょうが、それが一体なにを指しているのか、筆者のなかでは未だ答えが出ていません。)


・タイトルの類似点

続いて、それぞれのタイトルに焦点を置きます。

Ⅰ.【チエルアルコは流星の】
“チエルアルコ”とは、エスペラント語で“虹”を意味する言葉です。

エスペラント語は橋渡し言語とも呼ばれており、すでに特定の人々が第一言語として使っている言語をそのほかの人々が学ぶことで生まれる共通言語ではなく、はじめから共通言語になることを目的として作られた言語です。(注1)


Ⅱ.【ふたり色 クレオール】
それでは、クレオールとは一体何なのでしょうか。

クレオールの原義は“育てられた人”であり、植民地ないしは副王領生まれの人間を指す形容詞として用いられてきましたが、最近では“異質なものの混淆から生まれた、元のいずれとも全く同一ではない新しい存在のあり方”を示す概念としても使われるようになった言葉です。(注2)

また、ここで興味深いのは、クレオールの意味するところが言語学においても存在するということです。

異なる言語圏の間で意思疎通を行う際に自然に作り上げられた言語が、その話者達の次の世代で母語として話されるようになることがあり、“クレオール言語”はそのようにして作り上げられた言語の総称として用いられています。


・対比

上記の2点により、【チエルアルコは流星の】と【ふたり色 クレオール】の対比構造が徐々に明らかになってきたのではないでしょうか。

特に注目したいのは、エスペラント語とクレオール言語の比較です。
共通言語になることを前提に整備された人工言語(計画言語)と、異文化圏の話者間で自然に発生した共通言語は、共通言語という土俵を同じくしつつ、その成り立ちにおいては真逆の性質を持つと言っても良いでしょう。

それでは、この対比にはどのような意味があるのでしょうか。
下の項で解説します。


2.チエルアルコは流星の

【チエルアルコは流星の】八宮めぐる は2019年4月に実装されました。
コミュの内容は、【ふたり色 クレオール】より前の出来事です。

めぐるが映画で演じることになっていた“大正時代の日本にやってきた、大人しくて喋ることが苦手な青い目の女の子”の役を失うところからコミュが始まります。
“大人しくて喋ることが苦手”という性格はめぐるのイメージからかけ離れているようにも感じられますが、“青い目”という外見的特徴のおかげで抜擢されたのではないでしょうか。

その後、アクアリウムショップで見かけた熱帯魚の水槽の中に一匹だけ他と色の違う魚を見つけためぐるは、「すみっこに隠れて….なんだかひとりぼっちみたい」と呟きます。

“青い目の女の子”と“色の違う熱帯魚”、どちらも外見的特徴から孤立した存在として描かれています。そして、めぐる本人の生い立ちもまた、“日本にやってきた青い目の女の子”に他ならないでしょう。めぐるが孤立していたかどうかは分かりません。ただ、“青い目の女の子”の役を貰ったことは、外見的特徴に基づいた判断として描かれているように思いました。

アメリカ出身、金髪碧眼のめぐる


・君の色はとっても綺麗だよ

色の違う熱帯魚について、寂しそうに見えるかと聞かれためぐるは「私には分からない」「この魚の気持ちは、この魚にしか分からないもん」と返します。
外見的特徴とは違い、他人の内面的特徴を理解することは困難である。コミュでは一貫してこのことが描かれています。それどころか、【チエルアルコは流星の】以前のめぐるのコミュにもその片鱗を見ることができます。

金色の元気いっぱいガール より

しかし、同時に、“他人の気持ちは分からないけれど、寄り添いたい”というめぐるの願いを感じる場面も多々ありました。
色の違う熱帯魚にめぐるがかけた言葉、「大丈夫。君の色は、とっても綺麗だよ」などがその願いを表しているのではないでしょうか。


・エスペラント語

めぐるの行動原理のひとつには、“平等でありたい”という願望があるように思います。誰にでも分け隔てなく接する彼女の姿は様々なコミュで描かれています。

ああ光よ より

そんな彼女の言動には、エスペラント語の掲げる理念に通ずるものがあるように感じられます。

エスペラント語は平等性を重視して創案され、文法規則をシンプルにすることで、富裕層でなくとも簡単に学べるような言語を目指してきました。(注1)

