CPEにおける社内ITの視点
はじめに
こちらエントリーは「モダン情シス Advent Calendar 2018」の5日目です。
上記のカレンダーからリンクされた方は初めまして。
リクルートマーケティングパートナーズという会社で社内ITの整備を担当しております吉岡と言います。
こちらの記事では、CPE(Corporate Productivity Engineering)における社内ITと情シスにおける社内ITの視点の違いについてご紹介できればと思っています。
情シスとの違い
業務について言うと、「ITツールの契約を会社横断で行ない、社員に環境提供し管理者としてアカウント発行管理を行う」という点でほぼ同じと言えます。ただ、その運用ポリシーが大きく異なると思っています。
情シス部門というのはどちらかというと社内のセキュリティ部門と統合されているため、セキュリティ観点が強く、社員にITツールを提供するものの、色々なルールを設定し全てを管理しようとします。
一方でCPEは、プロダクト開発の生産性を高めるために社内IT環境を提供し、開発効率をあげることがミッションであるため、上記の部門とは明確に考え方が異なります。
生産性を下げるルールは極力撤廃しますし(例えばSSHがつかえないとか)、現場主義を取ることが多く全部を管理するという観点はありません。
生産性を高めるために
私が大切だと思っている考え方は以下の5つです。
・申請処理は迅速にすること
・プロジェクト内の管理はプロジェクト管理者に全て委任すること
・運用ルールは直接レクチャーすること
・現場のニーズをヒアリングすること
・利用訴求は継続的に実施すること
一つずつどう言った考え方なのか解説していきます。
迅速な申請処理とは?
1つ目ですが、オンボーディング(新入社員を早期に受け入るプロセス)という考え方にそったものです。
入社してからなかなかアカウントが発行されないとその分だけアイドルする無駄な時間が発生してしまいます。それを回避するために以下のようなことをしています。
・申請ツールごとに申請窓口が違うと迷ってしまうので、窓口を一本化。
・申請エクセルは撤廃し、フォームにすることで誤った申請を減らす。
・申請されたら通知がSlackに転送されすぐ気づけるように。
・各グループのツール予算をCPEの予算にまとめ、CPEマネージャーの承認でアカウント発行できるようにワークフローを簡略化。
などと言った取り組みをしてきました。
これらを実現するために、Gsuite+GASやOffice365+Flowで申請フォームを構築したりしました。
申請の迅速化についてはまだまだ課題があり、解決するための様々なワークフローやソリューションを検討しています。
申請一つとってもベクトルの方向が情シスとは異なると思っています。
プロジェクト管理とアカウント管理を分ける権限設計
それぞれのツールを導入する際に、ユーザー権限をどう設計するのかは、論点だと思います。
私はツール管理者はアカウントの管理に集中し、プロジェクト管理者に権限委譲することでプロジェクト側の管理を自律的に行えるような権限設計を心がけています。その方が運用が早く回るからです。
細かなプロジェクトの変更運用まで管理者側で行うと、管理側の負荷が増大してしまい、その分申請対応が遅れ、生産性に影響してしまいます。
ただ、海外のツールはプロジェクト管理とアカウント管理の権限が分離できないツールが多く、運用に苦労しています。
その場合は、期間限定で管理者権限を払い出すことでなんとか運用しています。
運用ルールは直接レクチャー
CPEの考え方は新しい概念ということもあり、様々な情報発信をすべきだと思っています。
以前在籍していた会社では、新入社員のオンボーディングの中で、社内ITの考え方を共有する時間をとらせていただいていました。参加者からは以前在籍していた会社よりも自由な働き方ができる、という感想が多かったように思います。
また上記の活動は、CPEで新規ツールの導入を支援するということを明確に伝え、シャドーIT(管理外未契約のASPをフリープランで利用すること)の利用を防ぐという意図もありました。
ASPの無料版をプロジェクトなどで使用してしまうと、情報漏洩のリスクが高まりますし、事故が起きてもサポートなど受けることはできません。
現場のニーズをヒアリング
ITツールというのは常に動きがある世界です。とても一人で情報を把握できるものではありません。
ですので現場のメンバーへのヒアリングは欠かさず行っています。
前社ではグループごとにツール担当者を置いていただいて、そのメンバーと定期的に情報交換を行うということをしていました。
そうすることで有用なツールをいち早く察知し、導入することで生産性を高める環境づくりができます。CPEはボトムアップのアプローチが基本だと私は考えています。(これは私の意見です)
ここでも情シスの考え方とは異なると気づいていただけるでしょうか?一律のツールを導入し、他のツールを認めないようなルールを敷くと、メンバーの不満が溜まりやすくなりますし、ITツールの進化についていけない社内IT環境が出来上がります。
管理効率性を重要視するあまり、生産性を下げてしまうのはCPEの見地からするとありえない考え方です。
ツール利用を訴求する
せっかくITツールを契約してアカウントを発行しても全然使われない、というケースはよくある話だと思っています。
CPEは前述した通りボトムアップアプローチが基本ですので、トップダウンでツールを導入するよりも自発的にツール利用するメンバーが多いと感じています。
ただやはりそこで生じてしまうのが、使う人と使わない人の差です。
これを解消すべく色々な取り組みをしてきました。
・ツールの利用ログからグループごとに利用度を調査し、状況をマネージャーに共有し課題感をもってもらう。
・利用が進まないグループについてツール担当者から課題をヒアリング。
・サービスベンダーの方にお越しいただき、ツールの使い方勉強会を実施。
・Slackにサポートチャンネルの設置
などなど。しかし最終的には個々のメンバーのやる気次第というのが現状です。
今までこの業務を行ってきて感じているのが、グループマネージャーがIT導入に前向きであればあるほど、そのグループのITツール利用度が高いということです。
最近ではマネジメント層へのIT啓蒙もセットで行うべきと思っています。
終わりに
以上CPE視点での社内ITについてご紹介してきました。
しかしまだここには書ききれないほど色々な話題がありますので、おいおい記事をまとめようと思います。
例えば、CPE視点でのセキュリティの考え方ってどうなのか?とか。ITツールを集約すべきなのか分散すべきなのか?とか。いろんな論点があります。
また、もしこう言ったことでお困りな社内IT担当者の方いらっしゃいましたら、お声がけいただければと思います。
今後は副業としてそう言った課題に対して、今まで培ってきた知見を共有していきたいと思っております。
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