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未来の建設業を考える:「コンパクト化」(2014年)

iPhoneに込められた日本製品

 先日、iPhone6が発売された。
 中国への転売目的の大量購入や1週間で1000万台の販売など、景気の良い話題で賑やかだ。
 米国Apple社の繁栄を影で支えているのは日本の技術力。ジャパンディスプレイの液晶画面、カメラの目とも言われるのはCMOSセンサーのソニーミネベアのLEDバックライト、手ぶれ防止用アクチュエーターはアルプス電気と、日本製部品のオンパレードとなっている。携帯電話という狭い世界に、最新の技術を入れ込む技術は、まさに日本企業の十八番。コンパクト化技術の最たるものかもしれない。

日本の得意分野「コンパクト化」

 「コンパクト化」は、これ以外にも様々なところで見られる。
コンパクトカメラは、文字通り小型カメラ。それまでの一眼レフカメラに比べ、オートフォーカスやズーム機能などを備え、使い捨てカメラまで登場させるなど、各カメラメーカーがしのぎを削るところ。圧倒的に日本製が優れるとともに、市場を席巻している。
コンパクトカーは、全長4200mmまでの車を指すそうだが、国産車構想やスバル360から始まる歴史は長く、日本の自動車メーカーのこれも十八番。
 「コンパクト空間」とは小さくまとまったスペース、という意味ではなく、厳密には、数学上の空間把握。簡単に言えば、ある集合の中で有限個の部分として捉えることができる性質を言うもので、たとえて言えば、旅行の荷物を多くの所持品の中から選別することに似ているらしい。
 そう考えると、コンパクト空間とは自分の欲しいものをすべて所有することから、必要なモノを選別して、どうしても入りきらないモノを省いたうえで、必要なモノに集約させることである。

それでは「コンパクトシティ」はどうだろう。

 現在のコンパクトシティは、今年の初め改正都市再生特別措置法が施行され、更に進むことが期待されている。高齢者の急増が進む中で、住宅、医療、福祉、商業等の施設と公共交通を連携させて、コンパクトな街づくりを支援するもの。すべてがプラスになるようにも見えるが、コンパクト空間としての扱いを考えれば、自動車を捨てることとなるのか、それとも移動手段の多様化を失うのか、何が省かれるのかを明確にすることが必要ではなかろうか。
 なぜなら、自動車依存による郊外型ショッピングセンターが商業の中心となり、駅前はどうしてもシャッター通りになってしまっているのが現実。地方でも青森や秋田でも中心市街地活性化に多くの投資を行ったものの、テナントが撤退するなど経営上の課題も多いと聞く。

日本独自のコンパクトシティ構築へ

 コンパクト化によってアクセスが良くなることだけではない、コンパクトな街としての新たな魅力付けが必要ではないか。駅前に降りた時の無機質な街ではなく、地方独自の街並みの中にコンパクトシティの賑わいが生まれる。
 日本発信によるヒューマンスケールに合致した、かつ便利な都市を創造しようとする新たな試みは、まさにあらゆる業種においてコンパクト化が好きな日本人だからこそできる「日本型先進事例」が構築できる余地は大きいと思う。先般、日本創成会議が発表した「消滅可能性都市」896都市が、優れたコンパクトシティと生まれ変わるよう、新たな都市創造に期待したいものだ。

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