平等な根っからの共通言語という点では天真爛漫で皆に優しいめぐるが連想されつつも、固有の語形変化の存在しないシンプルな言語という点では、複雑な内面の理解よりも単純な外見的特徴によって判別されがちなめぐるが想起されます。


3.ふたり色 クレオール

以上を踏まえた上で【ふたり色 クレオール】を考えましょう。

コミュ①は今度の舞台で演じる自分の役について楽しげに語るめぐるのシーンです。

舞台出演の打診を受けためぐるは、原作の絵本を読み、自分が演じる予定の主人公サウレについて「太陽みたいな子なんだ」と嬉しそうに話します。役を失う場面から始まった【チエルアルコは流星の】とは対照的ですね。さらに、この役は“不思議な力で人々を助けて笑顔にする主人公”であり、“大人しくて喋ることが苦手な青い目の女の子”とは違ってめぐるの内面的特徴に沿ったものでした。

しかし、事態は急変します。
めぐるが読んだ絵本はライト層向けに残酷な描写を取り除いたもので、実際の原作はまた違ったテイストのものであるということが判明したのです。

・狭い世界でしか呼吸できない人のための舞台

原作のほの暗いイメージに従い、明るい雰囲気の演技を封じ込めることにしためぐるでしたが、演出家からは「無理をしているせいで役作りが不自然である」との指摘を受けてしまいます。
最終的に、プロデューサーとの相談もあって、めぐるは絵本版の明るい雰囲気のまま残酷な舞台を演じることを決めました。
そのミスマッチな演出から賛否両論ある舞台となりましたが、演出家からの評価は上々でした。

残酷とも言える役回りの主人公を太陽のように明るく演じること、それは大衆から受け入れられる方法ではないのかもしれません。しかし、その奇妙にも見える演出で心動かされ、救われる人間が確かに居るということが描かれています。この舞台でのめぐるは、大衆から評価されるような広い世界では呼吸できない人にとっての太陽だったのではないでしょうか。


・クレオール言語

絵本版サウレのように太陽を思わせるような明るさを持つめぐると、薄暗い原作、真逆にも思えるこのふたつが混ざり合うことで救われる人が居ました。狙って生み出されたわけではない、そして万人に理解されるものでもない、一部の人間にとっての救いとしての八宮めぐる。それはまるでクレオール言語のようです。


4.我々は何を選ぶべきだろうか

【チエルアルコは流星の】【ふたり色 クレオール言語】を通して、エスペラント言語としてのめぐるとクレオール言語としてのめぐるが描かれてきました。

忘れてはいけないのは、このふたつは両立し得ないということです。

言動の根本に“平等”を据えるめぐるにとって、エスペラント語であることが正解なのか、クレオール言語であることが正解なのか、はたまた他の選択肢が正解なのか。これは唯一解の求まる問いではありません。そんな問いに対して、めぐるが曇らないように選択の手助けをすることがプロデューサーの役割ではないでしょうか。

今回に限って言えば、プロデューサーが「絵本版のような明るい雰囲気で演じてくれ」と頼んだことで、めぐるは良い選択をできたのかもしれません。しかし、次はどうでしょうか。もう一度上手く選べる確証も、選ぶための道しるべもないのです。

我々は何を選ぶべきなのか。

【ふたり色 クレオール】は、八宮めぐるのクレオール言語としての可能性を示した上で、そんな重大な問いを投げかけて来るコミュでした。


【参考文献】
吉野家コピペ - ニコ百https://dic.nicovideo.jp/a/%E5%90%89%E9%87%8E%E5%AE%B6%E3%82%B3%E3%83%94%E3%83%9A
注1)バイリンガル サイエンス研究所「人工的な国際共通語「エスペラント」」 人工的な国際共通語「エスペラント」 | バイリンガル教育の研究機関【バイリンガルサイエンス研究所】
注2)コトバンク「「クレオール」の意味・読み方・類語」クレオールとは? 意味や使い方 - コトバンク (kotobank.jp) 


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