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未来の建設業を考える:建設論評「100年企業をめざして」(2022年11月8日)

最新「老舗企業」調査

帝国データバンクによる最新「老舗企業」調査(2022年)によれば、2022年8月の時点で100年を超える老舗企業、いわゆる100年企業は、4万409社、初めて4万社を超えた。

「老舗」は「仕似せ」

「老舗」は「仕似せ」に由来するそうだが、先祖代々の家業を絶やさず続けること、長い商売で信用を得て資産を築くことに由来する。江戸時代創業の企業が2,737社、それ以前の室町時代から奈良時代の企業が131社。アンケート調査でも、多くの老舗企業が大切にする言葉は、「信」と「誠」だ。一方で、100年企業に共通する特徴は、積み上げた実績にとどまらず、変化をいとわない「進取の気性」、「不易流行」にあるとも言われる。

100年企業の出現率の高い地域

100年企業の出現率の高い地域は、京都府、山形県、新潟県など、酒どころに多い。事実、老舗企業ランクの2位が清酒製造業の893社。建設関連企業も老舗企業が多く、第5位に一般土木工事業の621社。第7位が木造建築工事業の597社。8位が土木工事業の596社だ。代表格は、世界で一番古い会社と言われ、大阪に拠点を構える「金剛組」だ。創業が578年なので、1400年以上も続いている。1610年創業の竹中工務店、1804年清水建設、1840年鹿島、1873年大成建設、1892年大林組等、大手ゼネコンも100年企業が多い。
ところで、老舗企業の業種別で最も多いのが、不動産・貸事務所業の1,245社。2位の醸造業を起源とする企業も多く、もともと先祖代々の大きな土地を不動産活用しているのが、その要因らしい。3位は旅館業で738社。世界最古の宿としてギネスブックにも登録されている705年創業の山梨の「西山温泉慶雲館」が代表格だ。一方で、書店とか印刷とかの業種では100年企業数が減少しているそうだ。
後継者難に苦しむ工事会社も多いが、100年企業の後継者不在率は平均49%と、一般企業の62%と比較すると、後継者が見つかりやすいそうだ。

企業存続のためには、「仁義道徳」が重要

渋沢栄一も「論語と算盤」で、企業存続のためには、「仁義道徳」が重要であることを指摘している。正しい道理の富でなければ、その富は完全に永続することができない。社会の利益になる正しい競争をすること。一個人だけが大富豪になっても、社会の多数がそのために貧困に陥るような事業であったなら、その事業は幸福につながらない。まさに、いまのサステナビリティ、インクルージョンにつながることではないか。さらに、事業経営に利益を希望するのは当然であるとしながらも、その結果ばかりに着眼せず、まず己れの本分をつくすことを目的として、事に従うことで、企業継続が担保される。企業のパーパス、ミッション、バリューの大切さを説いている。
100年企業の出現率は全企業の2.5%。2023年も2千社の増加が見込まれるそうだ。建設業は100年企業がとても多い業種だ。信頼、誠実、不易流行、仁義道徳の精神で、社会インフラを担うみなさんの企業が100年企業、1000年企業へと、末永く継続することを祈りたい。

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