「パチンコにいきました」-エッセイ
先日、「なぜタラオだけ家族LINEに入らんのか」と、なんだかおかんむりらしい父と、常日頃から父の愚痴を浴び続けるうちにうっかり絶を修得してしまった母に諭され、不本意ながらしぶしぶグループLINEの承認ボタンをタップしたのですが、時折届く父からの満足げな自撮りや動画などにせっせと非表示操作を繰り返していたところ。
「…既…未…遅…! 何故…?! 既読無視…? 不具合……!? ……許……否……死……!」
"白の賢人"と化した父親から長文お叱りLINEを頂くはめになってしまいました。僕もおじさん構文の使い手になりたい。たららんどと申します。なります。
さて、表題の件ですがパチンコにいってきました。これは大変珍しいことで、僕は常々パチンコとは趣味の乏しい人間もしくはお金にだらしない人間または薄汚えクルタ族ぐらいしか行かない遊びだと認識しているからです。しかしながら、
「その人を知りたければ、その人が何に対してちいかわみを感じるかを知れ」
と、いつかミトおばさんに諭されたことを思い出し、月末だしお金もないし、一番恐れるのはこのハチワレみがやがて風化してしまわないかということだよなあと思い直したわけです。
そんなわけで、まずパチンコに行くための下準備として銀行から3千円を下ろしてきました。
こいつが本日の軍資金であり制約と誓約なわけです。これ以上は使わないからね😅💦💦😘という自らに課した厳しいルールを遵守することでパチンコに勝つためのうさぎ感というか何というか、威力と精度を著しく向上させることが狙いなわけです。
店内に入ると、「ワァ…了…」と思いました。うるさかったからです。なるほどここがドラマとか映画に出てくるアレだ。アレだ!と思いました。
さっそく席を探すのですが、なんかすんごい人が密集してる虫けら共の列と、ガラッガラの列が極端にわかれています。データによれば私の勝率は100%です(メガネくいっ)みたいなこと言わなさそうな負け犬達の近くにいるとストレスが溜まるので迷わず誰も座っていない列の席を確保しました。
辺りを見渡してみます。誰もいません、快適。最高。
だんだん楽しくなってきました。
なんというか僕は常々、運とかいうオカルト概念の存在を割と肯定的に捉えていたりします。というのも、明らかに勝ち癖というか負け癖というか、運のいい奴というものは実際にいるからです。そう、僕のことです。人よりもラッキー幸運、幸せハッピーが宿命付けられている存在。それが僕こと、サイケデリックプラスチックマシーンこと、最後の皇帝こと、たららんどなわけです。負け犬どもよ、ひれ伏せ! 敬語使え!
もうこの瞬間で既に楽しい。
ワクワクが止まりません。目の前にはなんか釘がいっぱい刺さったカラフルな台と液晶と3Dみたいな細工が見てて楽しい感じです。うんうん。幸先良さそう、般若面が神社の境内で夜な夜な刺しまくった台、良さそう。
(……どこにお金を入れればいいの?)
キョロキョロと辺りを見渡してみます。誰もいません。こんな時、「お、お助けー」というと大概の人は優しくしてくれるのですが誰もいません。
悲しい😢みんなどこ行っちゃったのカナ💦💦なんてね🤣😘❤️ちょっと弱音吐いちゃった😜😍😍ここで問題ダヨ😁💓どうやって僕がこの窮地を脱することができたでしょ〜か❓❓正解者にはナント🍰美味しいお酒が楽しめるホテル🏨へのチケットをプレゼントしてあげるよ😆💓💒チッチッチ⏰チッチッチ⏰わかったカナ⁉️おーい😅💦残念時間切れ😅本当は、大丈夫だよ‼️iPhoneの、スマフォあるから、調べると、わかるんだよネ😘❤️🥰ビックリした⁉️頑張って考えてくれたから、特別に、今度美味しいごはん行こうね😁ホテル🏩誘ってあげるね🥰🥰😊💒
早速調べてみます。「パチンコ 負け犬 お金を入れるところ」
全然ヒットしません。検索の仕方はあっているはずなのに、貧乏人の癖にパチンコに通い有り金を全部むしり取られている人のYahoo知恵袋の記事が上位に食い込んでいるだけで、お金の入れるところが依然わかりません。役に立たないなGoogle。オッケーじゃないじゃん。
困ったな。でも、確かに、行動学の見地からも人は迷ったり、未知の道を選ぶ時には無意識に左を選択するケースが多いらしい。とエンペラー時間が口癖の彼が言っていた気もします。台を観察してみると左側上部にお金の挿入口を発見しました。もっとわかりやすく作るべき。ポップもしくはぺプラ貼っとくべき。
千円を入れます。右手側のレバーを回します。出ました。弾かれて落ちていく無数の玉。なんか、画面中央の穴に玉が入るとルーレットがスタートされるみたいです。いけっ!揃えっ!すぐ揃って金を吐き出せ!ざわざわさせろ!
