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【公タマ伝R】行政の肥大化

 公タマ伝というのは拙著「公務員のタマゴに伝えたい話」の略称になります。「R」はリターン、リライト、リベンジなどの頭文字をイメージしています。公タマ伝は完結していますが、時々、帰ってきたり、書き直したり、書き足したりすることがあります。ということで、「あおきよしみさん」との交流から生まれたお題「行政の肥大化」についての稿です。決して、自分の考えが正解とは思いませんが、「気づき 学び 深め 活かす」の一助としての挑戦です。

 「住民サービス」、「公共の福祉」の名の元に、様々な形で行政行為が行われていますが、本来すべき業務を離れて「肥大化」していることを懸念しています。背景には様々な要因が考えられますが、思いつくまま主体別に例示します。
1 住民の権利意識が高くなった 
 → 私たちは行政サービスを受ける権利がある
2 他の自治体の情報が入手しやすくなった 
 → 他ではこのような施策をしている
3 首長などの政治家による選挙対策
 → 票集めのためのバラマキ、利益誘導
4 メディアの報道姿勢 
 → 理ではなく利、情による報道、批判のための報道
5 行政組織の規範意識の低下 
 → 政治家やメディアなどに対する迎合

 様々な事象について、これらのことが複雑に絡み合いながら行政が行われている印象です。
 恐ろしいことに、ほとんどの行政行為には「利害」が同時に存在しています。「規制と規制緩和」、「作為と不作為」などのように、相反するような行為でも「利害」は同時に存在していますので、行政がどのような選択をしても、一定の層からは支持され、一定の層からは批判されることになります。

 それをどう受け止めつつ判断し、どのように説明責任を果たしながら、行動していくかが問われると認識しています。
 例えば、「クールビズ」や「ハンコレス」について、ネクタイや印鑑を生業とする方からは反発を受けますが、現状では住民からの反対の声は小さいと感じています。
 この「利害」を踏まえ判断する上で「費用隊効果」や「最大多数の最大幸福」などが、一つの物差しになるのですが、「目的」や「時間軸」(緊急性)などを踏まえると、「正解」というものが判断しにくいので、行政組織としては「前例踏襲」や「横並び」という、比較的安全な解や、為政者に有利な解を出したがるものと考えています。

 それが、将来への禍根を残すことを懸念しています。「王様は裸」と声を上げないことを良しとしたくないと考えています。
 そのため、スクラップ&スクラップを標榜し、ゾンビ事業を倒そうとドン・キホーテのような役割を演じようとしてしまいます。
 余計なことをしないのも行政サービスです。

 目の前に見える役所の先輩、首長などの政治家や関係団体等の意見だけでなく、「声なき声」を聞こう、「見えない住民」を見ようとする姿勢も必要なものと考えています。なので、組織としては難しいですが、個人としては役場を出て民間の方と席を共にしますし、後輩達や住民が意見を言いやすいオッさんでいようとしています。何かを問われれば、汗かき恥かき自分なりの解を伝えたいと考えています。
 それでは、いつものとおり、川ノ森千鶴子さんの名セリフをお借りします。
『ほんとうに大切なことは目に見えない、けれど、見ようと思えば見える。そういう気持ちで見れば見えるのだと。本当に何かを見るということはそういうことなのだと。心の目で見るのだと』(黒田製作所物語 あとがきより引用)

 私自身もちゃんと見えているとは言えませんが、ただ「見えているふり」や「見ないふり」はしたくない。声を出すことを恐れずにいたい、そのために学び、深めることを継続していきたい、できれば活かしたいと考えているところです。もちろん、現実に生きていく上では「打算や妥協」もしますし、「惰性」や「前例踏襲」を受け入れることもあります。
 それでも、より良き未来を夢見て生きたいのです。

 少し、観念的な方に脱線してしまいましたが、最後に私の好きな地方公務員法を御紹介します。

地方公務員法第32条
(法令等及び上司の命令に従う義務)
職員は、その職務を遂行するに当って、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の定める規定に従い、かつ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。

 上司の職務上の命令に従うのは、「法令等の規定に従い」、「かつ」が前提です。つまり「上司の職務上の命令」の前段には「法令等の規定」が存在しています。この法律は一般的に「明確に違法な命令には従わなくてよい」と解釈されていますが、「法令等の根拠がある、上司の職務上の命令に従う」と読むこともできるのではいかと考えています。また、行政を執行する上での優先順位は「法令等」が先であり、その後で「上司の命令」と読む解釈もできます。
 先日掲載した「行政とは」で申し上げました「行政とは法令等の具現化です」という言葉の裏には、このような私の懸念と根拠があるというお話でした。そして「行政行為」が「法令等」に違反しているかを判断するのは「司法」ですから、私の解釈で行政を執行したとしても、司法に否定されるまでは合法になるということになります。

 長々としたお話をお読みいただきありがとうございました。偶にはこのような真面目な話を考えるのも楽しいものです。良い機会を与えてくださいました、「あおきよしみさん」に御礼を申し上げ、稿を閉じたいと思います。
 そして、毎日申し上げますが、こういうことを面倒なことを考える「ウッセイヒト」である人物が、「仕事抜き」「恋愛譚」で創作した「恋する旅人」という面白い本をお勧めしています。
 また、この本には、このような面倒な考え方を基礎とした役人を主役にした「小作品」も掲載されています。「元宮ワイナリー黎明奇譚」という本も、役人としてのあり方を考える物語として綴りました。




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