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ぼくがボクシングを始めたワケ〜毎日不良にボコられた話最終章〜

ここまでのあらすじ・・・

クローズZEROを観たことがきっかけで

不良漫画のヤンキーに憧れ、

精一杯〝ワルぶる〟たろちゃん。

しかし、出る杭は打たれるのが世の常。

そうして〝本物〟の不良の先輩たちに

呼び出されては、事あるごとに

こっぴどくボコられてきた。

しかもだいたい相手は複数人でやってくる。

憧れの不良漫画の登場人物のように

勇ましく雄々しい不良に

俺はなりたかった。

大勢群れてりゃ強いと思ってる

〝モブヤンキー〟どもなんて蹴散らすくらいに。

そうしてたろちゃんの

〝反逆のボクシング生活〟が始まった・・・。

さぁいよいよ最終章...!

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毎日強くなりたいと思っていた。

学校に行けばまた上級生の先輩達にいびられる。

心の底でゴウゴウと燃える「今に見てろよ精神」

暇さえあれば、ボクシング・K-1・プロレス

柔道・空手・ひいては相撲や剣道など

さまざまな武道をYouTubeで研究した。

あらゆる対人スポーツで地上最強はなにか、

日々妄想するのが楽しかった。

強くなるイメージは完璧だった。

ウェイトトレーニングの機材も買ってもらった。

毎日走り込んだ。

復讐心だけで俺は動いていた。

最初、ヤンキーになりたかったのは

格好良かったから、であった。

そして、〝不良はモテる〟という

安直な発想から。

しかし今、俺を動かしているのは

「負けっぱなしじゃ終われねぇ」という

リベンジの炎だった。

もうこの際、不良とかどうでもよかった。

〝雄〟として戦いに勝ちたかったのだろう。

事実、ひょろひょろだった腕は

そこそこ太くなり、

貧血虚弱体質の体力はグン!と上がった。

その時のおれは、

もう例え相手がピーター・アーツだろうが

ジェロム・レバンナだろうが

負ける気はしないと本気で思っていた。


卒業も差し迫った冬の寒い放課後、

またもや、先輩に呼び出された。

いつもは4、5人だったけど

今回はいつも俺を目の敵にしてきた

先輩1人だけだ。

こいつだ。こいつにギャフンと

言わせる為におれは独学で

練習してきたんだ!

この頃のテンションは上司に

土下座をさせようとする半沢直樹を

観ていただければ感情移入しやすいだろう。

卒業間近。これがラストチャンスか。

もうサンドバッグにはならねえ。

「んボコボコにしてやんよッ!!!!」

俺は心の中でずっと叫んでいた。

そして先輩の後ろをついていくと

いつもの隣の小学校の裏山だった。

これはタイマンだな。完全に。

前を歩く先輩が振り返る。

「なぁ、」

先輩が喋っている途中ですでに興奮状態の

俺の中で何かが切れた。

「うぉああああああ!!!!!!!」

有無を言わさず、一目散に飛びかかった。

いつもはビビってやり返すこともできず

ただただ殴られてきた。

もうそんなのおしまいだ!俺は変わるんだ!

この時は完全に興奮して我を忘れていた。

と、同時にあれだけ練習したボクシングの

基礎の全てもどこかに吹っ飛んでいった。

フットワークとかワンツーとかそんなんじゃない

ただありったけの思いを込めた

魂のグチャグチャ右ストレートを放つ!!

放った右腕はいとも簡単に

先輩の顔面横を通過するッー!!!

その瞬間!俺の腕ごと持ってかれ

先輩、渾身の背負い投げぇえええ!!!!!

地面に全身をビタン!と叩きつけられる俺!!!

『ンフンッ!』たまらず変な声が漏れるッ!!

そして先輩、駄目押しのワンツー!!!

KO!!!一本!!!勝負あり!!!!

カンカンカーン!!!

おれは敗けた。

死ぬほどあっさりと敗けた。

これはもう喧嘩というよりコントに近かった。

腰を強打した俺はしばらく

横になったまま身動きがとれなかった。

『燃えたよ。。。燃え尽きた。。。』

あしたのジョーは最後、全てを出し切って

コーナーで真っ白な灰になった。

たろちゃんは何も出さないまま

燃えるまもなく塵になった。

突然攻撃してきたいつもパシリの後輩に

面食らったのか、先輩も変な沈黙の後、

爆笑した。

「んだよお前!wwwこれ!返す!」

そう言うと先輩は俺が貸していた

クローズの最終巻を俺の横たわる地面に

ポイッと投げた。

「可愛いなお前w次やったらマジで殺すぞ」

そう言い捨てて先輩はどこかに消えていった。

完敗だった。フルボッコにするどころか

鮮やかすぎるカウンター。

不良ってやっぱ強ぇなあ。。。

独学で少しかじったボクシングで

天才の喧嘩スキルを持つ不良に

勝てるわけがない。

こうしてたろちゃんのリベンジマッチは

1R15秒で幕を閉じた。

おれは大の字のまま天を仰いだ。

動けなかった。

いや、動きたくなかった。

この空の風景を忘れんでおこうと。

夕方の薄暗い汚い水色。

その空をただボーッと見る。

そうしているうちに、

うざったいくらいに雨が降り出す。

「こーゆーときだけ映画みたいな演出すんなよ。」

余計にイライラした。

返されたクローズ最終巻には

〝不良界最高の男〟坊屋春道が描かれていた。

そしてここに、

〝不良界最底辺雑魚〟の俺がいた。

強くなりたい・・・。

もっと強くなりたい・・・!!

心の底から声が湧き出た。

帰り道、傘もささずずぶ濡れで帰った。

そうでもしないと家に帰ったら

何泣いてんのwって妹にイジられる。

そうして俺の最初で最後のタイマンは終わった。

その日から不良になりたいとか

モテたいとか、その辺はもうどっちでもよくて、

ただ、1人の男として

一人前に戦えるようになりたいと

強く願うようになった。

ボクシングをして強くなりたい。

そうして俺は、ボクシング部がある

という理由で自転車で40分の

高校に進学したのでした。

そこからぼくの甘酸っぱくてほろ苦いような

ボクシングに捧げた熱い青春が

始まるのでありますが、それはまた別のお話で。

〜終わりに〜

高校3年間はかなりハードで正直もう

ヤンキーぶるとかどうでも良いくらい

毎日ストイックに練習して、あれよあれよと

気がつけば超真面目な部長になりました。

悪いことはしない・喧嘩はしない

全て部活中心の3年間。今思うと

中学の頃思い描いた自分とはまた違った

自分になりましたが、それもまた青春でした。

もうとにかく減量がきつかったり、

今を時めく世界チャンピオンと

現役時代に対戦したり、

今となっては事務所の先輩の

南海キャンディーズのしずちゃんこと

山崎選手と合同合宿したりと。

まぁ人生はこう、点と点が緻密に

繋がっていくんだなぁと思うことばかりです。

無駄なことなんて何一つない。

きっかけはどうであれ、

このボクシングというスポーツは

僕の精神的支柱となっています。

あの頃の悔しさ・あの頃の練習に比べたら

こんなもん屁でもねえよ!と思えるくらい

毎日追い込んでいましたからね。

当時は相当キツかったこともありましたが

それをやってて、そしてやりきれて

本当に良かったです。

まぁそこらへんのお話の方が濃いので

それはまた別の機会に

書かせてもらうことにしましょう。

長々と読んでくださりありがとうございました☺️

たろちゃん組

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