月命日(6回目) #シロクマ文芸部
振り返るほどの刻が過ぎてはいないけれど、半年というのは、振り返る節目としては良いのかもしれない。
享年76歳と早い気はするものの、ピンピンコロリと言う言葉に近く、普通に仕事に行き、帰宅して、晩御飯を食べた後、脳梗塞の発作を起こし、救急搬送、緊急入院をしたのが6月21日の夜。
僕の認識では
「脳梗塞ということは、喫緊に死ぬことは無いだろう。入院が長引くこと、リハビリがどのくらいかかるか不安だな」
という感じで、6月22日には入院後のケアをするために仕事を休んだけれど、夕方には
「明日は出勤できると思います」
と職場に連絡をしていた。
ところが、翌朝の5時過ぎに、いつもどおり猫の散歩をしていたところに病院から電話が入った。
「今から面会に来ていただけますか」
病院に駆けつけた時に、もう意識はなく、言葉を交わすことなく、そのまま旅立った。
その後、6月25日通夜、26日告別式、49日法要、初盆、お墓の手配、納骨とバタバタな半年間だった。悲しむ暇もなく、
『あれして、これして、あれもしないと、これもしないと』
と、周囲から捲し立てられた。
「ほっといてくれ、我が家のことは我が家で決める」
と言えないのが、田舎の分家のもどかしさ。
無宗教の筈が、仏教らしい段取りで、それなりに格好をつけてきた。
半年が過ぎ、ようやく母との時間を振り返ることができるようになった。
今夜は母の仏壇に「カレーとお酒」を献じた。
生前、あまり母のために料理をしたことは無いが、偶にカレーは準備した。
母のカレーは「豚肉」だけと、僕は「牛肉」を使う。
「牛肉、高いんじゃないの」
「今は、そんなに変わらないよ」
というのが、お決まりの会話だった。
今日も「牛肉」にしたけれど、安い牛スジにした。自分一人で食べるなら安い肉でいい。
台所は「母の聖域」みたいな気がして、生前はなるべく立ち入らないようにしていた。
「もう少し母のために料理をしてあげればよかった」
という気持ちは全く無い。
「息子のために料理を作りたい」
という母の気持ちを尊重してきたからだ。
ただ、まぁ、これまでも、これからも、年に数回くらいは、母のために料理を作ろうかと考えている。
料理は苦手でも嫌いでも無い。
今は毎日、台所に立っている。
母の聖域だった台所は日に日に姿を変えていく。
ちょっと悩ましい気持ちもあるけど、母が未練を減らし成仏していくことに繋がると考えるようにしている。
この半年間、母を想うことはあるけれど、後悔も悲しみも無い。母が望むのは、僕が泣いたり、悲しんだり、過去を後悔することではなく、元気に笑って過ごすことだと思うから。
有り難いことに、note街で過ごすことで、非日常の苦しさ辛さを和らげていただいた。
皆さまに心から感謝します。
note街のクリエイターさんたちと交流しながら、刺激を受けて、くだらない話、つまらない話、偶に真面目な話を投稿して、笑いながら過ごすことができた。
#かこに感謝し今を受け入れ未来を夢見て
僕は明日も台所に立つ。
母の想いとともに生きていく。
より良い未来を夢見て生きていく。
#何を書いても最後は宣伝
今年度の上半期(半年間)のnote街での投稿を中心に纏めた本が、こちらの「ショートショートパラダイス」になります。
是非、私の「振り返り」にお付き合いいただきたらです。
サポート、kindleのロイヤリティは、地元のNPO法人「しんぐるぺあれんつふぉーらむ福島」さんに寄付しています。 また2023年3月からは、大阪のNPO法人「ハッピーマム」さんへのサポート費用としています。 皆さまからの善意は、子どもたちの未来に託します、感謝します。