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「相棒 season22」を見て、思うこといろいろ。

今年も「相棒」が始まりました。秋の到来を感じますね。
今作でシーズン22。私は刑事貴族(2、3)も観ていたので、水谷豊さんには、もう30年近いお付き合いをいただいてます。…いや、私はただの視聴者なので、御本人とは付き合いどころか、一切面識はないのですが。
もし仮にお見かけするようなことがあったとき、「あっ、こんにちは!御無沙汰しています。」と知り合い感覚な台詞を口にしてしまいそうな自分が怖いです。

それはともかく、(少し前にですが)第1話と第2話を続けて視聴しました。警察組織内の政争とか、公安部の巨悪云々という部分は抜きにして、脚本の本流部分に関しては、すごく上手いなと感じました。「嘘をつくのが得意な」亜佐子を演じる栗山千明さんの鬼気迫る演技にも引き込まれました。

人間の思い込みの力は強力です。強迫観念なんて言葉もあります。
今回の話では復讐こそが、亜佐子にとっては唯一の救済だったわけです。全てを差し出して、全てを失っても構わないとまで思い至らしめた、救済への道。それが殺人による復讐。「そこに至るには、この方法しかない」と思い込んでしまったら、もう後には引けません。人間って、そういうものだと思います。

今回のタイトル「無敵の人」が、誰のことを指すのかは、シリーズが終わるまでわかりません(というか、それがわからないくらいの、含みのあるシリーズ構成にしていただきたいという、私の願望です。)。

シンプルに、亜佐子だとすれば、彼女もまた、犯行時には「無敵の人」に堕ちていました。幸い、彼女は、確かに愛されていた日々があったことを思い出し、その憎悪と執念には一応の幕が下ろされたわけですが、世間一般にいう「無敵の人」には、そういうものすらないかもしれません。

数年前に「JOKER」という映画が流行しました。この流れで言えば、アーサーが無敵の人(ジョーカー)になるまでの過程を、これでもかとばかりに冷酷に描いた作品でした。どこにも救いなんてありませんでした。

あそこまでの人はなかなかいないにせよ、一般的な無敵の人もまた、信じたものに裏切られ、自らの能力や環境に失望し、守るべきものすらないすっからかんな日常に絶望していたり、そうした既にいかんともしがたい現実、先の見えぬ未来への不安や悲観、といったものが、必ずその背景にあると思われます。

そうした人は、そもそも人との結びつきを求めたがらないから、何者かから愛を与えられたり、ということでの脱・無敵化は期待できないでしょう。そして、例えば、彼らが一生の不安を抱かぬほどのお金を渡す、というようなことも、全く現実的ではありません。

現状、無敵化してしまった彼ら彼女らを救うことは、きっとできません。残酷ですが、そういう人が存在してしまうこと自体が、仕方がないと言えます。

言うまでもありませんが、いかなる理由があれど、私が「無敵の人」の凶行を肯定することは、ありません。現実が変わらないなら、そして、助けてあげることもできないなら、無敵の人と共生していく覚悟も必要だ、という話です。

さて、相棒の名セリフ企画をすると必ず上がる言葉があります。

「我々の仕事は無駄だと思える捜査をコツコツやること。無駄だと思える調査に骨身を削ることです。それが刑事の仕事です。…」

というものです。
聞き込み作業を横着しようとした亀山に対し、右京さんはそう叱責しました(亀山一期時代の話です。)。

自分の仕事、やっていることは、右京さんとはまた違いますけど、それはひとつさておき、事実の立証、という点では、右京さんのやっていることに通ずるところがあります。なので、自分の仕事においても、これはやはり大事なことです。

なぜか。これはもう、「鬼哭街」の闇医者の台詞ほぼそのまんまなんですが、

無駄(失敗)も、無駄(失敗)という事実が確定した時点、つまり、

「事実ではなかったこと、関係がなかったこと、あり得ないこと、できなかったこと」

を確定させた時点こそが、事実の立証の完成の過程における、その先への偉大な一歩となるからです。
可能性を確実にひとつ潰せた、わからないという状態を脱した、これはすごい進歩です。

一番ダメなのは、あれこれした上での「保留」「先延ばし」、言い換えれば可能性の存続です。

これは本当に徒労以外の何ものでもないので、遅かれ早かれ「結局、わかりませんでした。」となることを想定していながら、それを部下にさせる人というのは、ちょっとダメだろう、と個人的には思っています。そういう人に限って、本人は上手く仕事を割り振ったとか、部下の管理をしたとか思ってそうなのが怖いです。

ここ数年、「無駄な仕事」とか「生産性」ということがよく議論の的になります。私は仕事が嫌いなので、仕事観みたいな話をしたくないのですが、仕事をした気になっている人と同じくらいには、仕事をさせた気になっている人って、いるんじゃないでしょうか。

それはそれとして、今日の陣川回を楽しみにしています。実際に見るのは、週末になりますが。

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