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未来の建設業を考える:「ソサエティ5.0が求めるBIM」

グーグルEIE(Environmental Insights Explorer)

 この冬は暖冬で、スキー場に雪が降らないとか、地球温暖化の影響を指摘する人も多い。実際、国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の予測によれば、CO2削減などの温暖化対策を行わない場合、21世紀末までに4.8度の温度上昇となり、東京でも真冬なのに真夏日になる日が出るとの予想がある。こうならないために、グーグルでは、各自治体のCO2排出量を可視化するようなホームページEIE(Environmental Insights Explorer)を公開し、CO2削減につなげようとしている。そこでは、独自のアルゴリズムにより排出量を算出しているが、ベースとなっているのは地図データであり、建物データだ。これらがデジタル化されたことにより、環境負荷の推定が可能になっている。

都市全体のデジタル化

 一方で、急速なIT技術、AI(人工知能)関連研究の発達は、モノだけでなく、都市全体をデジタル化は急速な勢いで進んでいる。
 ここに来てBIMライブラリーコンソーシアムも発足し、本格的に始まったが、AIやITの急速な発展、普及により、5G、自動運転、クラウドなど、生活のあらゆる部分がデジタル化される社会においては、これまでの建設がらみの活動領域の発展を超えて、むしろより早く詳細な建物データへの要求が建物の発注者など、需要者側から相当強くなることが予想される。

建物のデジタルデータが求められる理由

 その主な理由は、次のような観点から、建物のデジタルデータが社会にとって必須の情報になりつつある背景を理解しておくことだ。
①ソサエティ5.0(人工知能、ロボット、デジタル革新等)社会においては、不動産取引、設備機器の制御、不動産管理などを円滑かつ的確に実施するためには、建物のあらゆるデータがデジタル化されている必要がある。
②スマートシティ開発のためには、その主要な構成要素である道路や電線などの「インフラ」に加え、建物の「デジタルデータ」が求められる。
③省エネルギーの推進、ゼロエミッションの実現など環境対策推進のためには、シミュレーション可能な建物の「デジタルデータ」が必要である。
 これまでBIMについては、設計事務所、ゼネコンといった建物供給サイドの効率化、業務改革の観点から、多くの検討がなされてきた。

IoT(モノでつながるインターネット)センサーで分析する都市

 国土交通省が提案するスマートシティでは、都市問題を「モビリティ」、「エネルギー」、「パブリックスペース」、「ウェルネス」といった観点で解決することが期待されている。そのためには、高速大容量の5G時代では、多くのIoT(モノでつながるインターネット)センサーなどから生じるビッグデータを瞬時に捕捉し、分析することで、最適な交通計画、健康医療、CO2削減などに役立てる都市が構築される。そのためには、デジタルデータが必要だ。
 不動産業から見れば、不動産の売買、交換、賃貸等の不動産取引の分野、不動産の維持管理、運営及び、不動産仲介などについて、デジタル化が急速に進みつつある。不動産取引で、VR(バーチャル・リアリティ)やAR(拡張現実)の機器を利用して内見せずに、ブロックチェーン取引で、PCやスマホで不動産取引、賃貸契約ができるところまで来ている。また、維持管理段階においても、ビルのあらゆるところにセンサーを取り付け連動させ、Wi-Fiによる測位サービスと連動させるなど、これまでにない新たなサービスを提供できるようになってきている。

デジタルデータとしての「BIM」活用

 そのためには、ソサエティ5.0時代の求めに応じられる建物のデジタルデータ「BIM」は必須だ。現在は建設側。供給サイドからの議論だけが進むが、これからは需要サイドを見据えたうえで、BIM構築の意義を考える時期に来ているのではないか。

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