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未来の建設業を考える:建設論評「環境対策の本質」(2022年2月1日)

地球温暖化の本当の原因

 二酸化炭素排出量増加の要因が、石油や石炭の鉱物資源の使い過ぎにあり、二酸化炭素を多く排出する火力発電を止めれば地球温暖化の大きな問題は解決する、という一部の意見は大きな間違いだ。
 ここ数十年で二酸化炭素排出量が急激に増加した要因は、工業化でも、経済の拡大でもなく、人口の急激な増加に起因するからだ。
 国連の報告書(2019年)によれば、世界人口は、1900年に17億人、2000年に60億人を突破し、2019年の77億人から2030年の85億人(2019年比10%増)にもなり、2050年には97億人(同26%)、2100年には109億人(同42%)まで増加することが予測されている。わずか50年で人口が1.5倍にもなる計算だ。
 このまま、地球温暖化を放置すれば、地球は暑くなり、海面は上昇し、多くの生物が死滅する。広大な農地も砂漠化し、世界人口をまかなうための農産物が収穫できなくなる。まさに「地球温暖化」は、人類生存そのものの問題だからだ。

人類が1年間に排出する二酸化炭素量

 学術誌「エレメンツ」(2019年)の世界の科学者500人以上が参加した「ディープ・カーボン・オブザバトリー」の研究によれば、「人類が1年間に排出する二酸化炭素量は2018年だけで37G(ギガ)tを超え、世界全体の火山の二酸化炭素排出量の100倍にも達している」そうだ。過去100年は人間の二酸化炭素排出量が年10G(ギガ)tだったのが、急激に増加しているとの研究結果もある。
 環境省の「温室効果ガス排出量(確定値)」に関する資料では、日本の一人当たり二酸化炭素排出量は9tから10t。エネルギー経済統計(2018年)によれば、米国は15t、ロシアは11t、中国でも7tもある。二酸化炭素排出量の1tとは、杉の木70本が1年間に吸収する二酸化炭素量と同じ。つまり、日本人は700本の杉の木を1年間で伐採していることになる。
 大気中の二酸化炭素濃度も、2019年にはハワイで415ppmを記録するなど、人類史上最高だ。1850年ごろの産業革命以前は280ppmであったので、5割増しに増加している。

地下水でも異常

 また、地下水でも異常がおきつつある。カリフォルニア州の農業の中心地であるセントラルバレー、トゥーレアリ盆地では、早くも2030年代には利用可能な地下水がなくなることがわかっている。インドの上ガンジス盆地やスペイン南部、イタリアでは、2040年から2060年の間に地下水が底をつく、と想定されている。現在、世界の食料生産の40%は地下水を使った灌漑に頼っているので、食糧問題が喫緊にも生じる。
 地球温暖化対策で、「青い地球を守れ」、とはよく言われることだが、それは地球を守ることではなく、本来は、「人類生存」そのものを守ることなのだ。
 それでも、すぐに人(人口)を減らすことはできない。それだから、全産業、全人類で再生可能エネルギーへの転換が、いまこそ必要不可欠だ。建設産業としても、早急に、国と共に環境技術の確立を積極的に押し進めていきたいものだ。将来の「人類生存」のためにも。

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