司法修習で読んだ関連書籍 民事編

1要件事実関係

「新問題研究 要件事実」司法研修所
白表紙。はじめの総論的な説明は修習で何回も読むところなので,訴訟物とは何か,要件事実とは何か,については一応目を通しておきましょう。

「紛争類型別の要件事実ー民事訴訟における攻撃防御の構造」司法研修所
ロースクール時代から読んでいた要件事実の定番基本書。典型的な契約や物権に基づく訴訟物をいくつか紹介し,なぜその要件事実となるのかを説明するもの。現在も研修所の理解としては,これと新問研を読んでいれば必要最小限は足りる。ただし,ロースクールで行間を埋める授業があったので理解はしていたが,この本だけですべて理解しようとするのは困難かもしれない。

「要件事実問題集」岡口基一
詳細な解説やいくつもの事例による問題が掲載されており,独学するには秀逸な一冊。過去,研修所で行われた要件事実に関する問題形式を採用している。ただ,現在の研修所ではロースクールで要件事実はある程度学んでいることを前提にしているため,簡易な問題しか問われないため,この本はややオーバースペック・高度である。そのため修習の復習の際につまみ食い的に読むのが精いっぱいであった。参考答案等があるので,具体的にどう書けばいいのかまでわかるのが素晴らしい。

「要件事実論30講〔第4版〕」村田 渉、 山野目 章夫
要件事実の独学教材としては,もっともポピュラーなのではないかと思われる有名本。要件事実問題集よりも平易,シンプルで分かりやすいのが特徴。第4版は民法改正に対応しているため,内容が改正後のものになっているのが注意であった(72期としては)。総論部分もあり,一冊でよく勉強できるので,迷ったらこれを買うのが無難か。

「新版 完全講義 民事裁判実務の基礎 入門編 ─要件事実・事実認定・法曹倫理─」大島眞一
大島本と呼ばれるものの新作。大島といえば「完全講義 民事裁判実務の基礎」が有名であるが,私は読んでいなかった。なぜなら,ロースクール時代は使用しておらず,修習に入って購入しようとした際,目についたのが,新版の方だったので,新しいのがあるのであればこちらだろうと考えたため,購入しなかったのである。ちなみに,民裁でお世話になった裁判官は「完全講義 民事裁判実務の基礎」を執務中に参照していた。裁判官である大島が修習生に教えていたことを内容としたものであり,修習生がメインターゲットとなっている。要件事実・事実認定・法曹倫理について網羅的に記載されているが,内容はそこまで深くなく,意外とあっさり読める。現在の研修所の見解と異なるものもあるため,教官が導入修習時に注意点を教えてくれたが,おススメではあるらしい。授業の復習や独学に便利。

「民事裁判実務の基礎 発展編 ―完全講義 要件事実・事実認定・演習問題 」大島眞一
上記の発展編。こちらは,入門編をさらに掘り下げて,演習等もついたもの。要件事実よりは事実認定の勉強のために用いた。

「要件事実マニュアル」岡口基一
手元に置いておきたい本。特に弁護や民裁修習中には起案の際に参照することが多かった。ロースクール中も参照することが多かったが,修習では家事事件などの各分野についても幅広く参照する機会があった。要件事実だけでなく,引用されている判例などに触れることができるのがまたいい。


2事実認定関係

「事例で考える民事事実認定」司法研修所
白表紙。重要白表紙の一つ。現在の研修所の作法が載っているため,必読。特に,事実認定の4類型や二段の推定に関する記載はよく読むことになった。

「ステップアップ民事事実認定」土屋文昭ほか
司法研修所教官が著者に名を連ねるもので,現在でも有用な事実認定の定番本。そこまで内容が分厚くないため,修習中に読み終えることができるのがまたいい。事実認定に関する総論的な記載や事例ごとによる演習がある。二回試験対策としては,演習部分が有用で,網羅的ではないものの,簡単に演習ができるのでよい。

「民事訴訟における事実認定」法曹会
典型契約などについて判例などを参照しながら,事実認定について整理したもの。契約類型ごとにどの点が争点になりやすいか,その争点についてどのような視点が重視されやすいのか,事実認定の視点を知るのに有用。

3その他

「事例に学ぶ保全・執行入門」野村創
事例に学ぶシリーズ。このシリーズは修習生に評判が良い。実務的な観点から実務感覚を学ぶのに秀逸で,保全・執行入門はストーリー形式かつ会話形式で紹介されるため,流れもわかりやすく,入門書としては便利。二回試験対策としては十分で,現在では試験の中ではこの本よりも高度なことまでは求められていないので,必読ではないが,修習生として保全・執行の知識が気になる場合には一読の価値あり。

「事例に学ぶ労働事件入門」労働事件実務研究会
事例に学ぶシリーズ。労働事件に興味があったため購入。内容としてはまさに入門書で,とりあえず読むには十分。しかし,労働部に配属されたり,労働事件を扱う事務所に修習することになれば,容易にそれ以上の経験が手に入る。

「破産事件の基本と実務」髙木裕康
破産について勉強したかったので購入。具体的にどのような書面を作成すればいいのかまではわからないが,流れや実体法上問題となりやすいところを事例を通して紹介するので,破産法の勉強になる。もっと具体的な実務的なことを知りたかったのではあるが,実務的なことは所属する地域の裁判所によって運用が異なるので,弁護士になってから勉強すればいいだろうと思っている笑。

「企業法務のための民事訴訟の実務解説」圓道至剛
「企業法務のための」と銘打っているが,もともとは「若手弁護士のための民事裁判実務の留意点」という修習生向けの本があり,それの新版的位置づけの本である。そのため,修習生が読んでも全く問題ない。元裁判官である著者が,民事訴訟法等に基づいた民事裁判の解説をするとともに,法令上の根拠が特にない慣習による「お作法」も含めて実務の動きを分かりやすく解説している。民事裁判修習の際には必携といえる名著。

「若手法律家のための法律相談入門」中村真
実務家向けの良書を数多く出版されている中村弁護士の一冊。法律相談におけるハンドブックが存在するものの,法曹倫理等にとどまらず自営業者としての活動にまで気が配られた,ここまで具体的で分かりやすく解説された本はほとんど存在しない。良書。若手法律家のため,とはされているがなかなかハイレベルなところまで書かれており,とても勉強になる。この本を軸に自分なりの法律相談を確立していきたい。

「ライブ争点整理」上石奈緒ほか
当時の研修所教官らが作成したもので,民事訴訟における弁護士と裁判官の内心を明らかにしたもの。どのような意図で弁護士は書面を提出し,どのような意図で裁判官は訴訟指揮しているのかが分かるもので他に類をみない一冊。二回試験との関係では直接的に有用とまではいえないが,今後の法曹生活においては非常に有用なのではなかろうか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?