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未来の建設業を考える:「建設における法令遵守」

現在の入札方式は

 現在の入札方式は、大日本帝国憲法が発布された年、明治22年(1889年)に会計法が制定され、原則、一般競争入札とすることが決まった。ここに、「最低価格落札の原則」、「予定価格上限拘束の原則」が定められた。しかし、能力のない業者による不良工事が多発したため、明治33年(1900年)、指名競争入札を新たに導入した。
 その後は、指名競争入札を基本としていたが、93年のゼネコン汚職事件や94年のWTO政府調達協定の導入を契機に、一般競争入札が本格的に復活した。
 それ以降は、原則、一般競争入札としていたが、低価格入札や不良不適格業者の参入による品質劣化等を受け、議員立法として、公共工事の品質確保の促進に関する法律(05年)が導入され、「価格競争」から、「価格と品質の総合評価」へと転換した。
 本来は、この時、明治以来の「予定価格上限拘束の原則」から解き放れるべきであったが、相変わらず一般のマスコミは、90%台の落札率はすべて談合の疑いがあるような報道を行っており、郷原信郎氏が指摘するように、「経済が低成長に移行するに従い、一定の役割を持っていた談合システムの弊害が大きくなり、違法性ばかりが強調されて、制裁強化一辺倒に偏り、談合をやめさせることが自己目的化している」のが現状である。

建設産業としての「信頼」

 これら建設業界に対する「不信」は、産業としての存続危機、産業界における格付けの低下につながる「建設産業クライシス」を生んでいる。この状況から脱却するためには、建設産業としての「信頼」をいかに取り戻すかにかかっている。
 そのためには、単純に法令を遵守するだけの取り組みだけでは、「信頼」を獲得できない。各建設関連団体や企業が、自ら、倫理ある職能集団として、各自の役割を見直すべきであろう。
 消費者や納税者が建設会社に求めるものは、「安全で長持ちする建設物をきちんと作って欲しい。」というものである。たとえば、「長持ち」とは、当然ながら、法律で求める「品質保証期間」が基準となるのではなく、住宅であれば、一生に一回の買い物に適した期間の保証が求められるところである。

法令遵守は最低限

 そのためには、単に建築基準法や品確法を遵守するだけでなく、法令を最低限の措置として守り、それ以上に消費者の期待に応える産業界でなくてはならない。
建設産業としての「信頼」構築のためには、各自が建設の専門家としての魂に聞き、法令遵守を超えた「信用」と「倫理」により、建設産業全体を再構築できるかに、かかっているのではないか。

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