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第16話 ボクのミドルネーム 「サチコ」はね

今日は、ボクのミドルネーム「サチコ」の話だよ。

ボクの正式な名前は「ポッキー サチコ ヤマシタ」

これが役所に登録してあるボクの名前なんだ。

このことは昨日、話したね。



なんかすごくない?

意味わかんないけど・・・。

外国の人の名前ではミドルネームを付けることがあるけど、ワンコについてるのはボクくらいだと思うよ。

だって役所の人だってびっくりしてたもん。



そもそも、ミドルネームってどういう意味か分かるかな。

いろいろあるみたい・・・。



例えばね。

女の人が外国人と結婚する時、名字がご主人の姓に変わるから、ミドルネームとして元の姓を残すとか。

日本にも家系を継ぐコにはおじいちゃんの名前をつけたりとか。

子どもの名前にはママの姓をミドルネームとしてつけることもあるんだよね。



それはそれとして、ボクの「サチコ」っていうミドルネーム。

「サチコ」がどんなコか知りたい?



ボクだって知りたいよ。

っていうか、絶対知りたい!


ママが言うにはね。

むかしママが飼ってた柴犬の女のコ。


そのコを飼ってた頃、ママは仕事とか家事とかが忙しくて、あまりかわいがってやれなかったんだって。

お外で飼っていたんだけど、そのコが子犬のころ、ママが大急ぎで干した洗濯物が風で飛んでしまったんだって。

そしたら「サチコ」は子犬だもん。

落ちた洗濯物をかじってダメにしちゃったんだって。


その時ママはそのサチコを強く叱ったんだ。

腹が立ったんだろうね。

足で蹴ったって。


そのコはビクビクして暮らしてたんだよね、きっと。

ボクだって、ママの大事なものをかじった時、ママは大きな声を出した。

でも、その時はママはボクを叩いたりはしなかったよ。



前にそんなことがあったからだろうね。

で、そのかわいそうな女のコが「サチコ」って名前なわけ。


でね。

ママが続けてボクに話してくれたこと。


そのコは動物愛護センターから来たんだって。


って事は

虐待を受けたり

捨てられたり

もしかして殺処分寸前だったのかも。



動物愛護センターの職員さんが、当時住んでいたママのお家にそのコを連れてきた時。

そのコの足の肉球が、うっすらと汗をかいてたんだって。

下ろされた玄関の石の床が、そのコの足の周りをほんのり白くしたんだ。


わかる?

ボクにはわかるよ。

ボクもペットショップを出てから、ここに着くまですごく不安だったから、肉球にも汗をかいてたと思う。



センターの職員さんは、そのコを置いて帰る時に

「幸せになるんだよ」とそのコに言い残して帰ったんだって。



その言葉を聞いてママはこのコに「サチコ」って名付けた。

幸せになるようにと。


でもね。

ママはその子を幸せにできなかった。

だから、ボクにそのコの名前を付けたんだ。



名前って不思議だよね。

ボクの名前「ポッキー」は、ボクは使ったことがない。

誰かがボクを呼ぶときに使うんだ。


そしてもうひとつはボクの名前の最後の「ヤマシタ」。

「ヤマシタ」はママの家族の名前だ。

しょうちゃんにもママにも同じ「ヤマシタ」という名前が付いてるはず。



これって、ママがボクを家族にしてくれたってことだよね。


だから「今度生まれてくるときは、ママの子どもとして生まれておいで」

そう言ってくれたのかも・・・。


ボクは、大きく息を吸ってママの匂いを探してみた。

嗅覚のフル活用だ。

なるべく強い匂いがいいな。

ボクは、ママのベッドに飛び乗って、ママの匂いをいっぱい吸い込んだ。


ベッドの上で、ボクと一緒にいる「サチコ」というコのことを思った。

もし「サチコ」がここいいたら、ボクはお兄ちゃんとして遊んであげようと思う。

ボール遊びが好きかな。

ジャンプごっこがいいかな。

おやつだって分けてあげるよ、少しはね。


今度はボクと一緒に幸せになろうね。

「サチコ」がボクのところに寄ってきて体をボクに摺り寄せてきたようなカンジもしてきた。

ママの匂いなのか、「サチコ」の匂いなのか、

わからなくなってきたぞ・・・。


なるほど・・・。

ボクの上下のまぶたは仲良くなってきたようなカンジも。


ボクは「サチコ」を感じる方に体を向けた。

ここで寝たらママ怒るかな、マズイかも。

そんな思いも無きにしも非ずだけど・・・。


ボクらは夜行性だから、昼間は眠いんだよね・・・。






今日も最後まで読んで頂きありがとうございます。

また次回、お会いできるのを楽しみにしております。















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