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グノーシア最高だったので残った疑問について考察したい【ネタバレあり】

グノーシア非常に楽しませていただきました。個人的に疑問に思ったことを解消するために、考察していきたいと思います。

以下ネタバレを含みますので未プレイの方やプレイ中の方はご注意ください。

主人公に寄生する銀の鍵はどこから来たのか?最初に銀の鍵を使用したのは誰なのか?

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この疑問を解くために、まずはセツと主人公それぞれの時系列を整理していきます。

セツの時系列
1. デブリ衝突事故で瀕死に。主人公がラキオの所有していた銀の鍵を用いて、セツに寄生させることでセツのループ開始


2. ∞ループ∞(特記事項を集める)


3. 主人公が鍵を満たした状態の0日目にて、セツは医療ポッドの主人公を連れ扉へ入る(主人公が満たした鍵を抜く→主人公はループから解放)


4-①主人公の初日へ。記憶がない主人公に鍵を渡す

4-②主人公の初日へ。医療ポッドの主人公は新しいセーブデータの主人公のため、主人公の特記事項「別の次元から意識だけをつなげている」が解放されることでセツの鍵は満たされる。セツはループから解放され、真エンド

主人公の時系列
1. 医療ポッドから出て、記憶がない状態。セツから鍵を受け取る(セツの時系列4-①)


2. ∞ループ∞(特記事項を集める)


3. ループ中、ループ開始前のセツに遭遇、瀕死のセツにラキオの所有していた鍵を寄生させる(セツの時系列1)


4. 自分の鍵を満たし0日目へ、セツが医療ポッドに入ったもうひとりの自分と満たされた鍵を持って扉へ→普通エンド(セツの時系列3)


5. 新しいセーブデータでゲームを開始。セツの鍵で主人公の特記事項「別の次元から意識だけをつなげている」が解放され、セツの鍵は満たされる→真エンド(セツの時系列4-②)

セツの時系列は、主人公に鍵を渡すことで自分が事故から助けてもらうループにつながるという因果律があります。なので鍵を主人公に渡さなければならないのですが、「主人公は別次元から意識だけをつなげている存在」なので、4-②でセツが鍵を渡さなくても、主人公は鍵を受け取って共にループしたという事実に整合性が通るようになるということですね。セツは主人公同様に鍵を満たすために情報を集め、共にループしたことを無かったことにしない生き証人となり、ループを終えることになります。綺麗にまとまっていてセツのループは美しいです。

しかし主人公のループは謎が残ります。主人公の鍵がどこから来たものか描写がありません。主人公自身が満たした鍵を、セツが1日目の主人公に届け、それを繰り返しています。「鶏と卵どっちが先か」状態です。

実際にこの疑問に対する答えは作中では語られていないと思いますので、これは深読みの考察になりますが、可能性があるとすれば、主人公が最初に受け取る鍵は、別のプレイヤーが満たした鍵なのではないでしょうか。

ラキオいわく、

その銀の鍵の唯一の欲求は情報収集だ。ならば近隣の並行宇宙の情報を集め終えたら-食えるだけ食って満腹になったら?当然より良い餌場、より良い宿主を求めて移動しようとする。こことは異なる宇宙への扉が開くのさ

普通エンドにて、セツと一緒に扉に入った医療ポッド内の主人公が、ゲームプレイ初日の自分になるとしたら、銀の鍵は全く同じ情報を永遠に食べ続けることになってしまいます。唯一の欲求が情報収集の生命体が同じ情報を食べ続けるのは少し違和感があります。これ前にも食べたが?となるはずです。

グノーシア制作陣へのインタビュー記事によると、プログラム担当のしごと氏いわく、

「特定のキャラクターのシナリオを神が動かす」という形にはしたくなかったんです。「誰かがある運命に絡め取られる」というイベントの神を作るつもりでした。

と語られています。上記抜粋は「そのゲームを作った人間ですら予想外のことが起こるようなゲームを創ろうとしていた」と言う意味だと思います(しごと氏の発言は難解なので超訳です。) 結果的にそういう形にはならなかったということですが、そういう形になっていた場合、プレイヤーによってプレイ内容は十人十色になるので、銀の鍵の腹を満たし続けることができるのではないでしょうか。実際にその形にはできなかったことが語られていますが、ラキオの言う「こことは異なる宇宙への扉が開くのさ」というのは別のプレイヤーが作る新しいセーブデータを指していると考えると、自分の中ではしっくり来るものがありますがどうでしょう?主人公が最初に選ぶ色や性別、人狼中の選択によってプレイ内容が異なってくると言うこともあるので、可能性はあると思います。


グノーシア化したSQとククルシカが対面したとき宇宙はバグって消滅するのか?という疑問

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主人公が二人存在した時バグが生じてしまいましたが、同一存在であるククルシカとマナンが同時に存在していたらこれもバグになるんじゃないの?とプレイ後に疑問が生じました。

