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未来の建設業を考える:建設論評「世界規模のMICE施設を」

エンターテイメント市場規模の差

 日本のエンターテイメント業界が騒がしい。問題の本質はさておき、日本全体のエンターテイメント市場規模がどれくらいか、読者諸兄はご存知だろうか。その総額は1,700億円弱(2007年)。これに対し、米国のラスベガスだけで1,200億円、ニューヨークのブロードウェイだけでも2,000億円、米国全体では7,000億円強と、日米のエンターテイメント市場規模の差はかなり大きい。

MICE(国際的な会議・展示会など)施設規模の差

 同じことは、MICE(国際的な会議・展示会など(Meeting(企業などの会議), Incentive travel(企業などの行う報奨・研修旅行), Convention(国際機関・学会などが開催する総会、学術集会など), Exhibition(展示会・見本市)))と呼ばれる大規模会議施設を有した施設における国際会議、国際展示の世界でも、日米の差は大きい。
 2018年の国際会議の統計(ICCA=国際会議協会)では、開催件数で日本は7位、しかし1位の米国の開催件数947件の約半分、492件でしかない。また、そのほとんどの会議において出席者の9割は日本人、つまり海外と言ってもわずか1割の出席に留まるような会議が多いそうだ。
 MICE施設そのものでも、日本のMICE施設は、世界との差が大きい。2018年現在、稼働面積で比較した順位は、日本一のMICE施設と呼ばれる「東京ビッグサイト」が世界で78位、幕張メッセが112位、インテックス大阪が115位と、かなり低い。
 世界一はドイツ・ハノーバー国際見本市会場で稼働面積46万平方㍍、2位は上海の40万平方㍍、3位のフランクフルトでも37万平方㍍平。毎年春開催されるハノーバーメッセには、世界から6000社、20万人が参加している。世界で10万平方㍍超の展示場は61施設あり、毎年、増加し続けている。
 世界のMICE施設は、米国、中国、ドイツ、イタリア、フランスの上位5カ国で、世界の6割を占める。

MICE施設にIRを加える=主はMICE!

 MICEの有力な受け皿となるIR(統合型リゾート=Integrated Resort)における日本の候補地は、2018年現在、北海道(苫小牧、留寿郡)、東京(台場)、千葉(幕張)、神奈川(横浜)、愛知(名古屋・常滑)、大阪(夢洲)、長崎(ハウステンボス)、和歌山(マリーナシティ)ほかであるが、IRの話題の中心はもっぱら「カジノ」だ。しかしそれ以上に、世界中の人を呼び込むMICE施設、夜も楽しめる世界に誇れる良質なエンターテイメント施設を整備できるかがIRの成功の鍵だ。IRを通じて、また、日本のエンタメ市場の拡大も実現できる。
 これからのIRでは、カジノや飲食、エンターテイメントに加えて、グローバルスタンダードとなる10万平方㍍を超える展示施設を持つようなMICE施設が必要であり、それができて初めて国際的なMICE施設を有する国として、世界と同じスタートラインに立つことができる。候補地が決まるのは22年と言われているが、ぜひともIR候補地がより大きなビジネスを生み出す場所として、規模とデザインで世界が注目し、世界に誇れる施設整備がなされることを期待したい。

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