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第15回「みんなの”面白い”と自分の”面白い”」

 月刊少年マガジン編集部では3か月に1回、新人賞を開催しております。
http://www.gmaga.co/newface/
 もし投稿先を迷っている新人作家さんがいたら、8月末締め切りなのでぜひご応募ください!

 この賞の選考では新人編集から編集長まで、部員全員で最終選考作品を読み、それぞれが各作品に得点を付ける、という方式で行います。(画力、ストーリーなど項目があり、それぞれ5点満点です。)
先日もまた、新人編集くんに「どんなことに気をつけて点をつけたらいいですか?」と聞かれたので

「まずは、とにかく自分が”面白い”と思うものに高得点、という極端な点数を付けたほうがいいよ。あまり、気を使ってどの作品も似たような点数にしないように。」

と伝えました。
 全員の得点は一覧表となり、合計得点が高い順に並べられた表がメールで回ってきます。それを見た新入社員は大抵、「なんじゃこりゃ!」と思うことになります。それは…

・みんなの得点が高いものに自分は低い点を付けていたり…
・逆に自分が最高得点をつけた作品が一覧表の下の方にあったり…
・よりによって編集長が「大賞」を付けた作品に自分は「賞なし」を付けていたり…!
(この時点では選考なので、編集長が「大賞」付けてても、決定ではないです。)

 「え、自分の評価と全然、違うじゃん…」と愕然とするのですが、まぁ、当たり前です。

なぜなら、最初は自分の中に「自分」しか読者がいないから。

 僕も新入社員時分、「なんで自分がこんなに面白いって思っている企画が連載会議通らないんだ!」と憤っていました。そんな僕がハッとしたのは、とある大先輩少女漫画編集の方のこんな言葉です。

 「私は自分の雑誌の読者をこんな風に想定しています。
年齢は17歳、女子高生。住んでいる場所は浦和。決して友達は多い方ではなく、放課後は駅前のドトールに寄ってスマホをザッピングしている。“何か面白いことないかな“といつも暇潰しの材料を探していて、そんな彼女に勧められる漫画を求めています。」

 ものすごく、細かく自分の媒体の読者を想像しているんですね。(ホントはもっと細かったのですが割愛。)これには驚きました。マーケティングの業界では「ペルソナ」と言うらしいですが。

 この仮説の読者が「みんな」です。ただ「みんなが面白いと思うもの」でも同じような作品では飽きられてしまうので、そこにどんな新しい価値=「自分が面白いと思うもの」を付けられるかが大事なんじゃないでしょうか。

 自分しか興味のないことに固執してもダメだし、「こういうのが当たるんだ」とたかを括りすぎてもいけないーーこの天秤のバランスを養うのが新人編集にとっては「持込を見ること」であり「新人賞で作品を評価すること」なのです。

今週は以上です!

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