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【駄文】黎明奇譚の没ネタ

 黎明奇譚というのは、正確には「元宮ワイナリー黎明奇譚」と申しまして、私がKindleで発刊した「公務員三部作」、「公務員のタマゴに伝えたい話」、「同 第2集」に続く書籍の題名になります。
 なお、発刊にしたのは三作目になるのですが、原案は一番最初にありまして、書籍化するタイミングが遅れたことになります。
 せっかくなので、書籍化前の原案を下書きから復活させて公開します。

 この作品に入れなかったエピソードが今回の主軸なのですが、東京の大手商社から投げられた復興支援事業として、ワイナリー用の葡萄作りに協力していただくため、市内の葡萄農家さんを訪問したという場面の再現です。

商社「震災以後、風評被害とか困りごとがあったと思いますが、その辺りの話を教えていただけますか」
農家「いやぁ、うちは基本的に、個人のお客様を顧客として直接販売しているけど、ほとんどのお客様が、それぞれ状況を確認されて「農家さんの葡萄が食べたい」と、取引を継続してくれたので、風評被害は無かった。それどころか、口コミで応援していただき、売上が伸びて品薄なんだ」
商社「じゃぁ、うちがワイナリー事業を立ち上げたとしても、ワイン用の葡萄を作っていただくことは難しいですか」
農家「難しいなぁ、人も耕作地も余裕はない。けど、ワイン用の葡萄って、どんな葡萄を植えるつもりだい」
商社「赤とか白とかを考えています」
農家「いや、葡萄の品種だよ」
商社「品種?..........これから考えます」
農家「何も考えてないのかい。俺は考えているよ。自分でワイン用の葡萄を作るとしたら、メルローにするかシャルドネが良いか、ソービニヨンブランにするかとか。俺はねぇ、自分の畑で作った葡萄からできたワインを飲むのが夢なんだよ。一農家では設備投資、販売ルートとかの課題があるから、夢物語のつもりだった」
商社「つもりだった?」
農家「あんた等が、ワイナリーを造る。そこで、俺だけの葡萄でワインを醸すことを検討してくれるなら、俺はワイン用の葡萄を作るよ」
商社「農家さんだけのワインを創ることをお約束します」
農家「おいおい、上司の許可も得ずに、そんな約束していいのかい。どんな葡萄ができるのかもわからないのに。それに、あんたは人事異動もあるんだから、いつまでもこの事業の担当じゃないんだろう」
商社「必ず創ります。僕が異動しても約束を引き継いでいきます」
農家「わかった。あんたを信用する。赤でも白でも、ワイン用の葡萄を栽培するよ。復興とか風評被害はさておき、あんたのために汗をかくよ」

 という場面も構想にはありましたが、「風評被害はないよ」という部分が、全体とのバランスが悪いこともあり、没としました。
 普段からお付き合いいただいている、勘の良い方はお気づきかと思います。この没ネタを、あえて公開した意味を。
ジャン!

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 「ふくしま逢瀬ワイナリー」初となる、単独農家さんの葡萄によるワインが販売されましたので、購入して参りました。
 これは嬉しいニュースでした。外野からワイナリーを見続けてきて、「真の復興のためには単独農家さんによるワインが必須」と考えていたからです。実に嬉しいです。ちなみに、下の白い台はプリンターですが、特に意味はありません。

 そして、普段からお付き合いいただいている、勘の良い方はお気づきかと思います。この没ネタをあえて公開したと言いながら、実はこのボトルを見て、それらしい話を創ったということ。
 そして、抜歯をした翌日のため、今日はワインを飲むことができないということを。

 どこまでが、事実なのか解らないのが「駄文屋福島太郎の真骨頂」、真実は皆様の心の中にあるとおりです。
 元宮ワイナリー黎明奇譚はこちらです。事情により紙書籍は表紙が異なり、ショートショートが1話追加されています。

 最後までお読みいただきありがとうございました。
 ふくしま逢瀬ワイナリーについては、マガジンで記事を纏めていますので、よろしければ御読みください。


 

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