初めて彼と過ごした夜

結局、私は終電がなくなり帰らなかった。
この選択がもしかしたら間違えだったのかも
しれないと今でも私は考えてしまう。

カラオケは1時間で出た。
なぜならば思ったより盛り上がらなかったから。

そのあと、彼となら何が楽しいかなと思い
よくわからないけれど
ずっと行ってみたいと思っていた
某英国風PUBに2人で入った。

彼は来慣れている感じだった。
金曜日の深夜12時を回り
男女がお酒を飲みながら絡んでいる。
きっとここから何組ものお持ち帰りが
出てくるのであろうと思った。
生々しかった。
私にはまだ刺激的で大人の世界に
中学生が間違えて入ってきてしまった
そんな感じだった。

彼は私が怯えているのをすぐ気づき
おちょくってきた。

「今ここから俺が離れたら
この席に色んな男の人が来るけど離れてみる?」

彼は笑いながらこんなことを言ってきたのだ。
私は「絶対に離れないで」と本気で言った。
彼が好きなのもあったが異空間に本気で
ビビってしまって怖かったからだ。
ちなみにそれからは行っていない。

結局ここも(某英国風PUB)
1時間もしないうちにお店を出た。

お店をあとにして
少ししたら彼はこう言った。

「眠いからホテルに行ってもいい?」

あ、誘われている。
でもきっとホテルには行っちゃだめ。

私はすぐにホテルはいやと伝えた。
なんでもいいから別の案を考え
バーとかネカフェとか色々案を出したけど
全部否定された。
それでも私は絶対に行きたくなかった。
行ったあとの結果をわかっていたから。

時刻はまもなく2:00になるところ。
気がつけば治安の悪い繁華街に入っていた。
こんなところでウロウロしているのも
正直怖かったし、いやだった。

2人で歩いていたらバッティングセンターが見えた。
彼から誘われたホテルからの逃げでもあるが
好きな人とデートっぽいことをしたいと思い
私は「行こうよ。行きたい!」と彼を誘った。
彼は笑いながら「面白いな」と言い乗ってくれた。

私は学生時代ダンスをやっていて
彼はサッカーをやっていて
お互い野球とは無縁だったけど
上手い下手とか得意不得意とか関係なく
純粋に好きな人と1つのことをするのが
楽しかった。

彼はたしかにあまり上手ではなかった笑
あとお酒もだいぶ回っていたし
1日働いて疲れた体でやっていたから
少しきつそうだった。
でも私がしたいことに付き合ってくれた。

私もボールを上手く打てなくて
から回っていたけど
彼が褒めてくれるからうれしかった。

楽しかったけど、2人とも疲れて
睡魔と戦い始めていた。

すごく悩んだ。
悩んだけど、朝までバッティングしているのは
普通に考えて無理。
そして眠い。
そして彼は朝からまたお仕事。
どうにか彼を寝かせてあげたい。
そう思った。

そしてホテルに行こうと私は言った。

偶然近くにホテルがあったのでそこに入った。
ラブホテルだった。
入ると、清掃で少し時間を貰うが
案内はできると言われたので私たちは待った。
待っている時間はすごく変な気持ちだった。
変すぎて私はこんなことを言ってしまった。

「ねぇねぇ私たちってなんでここにいるんだっけ」

そして彼は笑いながら
「わからない」と言った。

今考えるとこのわからないは意味深だった。
そして部屋が空いたので私たちは
エレベーターに乗って部屋まで向かった。

部屋はとてもキレイだった。
ビジネスホテルと何ら変わりなかった。

私は男の人とホテルに行くのも初めてだったし
そもそもラブホテルに行くのも初めてだった。

でも寝るために私は来たわけで
ホテルに来てしまったけれど、やましいことは
しない、させないと決めていたので
私はコンタクトを外し、寝る身支度を取った。
彼は煙草を吸って、暗闇で携帯を見ていた。

私は部屋にいると落ち着かず
寝ようと彼に言った。

ベッドは当たり前だが1つしかなかったので
私は彼に使っていいよと伝えたが
彼は大丈夫と言ったので
私は有難くベッドを使った。

そして電気を消して私たちは寝た。

私は何も気にしていなかった。
大丈夫だろうと思い、ベッドの真ん中を使い
ぬくぬくと寝ていた。
一応怖かったので携帯だけは隅に置いておいた。

寝始めて1時間後。
急に彼はベッドに入ってきた。
「寒い」と言い、私の身体をぎゅっと掴んだ。
私は一気に目が覚め、身体が硬直した。
背後から抱きついてきた彼は
私の頭をわしゃわしゃしてきた。
そして抱きついた手はだんだん胸元まで
近づいてきている感覚があり
私は身の危険を感じた。

怖かった。
怖かったけど、うれしかった。
そしてドキドキした。
でも彼には彼女がいて
私はそういうつもりで
ホテルに来たわけじゃないから
拒んだ。
どうしたらやめてくれるか悩み
咄嗟にベッドでYouTubeを見始めた。
こんなやついるのだろうか。
私はおかしいのかもしれない。

だけど言いたいのは
彼は何十回こういうことがあった中の
1回かもしれないが
私は初めてで、忘れられない1回だから
こういう "流れ" でしてしまうのは
いやだった。
あとはここで彼とそういうことをしたら
もう会えないのではないかと思った。

私は始発で帰宅した。
もちろん彼を置いていった。

こんなにさっさと出てくるなんて
普通の人は思わないから、フロントマンの人も
びっくりしていたのを今でも覚えている。

裸眼で視界がぼやけている状態で
私はまだ明るくなっていない時間帯に
ホテルを出て、電車に乗って帰った。
一応お金も少し置いていって。

それから彼に会ったのは
1年後のことだった。


つづく

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