バイバイ レンタルビデオ

ドラマの撮影が終わり、仕上げ作業をしている。
いいドラマにしたい。

今、新しく、レンタルビデオ屋さんを、開業したら、どうだろうか。
やっぱり、ダメなんだろうか。
個人営業の範囲で。
並ぶジャケットの中から、知らない映画と出会いたい。
半日くらいかけて、店中を歩き回り、借りる作品に悩んで、疲れたい。
3本1000円だったからこそ、必死で探したのだ。
返さないといけなかったから、必死で観たのだ。
返すから、また借りたのだ。
高い延滞金を払う時の、あのどうしようもない怒りを。
自分への虚しさを。

三茶ツタヤがとうとう、閉店となり、噂を聞きつけた私は、DVDなどをまとめ買いした。
中には、もう手に入らないだろうし、高価になっている作品もあった。
この機会を逃したら、二度と観ることもできない、かもしれない映画たちを優先して買った。
買い物かごに、何枚もの作品たちを入れながら、私は囁きかけた。

「そうかい、お前もかい」
「仕方ない、俺が引き取ってやるよ」

もはや、買うというより、保護しにいくという感覚。
何様なんだ、俺は。
もちろん、自分が監督した作品もあった。
一枚500円だ。
たくさんの人が借りてくれたであろう、少し茶色く汚れていたそのジャケットを見て、私は、微笑んだ。

「一生懸命、頑張ったね」

私はDVDに、手を振った。
今生の別れだ。
そして、私は振り向かない。

どうせ、そのまま、我が家の棚に並べられ、しばらく観ることはないだろう。
そして、気づけば、ホコリを被るに決まっている。
でも、それでもいい。
私は、彼らを持っている。
それが、とても、贅沢な気持ち。


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