番組の作り方&放送作家との向き合い方

同じテレビ局内ですらも演出家によって”完パケ”(放送で視聴者の方が見ている完成形)に至るまでの作業の進め方は、国が違うくらい違うので話を聞くと面白い。

我が局の大先輩・加地さんは、基本的に放送に至るまで自ら徹底的にVTRをチェックし、時には自分で直すため、「放送作家」にVTRをチェックしてもらったり、見せるということはしないと聞くが、逆に事細かくナレーションの一言一句まで作家さんにお願いする演出家もいる。

※ちなみに「あいつ今何してる?」でいうと…(「あざとくて何が悪いの?」もほぼ同じ)
▼ロケ台本チェック
→担当Dからあがったものを赤字でチェックしてDに戻してロケしてきてもらい、(自分がロケする場合はサブDをつけて台本作成してもらう)

▼ロケVTR作成
→スタジオでゲストに見せるサブ出しVTRは担当Dからあがった1回戦のオフラインの時点で、チェックなどは行わずに引き取り(よほど直しがある場合や、膨大なロケ素材を探ることが困難な場合は「こういう下りないですか?」「こういうONは無いですか?」とメモを書いて一回返す)、自分で全部直しきったもので編集に入ってもらい(テロップ原稿などは担当Dに任せてテロップ入りのVをスタジオに出す前に一回チェックして直し原稿を送る)スタジオ収録に出す。

▼スタジオ収録後
→サブ出しVTRとゲストのリアクションをがっちゃんこさせたスタジオブロックオフラインを担当Dからもらい、自分で直す。この直し済みのブロックを作家さんに一度投げる。

▼本編(放送用)編集
→作家さんから頂いた意見の中で「なるほど、これは確かにこの方が良さそう」と思ったアドバイスを取捨選択し、本編DにCM位置などを指示をまとめたメモを渡し、1回戦本編オフラインしてもらう。
→実際の放送尺の1〜2分オーバーの状態で自分で引き取り、最終的に放送尺にしていく作業の中で、細かい言い回しや、「このスタジオ(ロケ)のくだりはあった方が面白い」など取捨選択し、完成尺に。

といった感じなのだが…
自分は基本的に会議やPV会を設けて、同時に皆でチェックするみたいなスタイルは取らず(番組の立ち上げや全く新しい企画をやる時は意見が欲しくてたまに見せたりする)、担当Dがあげてきて自分がさらにそれを直したものをデータで送ってチェックしてもらうスタイルだ。

なぜそのスタイルかというと、皆で集まってもそのVTRに関係ない人達は時間の無駄だし、全体だと言いづらいこともあるだろうし、そもそも自分なりに正解は出ているから、白熱議論したいわけじゃなく客観的な意見が欲しいだけだからだ。

料理でいうと、最後の一味みたいなことを作家さんにお願いする。
で、その一味で「なるほどな」って思ったことは、そのまま反映するというより、自分なりに咀嚼して”自分味”にしてVTRに落とし込むというスタイルで、自分が総合演出になってからはずっとやっている。

で、その”一味”には厳密に言うとならないのだが、嬉しいのが「面白い」という”ただの感想”だ。

個人的に思う放送作家の大きな武器の一つに「局を超えて優れた演出家のVTR・演出の思想や構成を見ることができる」というものがある。
だから当然売れっ子作家になればなるほど、VTRやテレビそのものをチェックする際の視座が広い。

そういう人たちに「面白い」と肯定されることは、自分の演出観を肯定された気がしてマイナス要素は全くない。
「そんなの機嫌取りのために言ってるでしょ」って思う人がいるかもしれないが、そんなのはどうでもいい。

この客観的にチェックする立場の人間が”肯定する”という行為は、モノ作りにおいて重要な潤滑油だと個人的には思っている。なぜなら”否定(”しか”までは言わないが)メイン”の作家もいるからだ。

「これはつまらない」と一刀両断するのは簡単だ。
それよりも重要なのは、「これは、こうした方が面白いのでは?」と提示するのがディレクターや作家、というかモノ作りをする人間の基本マインドであると個人的には確信していて、これに乗っ取らない人とは、あまり仕事をしないようにしている。

この傲慢な宣言を見て、担当番組の作家さん達が次のチェックから「おもしろい!!!!」と書きまくってくることは無いと信じて書き殴ってみたが、逆にこれによって「面白い」って書きづらくなっている気もしてきたので、この辺にしておく。

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