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未来の建設業を考える:「リスクマネジメント再考」

大きなリスク

 この世に大きなリスクが存在するということは、受験や就職、そして結婚(?)と多くの人が経験していることであろう。一方、曰本人は欧米人に比べてリスクをとりたがらない、と良く言われる。

農耕民族の日本人は、狩猟民族の欧米人に比べて、十分なリスクをとる環境に

 しかし、実はそうではないらしい。金融コンサルタントの澁澤健氏は、「元来、農耕民族の日本人は、狩猟民族の欧米人に比べて、十分なリスクをとる環境にあった。春に種をまき、台風、干ばつ、害虫、病気などのさまざまなリスクを抱えながら、それが実る秋までじっと我慢し、1年のすべての活動を費やしてしまう。その意味でもともと日本人は、暗黙のうちにリスクを多方面で受容しており、リスクをリスクとして認識することが、今後の日本の発展に必要である。」と指摘している。
 そう言われると、欧米のリスクマネジメント教科書において、リスクを明確化し、リスクを分析し、リスクヘの対応策を講じるということが必須であり、予測値としてリスクを的確に捉えることがリスクマネジメントの要点であるということが良く理解できる。

リスクを予測不可能なものと捉える日本

 これに対し、曰本では欧米で言うところのリスクと異なり、あいまいとか、不透明といったことも含めて、リスクを予測不可能なコントロールできない、避けるべき概念として整理してきたのではなかろうか。
 もう一つ彼がおもしろい指摘をしている。日本人はリスクを「危険」、「害」といった単語に直結させてイメージするのに対し、欧米人は、リスクを「機」ととらえているのだそうだ。リスクを「危機」ととらえるか。
 「機会」ととらえるかは、本人の考え方次第だ。

建設産業ではどうだろうか。

 建設産業ではどうだろうか。
 製造業のように、生産工程におけるあらゆるリスクを検討したうえで、設計を終了し、生産段階ではその効率を上昇させることが目的となる産業と異なり、建設産業も農耕同様、その場限りの一品生産に基づくものである。
 そのため、調査、分析をしてもしかたがないものとして、不透明、あいまいなものをリスクとしてとらえ、あいまいな企画に基づき設計し、設計段階であいまいなものを工事段階で処理し、結果として建設物が完成するような状況ではなかろうか。
 さらに、従来の建設プロジェクト実施者もあいまいさをリスクとして発注者へ提示し、こんなに未知なことが多いのだから、「任せなさい」的な発想ではなかっただろうか。
 しかし、従来のように、このあいまいさを利益に出来る時代はよかったが、これからも同じとはいかない。
 そのためには、リスクとあいまいさの混同を避け、逆にリスクを明確化するリスクマネジメントの導入が求められる。さらに、リスクを把握するためには、事業目的を明確化しなければならない。

「ブリーフィング」・「プログラミング」

 PMr(プロジェクト・マネジャー)やCMr(コンストラクション・マネジャー)のような第三者による説明責任を果たすような方式を導入したり、発注者要求を明確化するための「ブリーフィング」や「プログラミング」といった手法を導入したりする動きが出てきている。建設産業における、これまでのあいまいなプロジェクト運営を改正しようとしていることに大きな意義があると思う。

リスクの「機」を「機会」と捉えるためにも

 建設産業においても、よりリスクをきちんと捉える発注者の創出と的確なリスクマネジメントを実施できる建設産業の創造に期待したい。
 リスクの「機」を「機会」と捉えるためにも。

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