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デジタルの時代にアナログで創作活動を始めた話

初めまして、はなさきたると申します。
透明水彩で創作イラストを描いて展示会やイベントに参加する作家活動をしています。

創作をする中で気付いた事や考えている事を日記のように残していきたいと思いnoteを始めました。

記念すべき最初の記事は、このデジタル全盛期にアナログで絵を描いていく事を決めた時のお話です。
少し長くなりますがお付き合いください。

・一度は絵を描くことに挫折した

私は三姉妹の真ん中で、姉が絵を描くのが好きだった影響もあり、三人並んで絵を描くのが私の幼い頃からの日常でした。

学生時代は所謂同人誌即売会に参加して自作のグッズを頒布したり通販したり楽しく活動していました。しかしながら何かを創るにはお金がかかるもの。印刷費に消えていく貯金と売れ残った在庫たち
徐々に楽しさよりも自分の実力の無さがつらくなっていき、私は絵を描く事を辞める選択をしました。

当時描いていたイラスト

・それでも創る事は辞められなかった

それからしばらくしてキャストドールという球体間接人形にハマり、ドールの服を作るハンドメイド作家として活動を開始しました。

そこでもやる事は同じで、作ってはイベントに参加する日々。

寝ても醒めても考えていることは常に「次は何をつくろうか」という事でした。

・創作から遠ざかった時期

ハンドメイドの活動を始めて8年程経った頃、結婚・出産という人生を大きく変える出来事がありました。体調不良に睡眠不足。慣れない中でも必死に「良い母」になろうと努力しました。

私は母になるのだから、自分の好きな事は何もかも封印してこれからは子供の為の人生を送るんだ

それが当たり前であり、それが母という生き物なのだと勝手に思い込んでいた私は、創作に関わる全ての事をきっぱりと辞めました。

・Twitterでの出会い

それからしばらくは育児の日々でした。子供との生活は楽しい事ももちろんありましたが、出掛けることもままならずテレビも音楽も子供向けのものばかり。
社会から完全に孤立し、たった一人(正確には子供と二人だけど)で生きているような孤独感。そこにいるのに存在していない。透明人間にでもなった気分でした。

あまりの寂しさにふと思い立ってTwitterを覗いてみました。

そこには育児中の出来事を趣味で絵や漫画にしている人たちがたくさんいて、驚いた事に描き手のほとんどがまだ未就学の子供を持つ育児真っ最中のお母さん達。

子育てしながら絵を描く余裕があるの!?
母親でも絵を描く趣味を持っていいの!?

それは私にとって、ハンマーで頭をガツンと殴られたくらいの衝撃でした。

・水彩色鉛筆で絵日記を描いてみた

子供の絵なら私にも描けるかもしれない。
そう考えた私はずっと使っていなかったノートパソコンとペンタブを物置きから引っ張り出し、モノクロの育児漫画を描き始めました。
しばらくブランクがあったので1ページ描くのにものすごく時間がかかりましたが、それから漫画をあげる度に徐々にフォロワーさんが増えていき、描く事がどんどん楽しくなりました。
透明人間からこの社会に生きる一人の人間に戻れた気がしたのです。

当時のモノクロ漫画

一方で、育児しながら描く時間を捻出するのはとても大変で、どうしたらもっと早く描けるようになるのか、なかなか定期的に絵を投稿できない事に悩むようになりました。

ちょうどそんな時。
帰省した実家でステッドラーの水彩色鉛筆を見つけたのです。

楽しそうだからちょっと借りてみよう。
そんな軽い気持ちでポストカードに子供の絵を描いてみました。

アナログの一発描きなのでとても早く描ける!
しかも水彩の色合いがなんとも可愛い!

それから私は水彩色鉛筆で絵日記を描くようになりました。

水彩色鉛筆で描いた絵日記

・透明水彩の色彩美に魅了される

水彩色鉛筆が楽しくなった私は、本格的に透明水彩絵の具を使ってみたくなり、筆から紙まで水彩に必要な道具を一式揃えました。

初めて買ったのはホルベイン透明水彩絵の具
恐る恐る絵の具を水で溶き、水彩紙に置いたその瞬間。

「な、なんて美しいんだ!!!!!」

分厚い雲の切れ間から光が差し、大地が揺れ、海が割れ…
なんていうのは大げさですが、それくらいの衝撃が私に走ったのは確かです。

私が知っている絵の具と全く違う。水彩色鉛筆とも違う。
なんという鮮やかさ。そしてじんわり広がっていく色の美しさ。
私の心は一瞬で虜になりました。

透明水彩で描いた絵日記

・再び創作を始める

しばらくは子供との日常を絵日記に描いていましたが、創作活動をしてきた血が騒ぐといいますか、徐々に「オリジナルの絵を描いてみたい」と思うようになりました。

育児絵日記というジャンルでやっと自分の居場所を見つけられたのに、いまさら創作イラストを描いて見てくれる人がいるだろうか。
しばらく創作から遠ざかっていた私に、一から創り上げるオリジナルの絵が描けるのだろうか。

正直に言えばとても不安で怖かったのですが、最終的に水彩の美しさをもっと表現できる絵を描きたい!という想いの方が勝りました。

私は震える手で筆を持ち、一枚の絵を描きあげました。

その時に描いた絵

「花の庭」
2018年6月

・創作することは生きること

その後も半年程は絵日記を描いていましたが、創作イラストを描いたときの楽しさと興奮が忘れられず、思い切ってそれまでのTwitterのアカウントを消し、新たに創作イラスト用のアカウントを作りました。
私は透明水彩で創作イラストを描いていく!そう決めた瞬間でした。
(しかも二人目の子を出産した1ヶ月後でした。我ながら気力がすごい)

それから一年半、現在に至ります。

始めた当初は何もかも手探りで試行錯誤の連続でしたが、少しずつ自分らしさを表現できるようになってきました。
筆を持つ度に絵の具の美しさに心が躍る感覚は、今でもずっと変わりません。

アナログイラストは世界に一枚だけ、その時間その場所でその時の私にしか作り出せない唯一のものです。同じものは二度と描けません。

一度は絵を描く事を諦めた事も、子供との生活も、水彩に出会えた事も、全てが今の絵に繋がっているように思えます。

一枚絵を描くたびに、今日まで生きてきたこと、そして今ここに生きていることを実感します。

水彩絵の具の色彩に自分の生を感じながら、私は今日も筆を持つのです。

「花便り-移りゆく時、やすらぎの場所-」
2020年7月

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