【実録】休み方が分からない日本人 #下書き再生工場
『休暇取得は労働者の権利だぁ」と声高に叫ぶ人がいる一方、休み方が分からない日本人も多い印象を抱いています。そんな典型的な日本人と言えるTさんのことをお話させてください。。
ある朝、業務が開始されて間もない時間にTさんに電話が入りました。何やらその応対に不穏な空気を感じた私は声をかけました。
「今の電話、何かありましたか」
「いや、大したことでは無いのです。高校生の息子からだったのですが、自転車で学校に行く途中で胸が苦しくなったらしく、学校を休むとのことでした。それでお願いがあるんですが、午後から早退して息子を医者に連れていきたいんですが、よろしいですか」
自称、温厚であり日ごろから極めて理性的に行動しようとしている私ですが、この時は少し感情的にTさんを叱ってしまいました。
「ちょっと待ってください。午後から早退なんて認められるわけないじゃないですか。今すぐ帰宅して、息子さんを病院に連れていってください」
(ふざけんな!)という言葉は何とか飲み込みました。
「いえ、出勤したばかりですし、午前中に片づけたい仕事もあるので午後から早退で大丈夫です。胸が苦しいと言っていましたけど、朝も元気だったし大丈夫だと思います」
Tさんの煮え切らない態度に苛立ちを感じ、さらに強い口調になりそうなところを何とか抑えこみ、努めて静かに伝えました。
「急ぎの仕事があるなら、我々でフォローします。仕事は我々が代わることができますけど、息子さんにはあなたしかいないのです。仕事なんかしてないですぐに帰宅してください。考えたくは無いですが、息子さんに万が一のことがあったりしたらTさんの家族に謝っても、謝りきれませんよ。俺はそんなの嫌ですからね」
ハラスメントと取られかねない私の圧にTさんが屈しました。
「では、帰らせていただいてもよろしいですか」
「当たり前ですよ」
Tさんは出勤したばかりだというのに、早退させられました。
昼前にTさんから電話が入りました。
「息子なんですが、気胸ができていたということで、午後から手術をすることになりました。ご迷惑をおかけして、すいませんでした。ありがとうございました」
「息子さんにお大事にするよう伝えてください。急な手術で息子さんも不安に感じていると思いますので、状況によっては明日以降も休暇を取り寄り添ってあげてください。あと、誰も何も迷惑をかけられていないですから、謝る必要はないです」
少し格好つけたような話ではありますが、フィクションではなく実録です。正直なところ手術が必要な病気とは予想もしていませんでしたが、
『高校生の男子が、体調不良で親に電話してくるということは、相当体調が悪くて、不安な心境に違いない。それならば、すぐに駆けつけるべき』
くらいの見込みは立てていました。
『万が一のことがあったりしたら、〇〇さんの家族の謝っても謝りきれませんよ。俺はそんなの嫌ですからね』
というのは時々使うブラックジョークです。係員が疲れているように見える時や、体調が悪そうに見えるときに休暇取得を促すために使うことがあります。
「休み方が分からない日本人」が多すぎる中、『休暇取得は労働者の権利だぁ』と声高に叫ぶ人を否定はしませんが、私は時にジョークを交えながら時に真面目に語りながら、ゆるーく休暇取得を促していきたいと考えています。
大事なことは職員と家族の健康であり、命です。そこは揺るがず行動していきます。
なお私ごとですが、お仕事を始めてから4回ほど入院しています。40代と50代で入院した時に、職場の方は誰一人お見舞いには来てくれませんでした。人徳という言葉を痛感したところです。確認ですが本稿は実録です。
来月も短期入院を予定していますが、おそらく誰も…。
あれ、何だか画面がにじん………。
(おしまい)
本田さんの企画に参加です。
#本田すのうさん
#下書き再生工場
ネタ元は「ずっきーさん」でした。
本作は過去作のリライトになります。「前にも読んだ気がする」と感じた方正解です。この話がインパクトありですが、普段から休暇取得を促進してるのは本当です。
自ら率先して休暇取得しています。
#何を書いても最後は宣伝
福島太郎がお仕事について語る本がこちらです。