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うつ病,うつを支えるための23のこと


無理して抱え込まず、日常の中で自分に出来るサポートを

うつ病になった方にとって、身近で信頼できる存在であるパートナーは、治療・回復の過程でも良き理解者であり支え手となりえます。

この記事を読んでくださっているあなたも、きっとうつ病の方を支えようと、自分に出来ることを探しておられることと思います。

だからこそはじめにお伝えしておきたいのは、パートナーや家族の方々も、「自分自身を大切にすること」を忘れないでいただきたいということです。

大切な方がうつ病で苦しんでいるのを見て、「ここはなんとか自分が支えなきゃ…」「この人が一番つらいんだから、自分はがんばらなきゃ」と思われたこともあるでしょう。

ですが、もしあなたが頑張りすぎて限界を迎えてしまったら「共倒れ」になりかねません。

あなた自身が健やかでいるからこそ、うつ病の方の回復を焦らずに見守り支えることができるのです。

うつ病の方を支えるために大切なことは、自分自身に無理がなく、自分を犠牲にしない範囲でのサポートを心がけることです。

共倒れにならないよう、病院をはじめとする社会資源、第三者の力を有効活用することです。


うつ病患者さんを支えるために押さえておきたい23のポイントを紹介します。

【話を聴く】


いつもと違う様子に気づいたら、ご本人のお話にゆっくり耳を傾けてみましょう。

その際に「そんなことはない」など否定せず、まずはご本人が一番言いたいことは何かを理解しようという姿勢が大切です。

ただし、ご本人があまり語りたがらない様子が強い時は、無理に聞き出す必要はなく、「話したくなったら」というお気持ちを伝えるとよいでしょう。

そっと見守っている、というスタンスがちょうどいいことがあります。

【理解する】


うつ病の方を支えるうえで大切なことは、まずうつ病の症状について理解することです。

「うつ病になってから、前は無かったような行動が増えた」と感じたことはありませんか?

それは本人の性格が変わったわけではなく、うつ病の脳機能への影響による変化であることがほとんどです。

先ほど説明したようなうつ病の症状を理解することで、いつもと違うパートナーの振る舞いに、怒りを抱いたり混乱したりすることを避け、本人の苦しみに寄り添ったサポートをしやすくなります。

【相談する】


本人が相談できそうなときは、会社の産業医や相談窓口に相談してみるよう促してみるとよいでしょう。

本人が相談することにハードルを感じているときや、本人があまり語らないときは、まずはご家族が相談してみるのも一つの方法です。

ご家族でも相談できる社内相談窓口や外部の相談窓口を設けている会社もありますので、社内報やホームページなどを確認してみてください。

小規模の会社など、こうした窓口がないときは、こころの耳の相談窓口や、仕事に関する相談窓口で、ご本人や会社への対応の仕方について相談してもいいでしょう。

【無理に遊びに誘わない】


休養は、初期のうつ病治療において大変重要な役割を担っています。

うつ病の方は心身のエネルギーが枯渇している状態のため、遊びの誘いも苦痛に感じることがあると理解しましょう。

【安心して休める環境を整える】


「休養に専念する」ことが、うつ病の方にとって重要な場合もあります。

休養を勧め、患者さんを不安にさせない配慮が大切です。

病院への受診を勧めてみましょう

様子を見ていても、本人が以前と違う状態が続くようでしたら、病院にいくことを勧めてみましょう。

これも身体の病気と同様で、早期に対応することにより回復も良好となります。

その際に「うつ病」などという言葉を使わずに、「疲れが抜けない状態がずっと続いているのが心配」などとお気持ちを伝え、初めての受診には付き添って行けることが望ましいでしょう。

