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赤字ローカル線の国費負担による存続を行う場合に必要になる「存続のための基準」の必要性について

石破首相 「新しい日本北海道から」 道内5か所で応援演説 JR北の地方路線減に疑問

 選挙戦の中、鉄道オタクとしても知られる石破首相から鉄道運輸政策に関する発言がありました。JR北海道が進める赤字ローカル線の廃止や運営形態変更について疑念が示されています。

 日本における地方鉄道は、地域社会にとって欠かせない交通手段であり、地域経済や住民生活に大きな影響を与えています。しかし、人口減少や自動車の普及により、特に地方のローカル線は利用者が減少し、多くの路線が赤字に苦しんでいます。こうした状況下で、JR北海道をはじめとする鉄道会社は経営難に直面しており、赤字路線の廃止が検討されています。これに対して石破茂氏が疑問を呈し、赤字ローカル線の存続に関する議論が再燃しています。

 民間企業であるJR北海道が赤字ローカル線を恒久的に存続させることができない理由と、補助金や上下分離など国費負担を伴う存続策を採用する際に求められる路線選定基準の必要性について述べたいと思います。

  1. 民間企業としてのJR北海道の経営課題

JR北海道は、1987年の国鉄分割民営化により発足した民間企業です。分割民営化の目的の一つは、国鉄の赤字体質を改善し、健全な経営を実現することにありました。しかし、広大な地域にわたる北海道では、特に利用者の少ないローカル線が多数存在し、これらの路線の維持には多額の費用がかかります。こうした状況下、民間企業としてのJR北海道に赤字路線を恒久的に存続させることを強制することは、経営的に非常に困難です。

1.1 経営的自立の限界

民間企業は収益を上げ、株主への還元を行うことが基本的な使命です。JR北海道のような公共性の強い企業であっても、経営が破綻すれば鉄道事業そのものが存続できなくなります。特に、利用者が少なく収益を見込めないローカル線を維持することは、会社全体の経営に対して大きな負担となります。

経営資源の制約から、赤字路線の維持に多額のコストを投じ続けることは、他の路線やサービスにも悪影響を及ぼしかねません。実際、JR北海道は経営難から設備投資やサービスの改善が遅れており、安全性の問題も浮き彫りになっています。これらの状況を鑑みれば、民間企業として赤字ローカル線の存続を恒久的に強制されることは現実的ではないと言えます。

1.2 社会的使命と経営のバランス

一方で、JR北海道には公共交通機関としての社会的使命があり、特に地方の住民にとっては鉄道が唯一の公共交通手段となる場合も少なくありません。このような社会的ニーズを踏まえ、単純に赤字だからといって路線を廃止することは、地域の住民生活に深刻な影響を与える可能性があります。しかし、この社会的使命を果たすためには、JR北海道が民間企業として健全な経営を維持することが前提となります。したがって、赤字ローカル線の存続に関しては、経営と社会的役割のバランスをどのように取るかが大きな課題となります。

2.赤字ローカル線存続に向けた国費負担と選定基準の必要性

赤字ローカル線の存続が地域社会にとって重要である一方、JR北海道の経営体力だけではその維持が困難であることから、国や自治体が何らかの形で支援を行うことが求められています。具体的には、補助金の支給や上下分離方式の採用が考えられますが、これらの政策を実施する際には存続させる路線とそうでない路線を区別する基準が必要です。

2.1 上下分離方式の可能性

上下分離方式は、鉄道施設の保有と運営を分離する方式です。インフラの維持管理を国や自治体が担い、運行は民間企業が行うという形態をとることで、民間企業の経営負担を軽減しつつ、公共交通機関としての鉄道を維持することが可能になります。上下分離方式はすでに欧州などで採用されており、日本国内でも一部地域で実施されています。

ただし、この方式を導入する際には、国や自治体がどの路線を存続させるかという選定基準が重要です。全ての赤字路線を上下分離することは財政的に不可能であるため、限られた資源を効果的に配分するための基準が必要となります。

2.2 存続路線選定のための基準

国や自治体が赤字ローカル線を存続させる際に、どの路線を対象とするかの基準が明確でない場合、不公平感が生じる可能性があります。例えば、すでに廃止された路線と存続が決定された路線との間で、地元住民からの不満が噴出することが考えられます。

路線の存続基準を策定するにあたっては、次のような要素を考慮する必要があります。

  1. 地域の交通需要: 利用者数が少なくても、他に交通手段がない地域では鉄道の存続が重要です。

  2. 経済的影響: 鉄道が観光や地域経済に与える影響も考慮すべきです。観光地へのアクセス路線は、地域振興に寄与するため、存続が優先される可能性があります。

  3. 財政負担の均衡: 国や自治体の財政状況を踏まえ、どの程度の負担が可能かを見極める必要があります。持続可能な補助制度を設計しなければなりません。

2.3 存続路線選定における透明性と公正性

存続路線の選定においては、透明性と公正性が求められます。選定基準が曖昧であると、恣意的な決定と見なされ、地域間の対立を招く恐れがあります。したがって、路線選定にあたっては明確な基準を定め、それを公にすることが重要です。また、地元住民や自治体との対話を通じて合意形成を図るプロセスも必要です。

結論

JR北海道に代表される赤字ローカル線の問題は、地域社会にとって極めて重要な課題です。しかし、民間企業としての経営体力には限界があり、赤字路線の存続を恒久的に強制することは現実的ではありません。一方で、国費を投入して赤字路線を存続させる場合には、存続させる路線とそうでない路線との整合性を保つための基準が必要です。上下分離方式や補助金を活用しつつ、透明で公正な選定基準を策定することが、持続可能な鉄道交通の確保に繋がると考えられます。

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