あっという間に千円分の玉が吸い込まれてなくなってしまいました。十分も経ってません。なんなの意味わかんない。
もう千円を追加しました。消えました。速い…!もしかして僕は瞬間的に気絶していたのかもしれません。
ここで僕に与えられた選択肢は二つ。最後の千円を特攻させるか、撤退するかの二択です。
どちらを選んでも本当の正解じゃないけど、どちらか必ず選ばなくちゃならない時・・・いつか来るかも知れないんだ。というわけです。困ったな。
そういえばの話なのですが、皆さんはパチンコを嗜む男についてどんな印象をお持ちでしょうか。
かつて僕がまだ十代だった頃に遡るのですが、とあるネットニュースにこんな見出しが上がっていました。
【読者が選んだ100年の恋も醒めた男エピソード5選】
とんでもなく興味をそそられる記事でした。これは絶対に見なくてはなりません。
第5位、【オリジナルソングをプレゼントしてくる男】
酷い記事だと思いました。
第4位、【自作のポエムを披露してくる男】
酷い記事だと思いました。
第3位、【アニメや漫画のセリフを引用したがる男】
……誰? 書いたの。
第2位、【オリジナルのナルシスト小説を読ませてくる男】
……俺のこと……ずっと見てるってこと?!
第1位、【パチンコにハマっている男】
これだけ違う! これでまだ、戦える!!
そんなわけで最後の千円札を入れました。まずここから揃えなければ、100年の恋を終わらせなければルーレットを揃えることなどできはしないと思ったからです。体感2秒でなくなりました。悲しい🥺悲しいけど、これって戦争なのよね。
すごすごと引き下がる他ありませんでした。
辺りを見渡してみます。誰もいません。負け犬はどうやら僕だけのようです。
悔しい。こんな気持ちは久しぶりでした。思えば僕はいつから人を見下し、優生思想に取り憑かれ、他者を馬鹿にするようになっていたのか。
自分が負け犬の境遇に落ちた今だからこそ気がつきました。そうだよ、みんな同じ人間じゃないか。みんなみんな生きていて、ただそれだけで素晴らしいのに。それだけでいいはずなのに俺ってやつは……。なんだよ薄汚えクルタ族の生き残りってとんでもねえヘイトじゃないか。最低だなレオリオ、絶対許さないから!
涙が溢れそうです。しかし、このまま負けっぱなしのままでいいはずがありません。僕はズボンのポッケを漁りました。なんかいつも忘れちゃうのですが、たまに小銭とかお札が入っている時があるのです。今回もありました。
オレの財力の残りは(千円札)一枚までで十分・・・!!(つーかこれが限界)
入れました。右手のレバー控えめに回します。吸い込まれていく銀の玉。いかにお前らが気配を絶ち音を消して近づこうとも、この中に入り込めば即座に形と動きを感知し斬る!!
いつでも来い!!
勝ちました。1万とんで4千円でした。
ここで勝っちゃダメじゃん……と思いました。なんだこのオチ。額も中途半端です。もう二度といきません。
お肉かお酒買いたいです