ご近所にかかりつけ医がいれば、精神科医、心療内科医などの専門医を紹介していただけるかもしれません。

【いきなり元の生活/仕事に戻さない】


うつ病の方が元の日常生活に戻そうと頑張りすぎると、再発することがよくあります。

うつ病の方を支える方は、本人にリハビリの時期を設け、段階的な復帰を促しましょう。

【不満はぶつけず理解を深める】


うつ病の方の言動が不快に感じることもあるでしょう。

ですがうつ病の方を支える方は、それは病気によるものと理解し、不満を患者さんにぶつけないようにしましょう。

【誰のせいにもしない】


うつ病の方が自分自身や周囲の人を責めてしまっているときは、「うつ病は、誰のせいでもなく、誰でもなり得る」というフォローをすることも大切です。

【安易に励まさない】


うつ病の治療には時間がかかります。

うつ病の方のペースで治療を継続できるように、「がんばれ」や「早く元気になって」などの安易な励ましはやめましょう。

【原因探しをしない】


「なぜ、この人は病気になってしまったのだろう」「自分たちに何か問題があったのか」など、原因が何なのか家族として大変気になるかと思います。

実際は様々なことが関与して特定できないことがよくあります。

「今できること」を中心に考えるようにしてみましょう。

家族の生活の中で、本人がストレスを感じることがあれば、今は取り除いておくということも大切です。

【特別なふるまいをしない】


明るく盛り立てるなどのふるまいは、うつ病の方だけでなく、本人を支える方の両者のストレスになりかねません。

できるだけうつ病を発症する前と同じふるまいを心がけましょう。

【あせらない・あせらせない】


早期の復帰を望むがゆえに、あせりがでてしまうのは、うつ病の方も、本人を支える方も同じです。

互いにあせらず、うつ病の方のペースで治療に向き合ってもらうことが、回復への近道です。

【アサーティブになる】


コミュニケーションをスムーズにするため、自他それぞれの主張(考え)を尊重し認め合うバランスのとれた姿勢(アサーティブな姿勢・関係)でかかわりましょう。

【1人で支えない】


職場ではチームで対応する、家庭ではカウンセラーやソーシャルワーカーを頼るなど、うつ病の方を複数で支えることで、本人を支える方の負担を分散させましょう。

【大きな決断は先延ばしに】


「職場でみんなに迷惑をかけている」など自責的な思いから、退職や離婚などについて口にする場合があります。

こころの病では、心理的な視野狭窄ということが起きていて、悲観的な発想しか頭に浮かばなく、その道しか残されてないようにとらえてしまうことがあります。

自責な気持ちを汲みつつも、「今はまず健康に留意することを最優先しましょう。その問題は、もう少し良くなったら一緒に考えましょう」と説明してみましょう。

【精神科・メンタルクリニック】




外来にて医師からの診療を受けること、お薬を出してもらうことが可能です。

ご自宅から通いやすい場所にあるか、評判はどうかなどを調べた上で、かかるクリニックを選ぶことをお勧めします。

「普段と様子がちがって心配だから、一度病院で診てもらわない?」など、傾聴・共感を意識しながら通院を勧めてみてください。

ご本人の同意・リクエストがあれば、予定を合わせて一緒に通院するのも一つの手です。

すでに受診し、うつ病の診断を受けている場合は、医師の処方やアドバイスを踏まえて、可能な範囲で治療をサポートしてあげてください。

同棲・同居などで日常生活を共にする時間が多い方の場合は、

服薬:お薬を決められた量・タイミングで飲めるように声かけする、お薬ケースを用意するなど

睡眠:寝室に一緒に行く、電気を消してあげるなど

食事:なるべく栄養バランスを意識したメニュー、二人で一緒に食べるなど

軽い運動:一緒に近所を散歩をするなど


など、日常生活の色々な場面でサポートが可能です。

ただし、あくまでご本人もパートナーも「無理をしない」こと、医師に相談しながら治療・回復の段階に応じて段階的に、がポイントです。

パートナーとしてどんなことができるか、定期通院の際に同行して、医師に相談してみるのも良いでしょう。

【受診の付き添いがお勧めです】


