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催花雨とマグノリア

このマグノリアの写真を撮ったのは、とある東京の庭園で、もう見頃を過ぎた頃だったと思う。
平日の昼間、しかも雨も降っていたので、客は私一人だけ。

マグノリアは、花びらが薔薇のように重なっているもの、菫のように分かれているもの、白いもの、薄紅のものと、多種多様だった。

エリザベス。ウォーターリリー。サヨナラ。
一本一本の木を、名前を確かめながら見て回る。

濡れてかじかむ手で写真を撮っていたから、特別楽しい思い出ではないけれど。

でも、綺麗な花、しぼんだ花、つぼみ、散る様、地面で変色しつつある花びら――
あの場所のマグノリアを全て独り占めできた、ささやかな宝物のような思い出だ。
誰にも見せずにしまっておいて、たまに一人で眺めるような宝物。

その意味では、あの催花雨は花のつぼみを開かせるだけでなく、私に特別な思い出を芽吹かせていったのだと思う。

今度はできれば、晴れた日のマグノリアも見てみたい。
また、一人で。

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