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「またペプシ ジャパンコーラを救えなかった...。」 本田圭佑は呟いた。

「またペプシ ジャパンコーラを救えなかった...。」

本田圭佑は呟いた。

ペプシ ジャパンコーラの倒産を経験するのは何度目だろうか。

はじまり

始まりは、ペプシ ジャパンコーラから届いた一通のメールからだった。

本田圭佑 様
ペプシ ジャパンコーラ○○担当の○○と申します。
以下のような企画を実施したいと考えておりまして、よければご協力いただけませんでしょうか?
【目的】新しくなったペプシ コーラのプロモーション
【内容】本田圭佑様にじゃんけんを行っていただき、勝った方にペプシコーラをプレゼントします。

以上、よろしくお願いいたします。

僕は、この依頼を快諾した。

じゃんけん

企画の準備が進められ、利用するプラットフォームにはツイッターが選ばれることとなった。
そして企画が開始した。

企画が始まってから僕は、毎日カメラの前で一日中じゃんけんを繰り返すこととなった。

利用者は、公式アカウントへのリプライによってじゃんけんを申し込む。僕はその結果を確認せずにカメラの前でじゃんけんを行う。

文字だけでは味気ないということで、企画の人たちが挑戦者のプロフィール画像と、指定したじゃんけんのマークを表示するディスプレイを用意してくれた。

僕は、そのディスプレイに向かってじゃんけんを繰り返した。

撮影された動画は自動的に手元の端末に保存されるので、それを用いてリプライを行った。

負ける

凄まじい負けとなった。勝率は50パーセント。

勝ちと負けとあいこの比率がきれいに1対1対1になった。

現役時代にも数々の敗北を経験してきたが、それにまして今回の負けは非常に悔しかった。じゃんけんの手法について次第に試行錯誤を重ねるようになったが、勝率は上がらなかった。

流出するコーラ

この結果は、本企画者および、それを承認した経営陣においても想定外だったらしい。

想定していた数百万倍の数のコーラが、無料で提供された。

それは、ペプシ ジャパンコーラの現在の資産価値すべてを食いつぶすに匹敵する損失となった。

ペプシ ジャパンコーラの倒産

かくして、ペプシ ジャパンコーラは倒産してしまった。

僕は深い後悔と自責の念に囚われた。僕が負けたことで、ペプシ ジャパンコーラという企業がこの世から消えてしまったのだ。

じゃんけんを、やりなおす

そして僕は、時を遡ってこのキャンペーンをやり直すことにした。

僕がじゃんけんにおいて高い確率で勝利することができれば、ペプシ ジャパンコーラは倒産せずにすむ。

そして僕は、キャンペーン開始前にタイムリープした。

タイプリープ

そこからは大変だった。

何度繰り返しても、じゃんけんの勝率は50パーセントに収束した。

たまに上ブレがあったり下ブレがあったりするが、せいぜい5パーセント程度の話で、ペプシ ジャパンコーラを救うには至らなかった。

ただ、1986回ほどタイムリープを繰り返した頃、少し自分の中で確信のようなものが生まれ始めた。

法則

自分がじゃんけんの際に行う一連の動作によって、じゃんけんの勝率に影響を与えられることがわかってきた。

例えば、

・じゃんけんを行う前に「飲みたくないですか?」と挑戦者の意欲をそそると、少しそのじゃんけんにおける勝率がアップする。

・じゃんけんに勝利したとき挑戦者を少し煽るような動作を行うと、次のじゃんけんにおける勝率がアップする。

・じゃんけんが終わるたびにペプシコーラを飲んで毎度新しく冷えたものを用意すると、じゃんけんにおける勝率がアップする。

などだ。

とはいえ、今となっては本当にこれが正しかったのかはわからない。
もしかしたら、おまじないのようなものだったのかもしれない。
だが、当時の僕はそう信じていた。

手法の改良

一連の手法についても改良を重ねた。

まず、ツイートの返信はテンプレートを利用するようにした。本番のプレーに集中して取り組めるようにするためだ。

最初は手打ちしていたが、そうするとじゃんけんにおける集中力に影響が出るように感じた。

そのため、テンプレートをコピーペーストして返信を行うようにした。

また、この頃になると一連のじゃんけんの動きについて、毎回全く同じ動きができるようになった。パッとみただけだと動画と勘違いするのではないだろうかと思う。

すべてのスポーツにおいて、「型」は重要だ。
タイムリープからキャンペーンが開始するまでの間には、鏡に向かって素振りを繰り返した。

周囲が不安そうな目で僕を見ていたのは知っていたが、僕の心に迷いはなかった。

そして今

そして、タイムリープした回数があやふやになってきた頃、勝率99.5パーセントという納得できる結果を出して、僕はペプシ ジャパンコーラを倒産という未来から救うことに成功した。

今、自宅の書斎でこの文章を書きながら、苦いブラックコーヒーを飲んでいる。

しばらく、ペプシコーラを飲む気にはなれないだろう。

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