二回試験2019

総論

今年の二回試験が終わりました。受けてみた感想ですが,とにかく疲れる。お昼時間も含めて7時間30分×5日は体力的にきつかったです。5日目は頭の回転が多少悪くなっている気がすると同時に,座っているのが少し辛くなりました。そういう意味では司法試験よりもきつい試験であったといえます。なお,試験の内容等は手元に記録がないため(試験後すぐに回収される)記憶に基づくものであり,解説などを受けたものでもないことをあらかじめご了承ください。また,教官が変われば問題傾向や解答作法も変わるため,導入・集合修習の教官のお話を第一に大切にしてください。

民事裁判

売買契約に基づく代金支払請求権を訴訟物とする比較的シンプルな問題が出題されました。抗弁として,第三者による詐欺が主張され,売買契約の成否に限定して事実認定を検討させるものでした。この事実認定の対象を「請求原因に限る」旨の指示が問題文にあったそうなのですが,完全に見落としてしまいました。集合修習での起案ではそのような限定はなかったため,完全に盲目的に回答してしまいました。とにかく,問題文に注意して解答することが大事です。当たり前のことでしょうが,緊張感ある試験の中で,分厚い記録を前にして,一枚紙の起案要領を簡単に読んで終わらせてしまうのはあり得ることなので注意しましょう。形式自体は,主張整理,撤回された主張についての検討,事実認定でした。

刑事弁護

無罪を主張する被疑者の言葉をもとに,検察官主張を弾劾する想定弁論,類型証拠開示請求における識別事項,類型,理由を問う問題,弁号証として請求した証拠が不同意になった場合の代替方法とその理由を問う問題,反対尋問で獲得すべき事項とその理由を問う問題。集合修習でやったこととほとんど同じだったので,復習していればできたであろうという感覚。事案は,強盗致傷で,自宅に侵入してきた犯人が寝ている被害者に対して暴行を加えて拘束したあと,自分で部屋を捜索して金品を奪ったもの。

刑事裁判

形式は集合修習と全く同じで,公判前整理手続序盤の段階で考える証明予定事実記載の間接事実の意味合い・重み,それを踏まえた今後の進行を問う問題,保釈の問題,公判整理手続終了直前に出された追加の証拠請求の必要性を検討する問題,事実認定問題。殺人事件で,争点は殺意と急迫不正の侵害(過剰防衛)の有無。殺意に関する間接事実を自分で考えなければならないもの(証明予定事実が省略されている)。

検察

これが波紋を呼ぶ難問だった。犯人が実の祖父を殺害し,財布を奪った事案,単独犯。送致事実は強盗殺人(致死だったかな)。公訴事実と犯人性と犯罪の成否を書かせるもので,情状については書かなくていいという限定つき。直接証拠はなく,間接事実型での立証で,Aの部屋からVの血液が付着した上着が出たというものやAが友人に犯行を打ち明けたことなどの間接事実があった。なぜ難問かというと,罪名を強盗殺人か殺人+窃盗にするかがかなり微妙な事案で,Aは最終的にVを殺したのはキレたからであって,金を奪うつもりはなかったが,殺害後に財布を見つけて奪ってしまったという弁解をしている。ただ,Vの部屋にはなぜか血液がタンスやらについていて,タンスも開けっ放し,しかもAはかなり金に困っていて金を借りるつもりでVに遭いに行っているという事実は明らか。なかなかに迷わせるところだが,さらにめんどくさいのが,殺人+窃盗にした場合,親族相盗例が適用されるということ。その場合,殺人のみが公訴事実になるという…めんどくささ。

民事弁護

これも謎。連帯保証契約を結んだとして,保証債務の履行を求められた被告側代理人として最終準備書面を起案させるもの。みんべんもめんどくさかったのが,原告の主張。原告は,まず覚書という書面があり,これにより保証契約が成立していると主張するが,これは被告会社の代表取締役の一人が勝手に社長の記名押印をして作成したものであるというのが被告のストーリー。原告は,さらに,仮に連帯保証契約がなくても,(中略)原告は被告に賃料を請求できるという予備的請求原因を追加的訴え変更を申し立てている。これに対し,被告の抗弁が主張される(おそらく争いなし?)が,それは「無効」あるいは「取消し」で無効という再抗弁が登場する。しかしその法的構成は省略されていて,自分で考えなきゃいけないという問題だった。おそらく,錯誤無効・詐欺取消しだと思うのだが。また,やっかいなのが,会社法908条1項に基づく原告の主張。勝手に記名押印をした代表取締役は実は覚書作成時には辞任していたのだが,辞任登記まではされていなかったのだから,代表権のあるものの行為なので勝手にやっても効果が帰属するだとうという主張。これに対し,本件では908条の適用はないという項目だけ準備書面にかかれているものの,あとは省略というパターン。これは本当に謎。適当に書いてみたが正解はわからない。最終準備書面自体は集合でやっていたものなので,そこまで焦るものではなかったが内容にやられた。その他小問として,保全に関する穴埋め問題,立証(証拠収集方法や戸籍に関するもの)に関する穴埋め問題,和解案の穴埋め問題,弁護士倫理の問題として,簡単な事例2つについて,弁護士の行動が許されるか,受任してよいかを問うもの(秘密保持・利益相反)。

おわりに

対策としては集合修習の復習に尽きるといってよい。これに加えて,実務修習中の問研等や導入修習の復習ができればなおよい。また,A班は集合のあと選択型実務修習を挟んで二回試験となるため,起案のルールや論証枠組み等忘れないようにすることが大事。その前提として集合修習の講評等はしっかりメモしましょう。教官はメモしなくていいといいますが,絶対にメモしたほうがいいと個人的には思います。あと,法曹の総合的な資質を問うためなのか,感覚的には,集合の起案とは違って,実体法の理解を求める問題も比較的多かった気がします。ただ,これについては予測が不可能なので,日ごろの積み重ねか,あるいは司法試験勉強の記憶に頼るしかないです。

その他

A班は,寮を使用することができないため近辺のホテルを使うか実家などから通所するということになります。ホテルは和光の場合,「スーパーホテル」か「東横イン」しかないため,予約可能になったらすぐにとることをお勧めします。ただし,現在和光駅にホテルが併設されるらしく,完成間近のようなのでもしかしたら多少余裕が生まれるかもしれません。仮に和光で取れなかったとしても,池袋等で泊まるという手段もあり得ます。

また,お昼ご飯ですが,お弁当屋さんは研修所にきません。さらに,研修所の食堂,売店(朝は?),自動販売機すべてが使用不可能です。お昼は購入してから向かいましょう。

試験会場の雰囲気ですが,研修所の場合(別に大阪会場があります),1クラスに数人は同じ修習地の人がいるといった感じでごちゃ混ぜにされています。試験官は司法試験の際と似たような感じでご年配の方が多いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?