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未来の建設業を考える:建設論評「建設会社の役割」

企業価値や企業のコアビジネスも変わる

 新年度を迎えるにあたり、多くの企業で新しい経営者が誕生している。大手ゼネコンでも社長交代が予定されている。新しい社長には革新的なアイデアや有能な人材の活用で、会社、業界の発展につながるよう、けん引役として大きな役割を担ってほしいと願う。
 社会環境の変化により、企業価値や企業のコアビジネスも変わる。それが昔は100年単位で起こったが、現在のようなICT革命や高齢化社会が進行する中で、企業のありようもより短期で大きく変化するような時代へと転換している。

典型的な事例が「富士フイルム」

 典型的な事例が「富士フイルム」であろう。富士フイルムと米コダックは、ご存知のように、かつては両社とも世界的な写真用品メーカーであった。特にコダックは米国市場の90%以上を占める独占的な写真フィルムメーカーであった。
 ところが、デジタルカメラの普及で、00年にピークに達したフイルム市場はピークアウトし、その後10年で1/10に縮小した。12年にコダックは破産。 
 この急速な環境変化を端的に指摘したのが、当時の古森社長の言葉だ。「トヨタ自動車は車がなくなったらどうするのか、鉄が売れなくなった鉄鋼会社はどうするのか。我々はそれくらいの大きな危機に直面している。」
 危機バネを活かし、その後、ヘルスケア、高機能材料、ドキュメンテーションの3分野をコア事業とする企業へと大きく変貌した。写真フイルム事業がピークだった00年度は、フイルム関連事業が売上高の54%を占めていたが13年度は15%にも減少している。
 ただし、新たな領域は新規に獲得してきたものではない。あくまで写真技術をベースとしてそれまでに培った人材、技術、知識を再編し、最適化したもの。ベースがあったからこそ、既存市場では生み出せない新たな商品を提供することができたのだ。

社会環境が大きく変化する現代

 それでは社会環境が大きく変化する現代において、建設会社はどう対応すれば良いのだろうか。
 重要なことは、建設事業は衣食住の「住まい」を提供するインフラとして今後とも必要とされていることだ。
 そのためには、建設会社も永続的に存在する企業として、次の百年を見据えた経営がなされるべきだ。

社会環境の変化に応じた建設業の改革

 一時的な利益を超えて建設業全体としての繁栄に責任を持つことが求められる。大手ゼネコンであれば、下請けも含めればグループ企業は50万人を超える。元請下請けの関係から、同等のパートナーとしての位置づけが重要。
 トヨタのように現場一筋の職人を役員へ登用するなども一考であろう。一方で、富士フイルムのように社会環境に応じた新規ビジネスを生み出すことも求められる。
 ゼネコンの持つ工程管理や品質管理などの高い知識は新たなフィービジネスを生み出す可能性を感じる。
 また、他産業との連携で、ものづくりに加え継続的な生活サービスを提供することもあるだろう。
 いずれにしても、新たな経営者が、社会環境の変化に応じた建設業の改革を継続的に実施することに期待したい。

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