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空がこんなに青かったとは

さて、恵比寿は「山小屋」にて紫波町地域おこし協力隊仲良し4人組による4人展『私にも、できるかもしれない』をひやかしに行くために東京まで出てきたことは前回のとおりなのだが、その足取りを振り返ってみる。

まず、移動手段は夜行バス。
岩手の北上駅→東京鍛治橋駐車場の運賃が平日料金2500円、休日料金でも3500円。往復で6000円とおかしな料金設定のバスに乗って移動した。新幹線の方が早いし楽ではあるのだが、なにぶん片道14000円はかかる。窓から眺める景色やお楽しみの駅弁タイム、仲睦まじい家族旅行や、親しい人と共に行く旅なんかでプライスレスな時間を共有するのもいいなぁ。なんて、思ってみたりもするのだが、しがない男の独り移動。4倍以上の料金払って新幹線は選べない。
夜行バスでの移動を前に少し考える。
紫波中央→北上の運賃が590円。
田舎の電車は本数が少ない。いわんや終電近くをや。大寒波が迫るクッソ寒い時期に電車待ちでガタガタ震えているよりも、紫波中央駅前駐車場より、ちょっとお高めの駐車料金を払ってでも北上駅まで車で行った方が快適なのでは?と直前で思い立った。事前に考えておけば、予約制で1日定額料金の駐車場を利用すればもっとお得だったはずだが、そこまで頭が回らなかった。
荷物の中に、前に働いていたスーパーで、レジのおししょーから退職の際にもらった大きめのクッションを入れてある。これさえあれば、長時間座りっぱなしの腰の痛みはかなり軽減できる。あとは、トイレなしのバスなので、2時間おきにパーキングエリアで休憩を取るたびに明かりがついて睡眠が寸断されることだが、もともとボクはショートスリーパータイプなので、1日2日十分な睡眠が取れなくても行動に支障が起きにくい。
というわけで、岩手で寒さに凍える心配をしなくても良くなったので、着ていく服は荷物軽減の観点からも関東仕様。読みかけの本と暇つぶし用の本を数冊持って岩手を発った。

夜行バスの朝は早い。
7時に東京駅に降ろされる。
直に目的地である恵比寿まで行っても、4人展のオープンは12時。時間潰しが必要だ。
ということで、せっかく渋谷区に来ているのだから、中退したかつての学び舎「國學院大學」まで足を伸ばしてみた。
山手線渋谷駅で電車を降りて、何口で降りればいいのかすら忘れたボクは、どうやら反対側に降り立った。
さすがは2択があれば的確に外す男。
微かな記憶を辿っても、こっちじゃない感が強かったので、適当に駅をグリっと回る。いや、渋谷駅が年中改装中なのが悪い。などと思い直しつつ、モヤイ像、ハチ公、バスターミナルを抜けて、なんとか見覚えのある道を見つけた。
うっかり手前の宮益坂を登ろうとしていた自分の危うさよ。
明治通りを歩いて行ってどっかで左に曲がるという道もあるが、そのどこかを思い出せないので危険極まりない。微かな記憶をあてにして、國學院大學近くの渋谷氷川神社を抜ける道を目指してみる。神社を目印にと思っていたため、どこぞの稲荷様に迷い込む。そのまま間違ってご近所の実践女子中学校の校門へと辿り着いてしまい、明らかに道に迷ったと判断するも、「ここで突然踵を返したら不審者なのでは?」なんて、余計なことを考えたせいで、そのまま狭い坂道を下って行った。
途中、「渋谷図書館は2022年3月31日で閉館しました。」という悲しげなメッセージが掲げられた門を見かけた。
狭い道を突き当たると、何処となく見覚えのある道に思えた。その道を左に曲がると、今度は小学生と要所要所に配置されているだろう小学校教員らしき人の視界に捉えられる。常磐大小学校の裏門と思しきものが見える。
「違うんです、違うんです。不審者じゃないんです。」と、心で念じながらできるだけ誰にも目を合わせないようにしていると、信号を超えた先にあるじゃないですか、見覚えのある参道が。
ここまで来ればもう迷わない。そうだ、小学校隣にあったな。なんてことすら忘れていた。神社を抜けて、傍から見上げる國學院大學渋谷キャンパス。ろくに通いもしなかった学び舎をスマホに映す。
せっかくなので敷地内を歩いてみる。あの後も改装やら増築やらをしたのか、いつかの昔、ここで紫波町産間伐材を使ったプランターで花を育てた場所がどこだったかいまいちわからなくなっていた。敷地内の神社で礼をして、正門を出ると、何やら見慣れない建物、「國學院大學博物館」なるものが出来上がっていて、そのことが無性に面白くなって、ちょっと興奮した。会館は10時から、今が8時を過ぎた頃なので徒に待っていても仕方がないと思い、それでもこっちにいるうちに観にこようと決めて、その場を後にした。

さて、ここから恵比寿駅までは大した距離ではないはずなので歩いて行くことにする。ここでようやくスマホでルート検索を使う。
寸断された思い出を辿り、目的にまでの記憶を繋ぎ直す道すがらに、この便利ツールは野暮すぎる。
やはり大した距離ではなく、明治通りに出てしまえばほぼ真っ直ぐだった。大學から明治通りに出ると、あっここで曲がるんだったな。と、いうのも思い出す。ここで、思い出巡りもおしまいだ。

恵比寿駅まで来たはいいが、何を血迷ったか、4人の地域おこし協力隊のうちの星真土香さんが前日にアップしていた動画と画像を頼りに探してみようと思い立った。
人間、時間に余裕があるとどうでもいいことを思いつくものである。
しかし、步けども歩けどもそれらしきものが視界に入ってこない。30分くらい歩き回って諦めて、同じく地域おこし協力隊のあまのさくやさんがアップしていたギャラリー「山小屋」周辺の簡略地図を見ることにした。
しかし、簡略地図を読み解くのがド下手くそなボクは、簡略地図には書かれていない細い道に入ってしまい方向感覚を失った。
つごう、1時間くらい恵比寿駅周辺で盛大に迷子になっていた。
迷いに迷った末に見つけたギャラリー「山小屋」は想像以上にこぢんまりとしていた。もっとこう、それっぽい建物の一角ってイメージを持っていたので、この道を何度か通り過ぎていたものの見過ごしていた。
思い込みと乖離したものというのはこうも視界に入らないのかと思い知った瞬間であった。
9時半頃ようやく会場を発見したという旨を星さんに報告すると、『早すぎる」という返事が返ってくる。開場まで2時間半、そりゃそうだ。

開場までの時間…そういえば國學院大學博物館の開場時間が10時、ここから歩いてだいたい30分くらい。となれば、大変都合が良い。
ボクは来た道をひとり、足取り軽く引き返して行った。


このnoteの見出しのために渋谷にて撮影した國學院大學のキャンパスを見上げる画像を改めて見ると、その時は全く気が付かなかったのだが、知らなかったよ、空がこんなに青かったとは。
夜行バス明けのためなのか、あまり良い思い出のない場所のためなのか…

おのずから、空の青さに気づけていたなら、空は教えてくれたのだろうか?
「大きい心を持つように」
「大切な人の手を離さないように」
と。

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