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日食 〜 1:400の奇跡

この文章は、2013年に寄稿したものを2020年にアップしたものです。次の、大きなチャンスは2024年の米国での皆既日食、また2035年の日本の皆既日食も楽しみです。

スキーツアーの思い出

小学生のころ、親にスキーツアーにつれていってもらったときのことです。夕食後、大人はお酒を飲んでいるので、子どもたちは別行動。

キャッキャと枕を投げたり、廊下を駈けて遊んでいたりしていたのですが、通路の突き当りの非常口をだれかが開けたんです。

「うわーっ! 気持ち悪い!」と言うので外をみたら、超満天の星空。見たことがないほどすごいもので、目が釘付けになりました。

天文部

その記憶があったからなのか、中・高は天文部に入り、毎日星のことばかり想うようになりました。夏合宿の場所を下見するため、一人で磐梯山付近に上り野宿したこともあります。

寝転がって一晩中夜空を見ていると、宇宙と自分がつながって、もう、ものすごいロマン。こんな無限のなかにつくねんと自分がいることに奇跡を感じました。自分が星を好きなのは、いっぱい奇跡を感じられるからなのかなと思います。

日食 奇跡の産物


日食というよく知られた現象も、実は「奇跡」といっても良い偶然の上に成り立っていることはあまり知られていないようです。「太陽」と「月」が同じ大きさに見えることは、ごくあたりまえのこととして受けとめられていますが、本当はぜんぜん違うものですね。

太陽は月の400倍も大きいのに、たまたま月よりも400倍遠いところにあるから同じに見えるのですね。うっかりすると、「ふうん」と聞き流してしまうかも知れませんが、本当の数字に置き換えるとその符合の凄さがわかります。

太陽の直径は139万2000km、月の直径は3476km。また地球から太陽までの距離が1億4959万7870km、月までの距離が38万4410km。この、とても半端で大きな数値の組み合わせ同士が、なんと、共に400:1。

正確には後者は390:1ぐらい(月のほうが平均的にやや小さい)ですが、月の軌道は楕円が強く±10%ほど距離が揺動するので、たまにほぼ同じ大きさにもなるのです。何という神様のはからいでしょうか。

みかけの普遍性


この奇跡の一致によって、みかけの普遍性――同じ大きさの太陽と月――が成立しているのです。

2012年の金環日食でエキサイティングな経験をした方も多いでしょうが、さらに奇跡を感じるのが皆既日食です。月が小さかったらあたりが暗くなるほど太陽を覆い尽くすことはありませんし、また逆に月がすごく大きかったら、コロナも隠されてしまい 見映えがしないことでしょう。

隠れるか、どうか。

その、ぎりぎりの数字の上に成り立っているのが、「地球から見える皆既日食」という現象なのです。

絵にすると凄さがわかる

よく説明に描かれる月と太陽の関係は図1のように「ユルい」感じですが、

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実際の影は、図2のように細く、研ぎ澄まされたものなのです。いかに奇跡的な細い影が地球に落ちるか、これを見たらわかりますよね。

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こんなことは、太陽系ほかの惑星にはありませんせんし、広い銀河系を捜しても相当に珍しいことでしょう。

もし宇宙人が「銀河系の歩き方」を読んだら、一番の人気スポットとして「地球から見える皆既日食」が紹介されるはずです。それぐらい希有な現象ですから、地球にいながらその希少価値を知らないのは、「灯台もと暗し」ですね。


 この皆既日食を見る機会と場所はとても限られていて、太平洋だったり砂漠だったり、行くのすら困難なことも多いのですが、3年後の2017年8月21日には北米大陸で見られます(図3*)。夏休みという絶好のチャンスなのでご興味のあるかたはぜひ計画をしてみてください。

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名古屋市科学館Web Pageより引用(http://www.ncsm.city.nagoya.jp/study/astro/astro_news/20121114.html)


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