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1人でも多く、1枚でも多く、見せる

「魅せる」と書こうとしたものの、ちょっと迷って「見せる」と書いたのは、謙虚だからではなく本音である。「魅せる」ことを課題にしてしまうと、カメラを構えることも、写真を撮ることも、きっと続かない。

そのことに気付いたのは2年前。

とあるローカル局のホームページで「写真コンテスト」を見かけた。入賞すると局の公式FacebookのTOP画に使ってもらえるというものだった。募集テーマは「動物」。応募は1人1枚。

どうしても“勝ち”たくて、いろいろと作戦を練った。奇をてらった動物で応募すれば目にとめてもらえるだろうか。完全なる下心を抱えて動物園に出向いて撮りまくった。

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いまこの写真を見ると、動物に下心を見抜かれているような気がする。1日中“映え”だけを気にしてシャッターを切った。ただ、撮れば撮るほど迷走していく。ヒョウを撮ってみるも「企業公式Facebookだから癒される動物がいいのでは」…そう思って今度はレッサーパンダを撮る。しかし「【動物園人気No.1のレッサーパンダ】ということはレッサーパンダの応募は案外多いのではないか」。答えが見つからないまま応募締切日は刻々と近づいてくる。

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応募フォームを開いては、アップロードする写真に迷い、手が止まった。そして締め切り当日、選考担当者の裏の裏の裏を想像するあまり頭がパンクした私がアップロードしたのは、よりによって猫の写真だった。「動物」ジャンルで猫の写真の応募総数なぞ圧倒的に多いだろう。【応募を受け付けました】というメールを受け取ったとき、「しない後悔より、した後悔」と、“魅せる”写真の答えを見つけきれなかった諦めで満ちていた。

そして数日後、選考担当者を“魅せた”写真はなんだったのかと、答えを知りたくてアクセスしたFacebookがこちら。

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驚きのあまり、画面に触れる指が震えていた。二度見ならぬ三度見した。そう、私が応募した写真だった。

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さすがはブーム真っ盛りの猫である。ありがとう猫。いや、選考担当者が猫マニアだっただけかもしれない。みんなが「猫はライバルが多い」と敬遠したのかもしれない。……いろんな理由を考えた。

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これで賞金が出るわけでもなく、もちろんこれを機に写真の仕事がくることもないのだが、第三者が私の写真を飾ってくれるというのは、たとえそれがFacebookのTOP画であったとしても、私の“写真欲”を満たすのには十分すぎた。動物園で下心満載で撮った写真より、気に入っていた猫の1枚で選ばれたことも嬉しかった。掲載期間中、何度アクセスしたか分からない。

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見せたい写真を撮る、撮ったからには誰かのこころに刺さるまで1人でも多くの人に、1枚でも多くの写真を見てもらう。“魅せる”ことを意識すると疲弊が激しいことに気が付いた。「奇跡の1枚」で100年に1度の美少女アイドルが発掘されるインターネット全盛期の時代で写真を撮れるということは、きっとしあわせだ。

今ここまで読んでくれたあなたも、私の写真を見てくれた。1人にでも多く、1枚でも多く、見てもらえることが継続の一歩だと信じて今日もカメラを構える。

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2020/3/24 こさい たろ


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