毎回の受診に付き添う必要はありませんが、一緒に主治医のお話を聞くことで、ご本人のどんな点に気をつけてサポートするといいのか分かることがあります。

また主治医に面会しておくことで、ご本人が調子を崩してどうしても通院できないときに、代理で受診して相談することもできます。

主治医にとっても家庭での様子をご家族からの客観的な情報が治療の役に立つこともあります。

注意していただきたいのは、あくまで「付き添い」ということです。

ご本人と主治医の貴重な接点の場ですので、ご家族がしゃべりすぎないようにしましょう。

【精神保健福祉センター】


こころの悩み、精神疾患や障害に関するさまざまな相談ができます。

「うつ病のご本人が病院を受診していない場合」「治療を拒否している場合」「とにかくどうしたらいいのか分からない場合」なども相談することができます。

全国精神保健福祉センター長会 からお近くの精神保健センターをお探し下さい。

【カウンセリング等のメンタルケアサービス】


臨床心理学の専門性を持つカウンセラーが相談者と話し、抱えている悩みや問題点を整理し、一緒に解決できるよう関わっていきます。

カウンセリングは精神科や心療内科のクリニックに併設されている場合や、臨床心理士が開業しているカウンセリングルーム、オンラインのカウンセラーマッチングサービスなどがあります。

【パートナー・家族向けコミュニティ】


うつ病の人の家族やパートナーがつながり、体験を共有する家族会やコミュニティサイトがあります。

ほかのご家族やパートナーの経験を聞きたい、悩みを共有したいという方は、以下のようなサイトやサービスを利用してみてください。

みんなねっとサロン(公益社団法人全国精神保健福祉会連合会が運営)

うつ病患者の家族向けコミュニティサイト「encourage」(株式会社ベータトリップが運営)

【いつもと違う言動に気がつくこと】


自殺から救うために、ご家族など身近にいる人が、自殺のサインに気がついてあげることが大変重要です。

自殺を考えている人は、意識的・無意識的にサインを発しています。

サインを発している人が必ずしも自殺のリスクが高いわけではありませんが、下記の自殺予防の十箇条を参考にしてください。

特に、「自分は不甲斐ない、駄目な奴だ、責任を果たせずつらい、みんなに迷惑をかけている」などの自責感が強いときはリスクが高まっていると考えてよいと思います。

主治医がいる場合には、ご家族が連絡して対応について相談をしてもよろしいでしょう。

(自殺予防の十箇条)

次のようなサインを数多く認める場合は、自殺の危険が迫っています。

早い段階で専門家に受診させてください

1、うつ病の症状に気をつける
2、原因不明の身体の不調が長引く
3、酒量が増す
4、安全や健康が保てない
5、仕事の負担が急に増える、大きな失敗をする、職を失う
6、職場や家庭でサポートが得られない
7、本人にとって価値あるものを失う
8、重症の身体の病気にかかる
9、自殺を口にする
10、自殺未遂に及ぶ

【過労死を予防する】


長時間労働など過重な業務による脳・心臓疾患(脳出血などの脳血管疾患及び心筋梗塞などの虚血性心疾患等)を予防するため、ご家庭では、健康状態に見合った食生活、継続的な運動、禁煙などの生活習慣の改善に心掛けましょう。

健康状態としては、肥満、高血圧、脂質異常症(高脂血症)、高血糖症などに特に注意が必要で、これらは、脳・心臓疾患の発病の危険を増大させます。

【知人・友人の力を借りる】


上記のような支援機関・相談窓口だけでなく、身近な知人・友人の力を借りることも一つの方法です。

同じくうつ病やそのサポート経験がある人に相談したり、電話やカフェなどでゆっくり話を聞いてもらったり、本人もあなたもいっぱいいっぱいの時に買い出しなどを助けてもらったり……二人だけで抱え込まず、「助けてほしい」と声をあげてみてください。

あなたと本人を支えたいと思っている人が、きっと味方になってくれます。


最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

皆さまの幸せを祈っております。

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