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娘が「学校に行きたくない」と言い出した。

「学校に行きたくない」

ある日、学校から帰った娘が突然言いだしました。

「おっと、ついに来たか。うーん、厄介じゃなきゃいいけど」

うちの娘は、我が娘ながらすくすくと素晴らしい子に育っていて、親としてはほとんど苦労をさせられたことがないんだけど、学校時代は数々の問題を起こしてきた僕と妻の娘。何事もなく平穏無事に学校生活が終わると考える方が不自然。

いつかはとんでもないことをしでかして親を驚かせる日が来るかも知れない、という覚悟は僕にも妻にもできている。

その覚悟からしたら「学校に行きたくない」というのは、まだ序の口だという気もするけど、イジメだとか色々な可能性を考えると、決してイージーに受け流していい問題でもない。


そこでヒアリングをしてみると、

「学校で"水遊び"があるから、明日と明後日は行きたくない」

ということだった。


なるほど。

でも実はこれはちょっと不可解な回答。娘はまだ小学校1年生で、授業の一環で3時間ほど校庭で水鉄砲などを使って遊ぶ授業があるということなのですが、娘はこの授業があることを聞いて大喜びをしていたんです。


でもこの年頃の子ども、好き嫌いが一夜で変わることも珍しくありません。仲のいい子がイヤだと言い出したのがきっかけかも知れませんし、あるいはあまり想像したくないですが、背景にイジメがあるのかも知れません。

とにかく原因が知りたかったので、できるだけ本人にプレッシャーを与えないように心がけながらヒアリングしてみたのですが、本人は妻の膝に顔を埋めるだけで、ほとんど答えてくれません。

仕方がないので、当日になっても水遊びをしたくなかったら先生に「具合が悪いから見学をさせてくれ」と頼んであげるから、と娘に約束すると、娘は渋々首を縦に振りました。

ところがその日都合のいいことに、たまたま娘の担任に電話をする別件があったのです。そこで娘が水遊びしたくないから、翌日と翌々日に学校に行きたくないと言っている旨を相談しました。

ありがたいことに、担任の先生は本当によく子どもたちのことを見てくれている頼りになる先生なのですが、その先生も「おかしいなぁ」と不思議がっています。

そこで僕が一つ疑問に思っていることを質問しました。それは水遊びは土曜日の一日だけのものだと思っていたけど、金曜日も水遊びをするのか、というものでした。

すると先生は

「水遊びは土曜日だけです。ただ明日(金曜日)、どんな水鉄砲を使うか、持ってきてみようか、と伝えてあるだけです」

と答えたのです。


そこでもしや、と思った僕は、先生に御礼を告げると電話を切って、いそいそと台所に向かいました。

冷蔵庫を開けるとマヨネーズのボトルを取り出し、中身を空き瓶に移し中身をきれいに洗いました。

次に風呂場に行き、風呂場掃除グッズの洗剤を入れるスプレーボトルの中から一番強力そうなもの(スプレーだけじゃなく、水が直線状にも出るタイプ)を取り出し、中身を空けて洗いました。

2つのボトルに水を入れると、居間でフテ気味に臥せっている娘のところに行き、顔を上げさせるといきなり水鉄砲を食らわせていいました。

「もし急に水遊びがしたくなったら、一応こういうものも用意しておいたから、使っていいよ」


すると娘の表情が少しずつ晴れていくのが感じられました。


実は、娘は水遊びがあると学校で聞いて帰った時、

「ねえ、うちにマヨネーズかケチャップあるでしょ?どれだけ残ってる?」

と僕に尋ねていました。学校で、水鉄砲がない場合はマヨネーズなどの空きボトルを水鉄砲にできると聞いて帰ってきたのです。

しかし間の悪いことに、両方とも新しいのを空けたばかりでした。

ボトル水鉄砲を持っていけないと知った娘はがっかりしていたのですが、こればかりは仕方がありません。

僕としては100円ショップにいけば水鉄砲くらいあるだろうから、そこで買ってあげればいい程度にたかをくくっていました。

しかし実際に100円ショップに行ってみると

「さすがにこの季節はもう水鉄砲はありませんよ」というツレナイ対応。

「この季節って、昨日は34度あったじゃないか!」というツッコミを入れなくなるのを我慢しつつ、前に住んでいた茅ヶ崎の100円ショップには一年中水鉄砲はあったのに(写真の水鉄砲は茅ヶ崎時代に100円ショップで買ったもの)と臍を噛みながら仕方なく家に帰りました。


とはいえ「まあ、なけりゃないで学校で何か貸してくれるだろ」くらいのいい加減な気持ちでいました。ないんだからしょうがないよね、と。


でも娘にとっては、自分の「水鉄砲」を持っていくかいかないかは一大事だったんですよね。

そんな気持ち、ちっともわかってあげられなかった。

しかも娘は「私だけ水鉄砲持っていかないのはイヤだ」といってむずがるタイプではなく、一人だけ持っていかないことになったらイヤでイヤで仕方がないのに、それをきちんと親に言えなかったんですよね。

こういう些細なことで、子どもは傷ついちゃうんだなぁ、って大反省。

その後、何事もなく夕飯を食べ、寝る前に娘が僕のところにやってきて言いました。

「パパ、わたしやっぱり水遊びすることにする」

そう、わかった。と平静を装いながら告げたものの、健気な娘の姿に当然萌え萌えです。

++

結局、結局土曜日は雨のため「水遊び」は順延。

今日がその代替日。

まもなく娘が帰ってくる。

どんな顔をして戻ってくるのか、今から楽しみで仕方がない。



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