【創作SS】恋する高原 #シロクマ文芸部
ヒマワリへ語りかける。
「また、来たよ」
突き抜けるような青空、天を仰いだ。ヒマワリには爽快な空が良く似合う。
夏が来る度に【布引風の高原】を訪れるようになり30回目となった。
ヒマワリは以前と変わらず咲き続けている。
風は暖かく、香しさを運んで来る。
けれど、三十年前に何かの本で読んだ
『空は青く澄み渡り、天は二人に微笑むような柔らかな光を降り注ぐ』
を体感しながら、心に刻んだ彼女の爽やかな笑顔は、今はもうない。
#かこに感謝し今を受け入れ未来を夢見て
そんな風の囁きを聴きながら、視線をひまわりに向ける。
「ちょっと、自分だけ先に行くって酷くなーい」
ヒマワリのような真ん丸な顔、真ん丸の体をした妻が追いついてきた。
真ん丸な笑顔を浮かべている。
笑顔に三十年前の爽やかさは無いけれど、ちょっと暑くるしいけれど、二人で歩み続けた幸せな時間が刻まれている。
ヒマワリへ語りかける。
「また来たよ、二人で」
三人、四人で来たいくつかの夏を経て、また二人で来た。
『空は青く澄み渡り、天は二人に微笑むような柔らかな光を降り注ぐ』
を体感しながら、真ん丸な笑顔を心に刻み、来年も来世も二人で来ることを心に誓った。
(本文ここまで)
#シロクマ文芸部
参加作品です。創作、フィクションですが【布引風の高原】は実在します。
サポート、kindleのロイヤリティは、地元のNPO法人「しんぐるぺあれんつふぉーらむ福島」さんに寄付しています。 また2023年3月からは、大阪のNPO法人「ハッピーマム」さんへのサポート費用としています。 皆さまからの善意は、子どもたちの未来に託します、感謝します。