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未来の建設業を考える:建設論評「ChatGPTで設計は可能か」

ChatGPTを使って、設計は可能か?

 いま話題のChatGPT(チャットGPT)。コンピュータープログラムの一種だが、これまでの検索方法と異なり、人間が日本語や英語などで質問すると、大規模な言語データに基づき、あたかも会話するように文章で回答するもの。
 それでは、「ChatGPTを使って、設計は可能か?」
 少しでもChatGPTに精通したみなさんであれば、大規模言語モデル(LLM)と呼ばれるChatGPTでは「図面の作成は難しい」と答えるであろう。ところが、である。

「python(パイソン)」で書いたDXFファイルを用いると

 80平米の4人家族の住宅を適当にレイアウトし、そのアイデアをDXF形式ファイルで打ち出すよう、筆者がChatGPTに指示すると、プログラミング言語「python(パイソン)」で書いたDXFファイルで返し、ファイルをCADソフトで実行すると図面らしきものが出てくる。最初は箱の組み合わせでしかないが、「子供部屋と廊下をつなげる」と指示すると、そのとおりに修正されたDXFファイルを出力する。簡単に言えば、CADやBIMに精通していなくても、ChatGPTに問いかければ、勝手にCAD用ファイルを作成し、図面に変換することが可能ということだ。これは、建築に精通していない発注者でも、図面が作成できることを意味する。

設計集団VUILD社

 さらに、デジタルテクノロジーを導入した設計集団VUILD社では、ChatGPTを用いて、自分の好きな形の椅子を3D画像で創造できる手法を開発している。「椅子を提案して」と言うと、最初に提案された椅子は、三本足の四角形の普通の単純な椅子であったのが、「カドをなくして」と伝えると、丸くしたり、「脚を特徴的に」と伝えると、V字型の脚にしたりするなど、まさにチャットしながら、画面上でものづくりが進む。このような技術が、すでに実現している。
 こう考えると、話しながら図面ができ、ものづくりができるChatGPTは、将来、設計者の脅威となるのか?
 ただし、現時点においてChatGPTが建築士同様の図面が書けるかというと、相当、道のりは長そうだ。

建設業に特化したChatGPTの開発

 一方で、建設業に特化したChatGPTの開発も進む。東京大学発スタートアップ企業の「燈(あかり)」やIT企業「mign(マイン)」では、大手ゼネコンと協業し、「AKARI Construction LLM」(CoLLM)や「chact(チャクト)」と呼ばれる、建築基準法などの関連法規や標準仕様書などをAIに読み込ませた「建設業専門ChatGPT」を開発し、専門的かつ具体的な回答・提案ができるシステムを構築しはじめている。

AI時代における設計者の役割

 本来設計とは、発注者との意見交換、情報のやりとりで、発注者の思いを聞き、法規制も踏まえながら、専門的なノウハウにより、設計図書とするものであるが、設計者や施工者も、残業規制などの生産効率向上達成のためにも、ツールとしての建設業専門ChatGPTの活用を、大いに検討すべきであろう。
 当然ながら、設計者の役割は、図面を作成するだけでなく、工事監理を含めた現場の品質管理もある。AI時代における設計者の役割は、これまで以上に創造的で、かつ、リアルなものづくりを統括する立場として、建築プロジェクト全体をマネジメントする重要な「人」としての役割が、より一層求められてくるのではなかろうか。

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