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父の夢 #いい時間とお酒

 かなり多くの「父」に賛同していただけると思うのですが、父性を感じた時に
「いつか、この子と一緒にお酒を飲みたい」
という気持ちも湧き立つと考えています。

 私の場合、2人の子どもが小学校に入る前に離婚しましたので、「一緒にお酒」なんて我儘は、しっかりと封印していました。
「夫は辞めるが、父は辞めない」
と公言し、そこそこの養育費を振込み、月に数回の面会をしながら
(子どもたちが成長したら、父から離れるだろう。面会の回数が減るのも受け入れよう)
と、毎回自分に言い聞かせていました。

 予想どおり、中学生から高校生と成長していく中、面会の日程が合わない日が続きました。
 そして、上の娘は福島から遠く離れた京都の大学に進み、これまでのようには面会できない生活となりました。

 けど、まぁ、どういうことか、私は京都を訪問する機会を作るようになりました。
 3ケ月に1回くらいのペースで京都を訪問し、長女と、かけがえの無い時間を堪能しました。

 そんなある日、2女が
「私も、お姉ちゃんに会いたいなぁ」
と呟きました。
 お恥ずかしいことに、私は自分の気持ちと都合を優先し、2女の気持ちを蔑ろにしていたことに気づかされました。おそらくですが長女も2女と会いたいと願っていたでしょう。
 父母が別れた後、2人は支え合って生きてきたのに、会えない日々が続いていたのに、私は2人のために何もしていませんでした。

 不徳を恥じつつ、日程を合わせ2女と2人で京都に向かいました。
 長女と合流し、観光を重ね、3人で居酒屋に向かいました。
 長女のセレクトで「学生向けの居酒屋」でした。騒がしくて、安っぽくて、狭くて汚い店でした。

 3人で飲んだ、最初で(今のところ)最後の店となっています。

 長女も2女も大学を卒業し、仕事をしながら自立した生活をしています。
 私は、父としての役割を終えました。
 もう、京都に行くこともありません。

 けれど「父は辞めない」、一生君たちの父でいる。
 いつか3人で、お酒を飲む夢を見続けさせて欲しい。

 もしかしたら、冠婚葬祭の場になるかもしれないけれど、父は父として父だから、杯を傾けながら伝えたい。
「いつも、いつまでも、君たちを愛している。一緒に飲むことができて幸せです」

 そんな夢を胸に、父は生きています。


#いい時間とお酒

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