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第五回「ライセンス(上演権)を獲得する(前半)」 ~創作ノート~TARRYTOWNが上演されるまで

こんにちは!TARRYTOWN翻訳・訳詞・演出の中原和樹です。

前回の創作ノートでスタートしたライセンス(上演権)にまつわるエピソードですが、今回はTARRYTOWNの作者であるAdamとのやりとりからスタートする、ライセンス獲得エピソードの前半部分書き連ねていきたいと思います。

前回の記事はこちら。


大手著作権管理団体での検索でヒットしなかったTARRYTOWN。
作者AdamのWEBサイトには作品紹介ページもありますが、同じようにAdamのプロフィール紹介ページ、そしてContact(連絡)ページもあります。

日本で運営されいているWEBサイトにもよくあるような、問い合わせフォームのようなものです。名前とメールアドレスを入れ、要件(件名)と内容を入力するだけの、シンプルなフォームです。

ここにメッセージを記入しよう!と意気込んでいたときに、気づいたことがりました。

このぺ―ジの左上の方に、文字情報でBusinessと書いてあり、その下にはどうやら人の名前らしきものと、

Paradigm Talent Agency

という情報が明記されています。

・・・これはAdamの所属事務所?


※Talent Agencyとは、一般には芸能プロダクションや、芸能事務所といっ
たように訳されます。俳優や作家、演出家など、クリエイターが所属する会社(団体)であり、基本的にはこの事務所を通して、クリエイターの仕事がオーダーされる(決まる)という流れになります。


ここでまず、私の中で一つの葛藤が生まれました。

TARRYTOWNの作者であるAdamはParadigm Talent Agencyに所属しているため、上演をしたいという連絡はAgency(事務所)にする流れが一般的。
しかし、Adamご本人への問い合わせフォームがあり、しかも同じAdamのサイトにTARRYTOWNのページもある。上演する身としても、ミュージカルの脚本を書く身としても、Adamと直接やりとりしてみたい・・・
しかし迷惑かも・・・
でも・・・

この時の中原の頭のなかを開示してみました

と、迷った末・・・


直接Adamに連絡することに決めました!


自分が日本で演出家をしていること
TARRYTOWNと出会った経緯
楽曲にとても心惹かれたこと
ぜひ日本で上演したいこと
その上で上演権を獲得できるかどうか
もし出来るならどういうプロセスになるか

丁寧にそして熱意が伝わって欲しいと願い、文章をじっくり書きました

といった内容のメッセージを送りました。

送った後にも、「迷惑でなかっただろうか、英語は間違っていないか」とずっと緊張しっぱなしでしたが、すぐには返信が来ないだろうと考えつつ、もし返信が無い場合は事務所にメッセージを送らなくてはと、別の文章を準備していました。


しかし、なんとAdamはすぐに返信をくれたのです。

しかも、とても丁寧な暖かい言葉と内容で。

Adamの人間性の素晴らしさを垣間見たような気持になりました。


「TARRYTOWNを見つけてくれてありがとう。日本で上演されるのは、とても光栄です」という内容と共に、ライセンス締結にまつわる情報を入力するための資料(会場や日程、客席数、チケット代など、ライセンス獲得に必要な内容を記入するフォームです)を添付してくれ、しかも驚くべきことに、もし良ければ翻訳・訳詞プロセスを共同で出来ないかと提案してくれたのです。

エキサイティングな展開で、興奮して返信をしたことは忘れられません。メールへの御礼、そしてもちろん、共同で出来たらこちらとしても大変嬉しいという旨を書きました。

Adamと翻訳の共同作業としては、まずAdamの考えを聞き(以前にも、別の国でのTARRYTOWNの上演の際、翻訳プロセスに関わったそうです)、具体的にどういった作業が出来るのかなどをメールで詰めていきました。かなり積極的に提案などをしてくれて、創作の後押しとして心に響いたことを覚えています。

同時に、Adamは上記した事務所の担当者を紹介してくれ、ライセンスにまつわる具体的な契約(料金や条件など)は、その担当者の方とやりとりすることとなりました。

しかし、この具体的な契約の詰め、締結までも、また一筋縄ではいきませんでした・・・

向こうのバケーション(有給などで比較的長めにお休みを取る)でなかなかメールのやりとりが進まなかったこともありますが、何より、契約の内容の難しさ(英語としての専門用語もですし、内容自体もです)に、かなり困惑しました。


結果的に、この担当者の方とやりとりを進め、契約を結ぶ運びとなったのですが、その内容も少しだけ、次回のノートで触れたいと思います。

次回は「ライセンス(上演権)を獲得する(後半)」と題して、担当者とのやりとりの内容、そしてライセンスの契約を終えるまでを書いていきたいと思います。

またお読みいただけましたら嬉しいです。

中原和樹




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