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未来の建設業を考える:「新たな建設産業のビジネスモデル」(2013年7月)

日本の将来のための投資とは

 今、地方公共団体や大学は一種の建設バブルが起きていることをご存知だろうか?
 普段では通りそうにもないプロジェクトにまで補助金がついており、これらに務める技術者は多忙を極めているとのこと。ここ数年、施設の集約や統廃合、維持保全や長期修繕へ目を向けていた優良な技術者も一斉に新築工事へ駆り出されるような状況だとも聞く。
 しかしこのような状況にある今だからこそ、地域や日本の将来のためになる投資を本格的に実施すべきではないか。

21 世紀型の社会資本整備に向けて

 このような環境の中で、先の経済財政諮問会議において民間議員より提案された「21 世紀型の社会資本整備に向けて」は傾聴に値する。その課題を次の3点に絞っている。
(1)  選択と集中の「課題提起」から「徹底実行」
(2) 「新しく造ること」から「賢く使うこと」
(3) 「短期的な需要創出」から「経済成長・財政健全化の両立」へ
 特に、「賢く使うこと」について、総合的・広域的なアセット・マネジメントを推進し、社会資本を低コストで効率的に使うべきとしており、これまでのバラマキにならないインフラ構築を支援していくことの重要性を説いている。
 アベノミクス効果により株高などの効果は出てきているが、さらなる経済成長のためには民間資金やノウハウの積極的導入、コスト効果の改善などを通じて、意味ある公共投資を継続的に実施することが必要不可欠だ。これまでのPFIでは文字通り民間資金を導入し、地方自治体等にとっては資金不足を補完する魔法のツールとして学校や庁舎建設を実現させてきた。中には首長の成果を示すための不要なハコモノ建設に使われたものも少なくなかった。 
 一方、建設業界にとっても単純な建設工事受注の機会創出につながるだけのプロジェクトが多く、必ずしも利益につながるものではなかった。現在の建設業界は建設費が高騰する一方で、受注競争の中で厳しい経営環境に置かれている。

建設業のビジネスモデル拡大へ

 今回、政府としても空港や港湾、下水道などのインフラに対して、運営権を民間に売却する「コンセッション」方式、いわゆるインフラの公有民営に該当する仕組みを導入しようとしている。ここにこそ建設業のこれまでのノウハウを入れ込み、建設工事を主体としつつも運営や管理、消費者まで含めた建設産業のビジネスモデル拡大を行う絶好のチャンスであるはず。建設業界として、積極的な取り組みに期待したいものだ。
 三菱商事は原材料から製造、消費者までのすべての取引に関わる「バリュー•チェーン」を構築することにより、業績向上につなげた実例がある。建設産業としての「バリュー•チェーン」を創造すべき時だと思う。一方、行政にとっても、民間に任せた方が効率的なプロジェクトに対しては民間に任せ、公共でないとできない役割を果たすことが行政に求められていると思う。まさに、「賢く使うこと」を社会全体で実現できるチャンスとして、今が重要な時期であると思う。

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