アルバイトにいた背中女

これはアルバイトを、たった1週間で辞めた時の話。

地元の高校に入学して、これからの高校生活にドキドキワクワクしていた頃。

当時の親友から、「一緒にスーパーのアルバイト面接を受けない?」とお誘いをもらった。

私の高校は、許可がおりればアルバイトOKな場所だったので

(アルバイトかー。せっかく高校生にもなったし。服とか美容院代も欲しいし…。いやー。でも上手く働いて行けるかな…。うーん………。あの大きいスーパーでかー。うーん…………。

でも親友もいたら心強いし…やってみるかなー。)と思いOKの返事をして親友と一緒に面接を受けた。

だが、面接の結果。私は受かり、親友は落ちてしまった。

私『えぇ…まじか…。ちょっと自分だけ受かるとは全く思ってなかった…。親友いないなら断りたい…。てか断ろ。(豆腐メンタル発揮)』

親友「いやいや!せっかくだし働きなよ!大丈夫!れーたならしっかり勤めれるよ!私も違うところ探してみるからお互い頑張ろ⭐︎」

と励まされ、すでに崩れ落ちそうな絹ごし豆腐をなんとか固めつつ、いざアルバイトを始めることにした。

私が働いた場所は、スーパーの衣料品コーナーだった。

食品コーナーにも、同い年の可愛い女の子が入ってきて、社員用の廊下で少し話したのは今でも覚えてる。

下校から4時間程のアルバイト。仕事自体はアワアワしながらもレジ打ち、服をたたんで陳列したりなどを行なっていた。

直属の上司の方は、全く丁寧に教えてくれないけど、普通の方だったから、なんとか豆腐メンタルも持ち堪えてた。

でも…初めてのアルバイトは全く楽しくはなかった。常に緊張状態で、食欲もなくなり、結果少し痩せて(やつれて?)しまった。

そして、1週間目。

仕事も終わり、タイムカードを差して退勤しようとした時。

そこで第一のトラウマになる出来事が起こった。


私の後ろ側には、食品レジの若い女性社員とそのお仲間が立っていて、多分普通に喋っていたんだと思う。

その女性社員がいきなり、私の背中に向けてこう言った。

「こいつの背中…。

なんかさ…あれだよねー。蹴り飛ばしたい。

蹴り飛ばしたい背中。」

背中にヒュッと感じる空気の動きを感じた。背中を蹴り飛ばそうとしたんだろう。降ろした足の音も聞こえた。仲間達はクスクス笑ってた。

背中は血の気が引いたように寒くなり、心臓がバクバクと大きな音を立て始めた。怖くて冷や汗をかきながら私はゆっくり移動した。何を言われたのか、何をされそうだったのか、すぐには理解できなかった。

入れ替わるように、あの可愛い女の子がタイムカードを差して退勤した。女性社員はその子を見てこう言った。

「あー。あの子は良いね♪さっきの奴と違って可愛いし。

守りたい背中。私あの子好きー。」

それが耳に入ってからよろよろと外に出て、ボロボロ涙こぼして立ちつくした。家には何とか親に迎えに来てもらって帰ったんだと思う。

絹ごし豆腐モロモロと崩れました。


次の日、辞める旨を人事の社員さんに伝えた。理由は全く別なものにした。

女性社員がすごく怖かったし、こんなことがあったとは、何となく言いたくなかった。

人事の人は「れーたさん、良い子そうだから残念だけど。まだ若いんだし!いろいろ頑張ってね!」と言ってくれた。(良い人)

でも、それから私は、自らアルバイトをしようとは思えなくなってしまった。


おまけ

私には、4つ上の姉(自閉症で同じ高校を卒業した)がいるのだが…姉を知る高校の先生に、バイトの事情を話した際に教えてもらった。

なんと、その女性社員は姉の同級生で、姉をいじめていた主犯格だったらしい。(上靴をゴミ箱に捨てたりとか)

その女性社員は、私が妹だと知ってたのか、知らなかったのかはわからない。

でも、彼女の直感的に私は(背中は)気に入らない奴認定されたのだろう。

今はどうしているのかは不明だが、まだどこかで誰かの背中を品定めしてる…のかも…。