考えた結果、私はククルシカとグノーシア化したSQ(マナン)は同時に存在しえると考えました。以下理由です。

マナンはSQの体からククルシカの体に人格を転移していき、銀の鍵で開けた次元の扉で別の宇宙(過去?)に飛んだだけなので、ゲーム世界の理屈の中に収まっている存在であると言えると思います。主人公とは別の理由で同一人物が同時に存在している状態となります。バグの発生原因は、同じ人物が同時に存在するというよりは、プレイヤーというゲーム世界には本来存在し得ないメタ存在と、もとから存在している別次元から意識をつなげていない状態の全く姿形が同じ主人公が同時存在していることなので、プレイヤーが宇宙船内にしか意識を飛ばせない以上、宇宙船内でしかバグは発生しないと言えるはずです。
このゲームとは関係なく、一般的に時間移動した場合に自分自身や他者に影響を及ぼすことはタイムパラドックスを引き起こしてしまうので良くないと言われていますが、そもそもグノーシアの世界はプレイヤーが何回もループするほどいくつもの世界線が存在しているため、最初からいろいろな世界線が存在しているのかもしれません。もしくはマナンが扉を通って過去に行ったからこそ、いくつもの世界線が生まれてしまったということも考えられます。

システム上「ククルシカとグノーシア化したSQは同時に存在しないようになっている」という可能性も考えましたが、プレイしているときにこの配役があったのかどうか?覚えていません。ググっても特にこれを検証している人はいなかったので、知っている人いたら教えていただければ幸いです。


真エンドにて、次元の扉に入ったマナン(ククルシカ)はどこに行った?

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マナンは次元の扉を通り、主人公やセツのようにループしているのでしょうか?セツがマナンに銀の鍵を起動させる方法を教える描写はなかったように思います。銀の鍵は次元の扉を開き、そしてマナンが鍵を抜くことで宿主であるセツから離れた状態になった。銀の鍵は「疑うな・・・」の文言を唱えて人に寄生させることで初めて活性化するため、次元の扉から鍵を抜いた瞬間に不活性状態になったと思われます。永遠の命を得られるという殺し文句で別宇宙への島流しを承諾したマナンですが、機械人形に人格を移せた時点で不死は達成しているとも言えます。あの状況では承諾するしか選択肢はないのですが。。場面描写がないだけで発動方法を聞いている可能性は考えられます。

SQの体に人格を移植することに成功した世界線と、失敗した世界線があることから、人格を移植すること事態が世界線を分岐させているという可能性があります。ごっそりマナンの人格が削られたククルシカはその後ジナと仲良くなるようなかわいらしいククルシカになり、人格が削られず自己同一性が失われなかったククルシカは再びレムナンを襲うようなククルシカになっているのでしょう。

いずれの場合にもまずマナンは次元の扉を通過し、1000年前の地球、もしくは数百年前のどこかに飛ばされ、ククルシカとしてまた宇宙船に乗ることになるのでしょうが。それまでの過程が不明です。ジョナスが1000年前に地球で出会って一目惚れしたアーニャという少女がマナンだったのでしょうか?それともたまたま似ていただけなのでしょうか?

また、マナンは一人で別次元に飛んだのに、最終的にはもう一体の機械人形と2台組になり、トレーダーからジョナスに譲渡されるという運命に帰結するということになるのが、話の飛躍を感じます。ジョナスの手に渡らない世界線もあるのでしょうか?過去への時間移動は現実には不可能と言われているだけあって、実際にどうなるかわからないので推測の域を出ませんね。


グノーシス主義

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私はこのゲームをプレイして色々調べるまで知りませんでしたが、そもそも「グノーシス主義」というこのゲームの元ネタみたいなものがあるようです。1世紀に地中海あたりで生まれた思想で、シンボルマークは丸の中に十字を描く形で、ゲームのタイトルロゴにもあるし、銀の鍵のデザインにも採用されていますね。


グノーシス主義の中でも反宇宙的二元論という世界観がグノーシアと関連が深いのかなと思いました。

反宇宙的二言論とは簡単に言うと、

この世は無情だ、こんな世は悪の宇宙と言ってもよい。既存の宗教の神も悪であり、偽善者である。この世とは善の宇宙のニセモノである。すなわち、善の宇宙とはこの世の反対である。この世を構成するものは、物理的実体(物質や肉体なので、その反対であるイデア、霊、魂といったものが本物であり、善の宇宙である。

という感じの考え方です。

思えば、作中この考えは色々散りばめられていて、例えば、SQがセツと主人公の仲を追求してきた場面で、セツが追求を逃れるために主人公と恋仲であることを肯定し、「魂で通じ合っているから性別は関係ない」というようなことを言っていたと思います。セツの発言は真意では無いですが、まさに肉体の否定と魂の肯定です。これは反宇宙的二元論をもとから知っている人からしたらホクソ笑むところなのでしょう。わたしは普通にセツがかわいくてニヤニヤしてしまいましたが。

他にもグノースの正体などで、グノーシス主義は深く関わっているのだと思います。興味深いのでグノーシス主義とゲームの関連について、時間があるときにまた別途、記事を書ければと思います。



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