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タラ夫と行く「藝大コレクション展2020」

東京藝術大学大学美術館で開催中の「藝大コレクション展2020 藝大年代記(クロニクル)」にやってきました🐟💨

世界で活躍するアーティストを数多く輩出する東京藝大。日本随一の美術学校が収集してきたコレクションとはいったいどんなものなのでしょうか?
さっそく覗いてみましょう👀

第1部「日本美術」を創る

東京藝大は1949年にいまの名称となりますが、その前身である東京美術学校(美校)の開校はなんと1889年にまで遡ります。

当時、美校の開校準備に向け、教員や学生の教材となる資料として収集されたのが今日に続く「藝大コレクション」の礎です。美校校長の岡倉天心が掲げた「本邦固有の美術を振興する」という目的のもと、いまや資料と呼ぶにはおそれ多い古美術品が集められたのです。

たとえば当時収集されたもののなかには国宝《絵因果経》や伝・狩野永徳の重要文化財《松鷹図屛風》といった名品も含まれ、今でも学生たちの良き教材となっているようです。

もちろん収集品は日本の古美術だけではありません。1896年に西洋画科が新設されると、洋画も多く収集されました。

当時の西洋画科を主導したのは黒田清輝と久米桂一郎。
明治美術界においては「新派=紫派(むらさきは)」とされる黒田ですが、収集品にはいわゆる「旧派=脂派(やには)」と呼ばれる作家の作品も集めるなど、日本における洋画の新旧を客観的に捉える姿勢も見受けられます。

「脂派」「紫派」ってなに?
と気になる方は徳島県立近代美術館さんの「脂派」「紫派」の解説も参考にしてみタラ🐟

こちらは脂派の代表、高橋由一の《鮭》。重要文化財です😯

タラ夫もいっそ切り身になって重文に名を刻めるか…!?

ちなみにこうした名品の収集は古美術のみならず、同時代の作家や教員、卒業生、学生の作品も含まれます。
現在に至るまで、こうした優れた実物に教員・学生が直接触れ、制作の参考にしてきたんですね💡

そんな藝大が誇る当代随一の美術品をもうすこしだけ見てみましょう。

こちらは上村松園《序の舞》(重要文化財)。
1936年の文展(文部省美術展覧会)招待展に出品された作品で、その後政府買上品として東京美術学校に移管されたものなんだとか。

国によって認められた一級の名品もまた、藝大コレクションの一角を成しているんですね_φ(・_・

第2部「自画像をめぐる冒険」

第1部で見た作品がいずれも学校によって収集された「教材」とするなら、第2部で紹介されているのは生徒による作品
なかでも本展で取り上げているのは、卒業制作の一環でつくられた「自画像」のコレクションです。

1896年、美校に西洋画科が開設されてから今日にいたるまで、およそ120年分の学生たちの自画像が収蔵されているのです!😲
なんという伝統…!🐟🐟

1898年卒業の北蓮蔵、白滝幾之助の2点の自画像から始まる西洋画科の自画像は、太平洋戦争終戦間際からの数年と戦後約20年を別にすれば現在も続く、継続性の高い収集資料である。その後、1949年に東京美術学校から東京藝術大学に改組したのち、日本画(1977年以降)、彫刻(1993年以降)、工芸(1997年以降)の各科も自画像を定期的に納入するようになる。その結果として、東京藝術大学大学美術館の所蔵品として登録されている自画像は6000件を超え、それは今後も増え続けるのである。
(展覧会パンフレットより)

本展では、そんな膨大な自画像コレクションから約100点が展示されています。

なかには藤田嗣治や佐伯祐三、小磯良平といった誰もが耳にしたことのある有名人もちらほら。まだ画風が確立される以前の、初々しい筆致は見ものです。

さらに時代によってときどきの流行りも垣間見え、まるで美術史を見ているような気にさえなります。

自画像はサイズが指定されているようで、展示室には同一規格の作品がズラリと並びます。まさに圧巻…🙈
藝大が歩んだ歴史の長さを感じずにはいられません。

…といいつつ、現代ではそうした自画像の制約から自由な作品もあるそうで、会場ではちょっと異色の「自画像」も展示されています😄
ぜひ実物は会場でご覧ください!

まとめ

主に「教材」として収集された、しかしどれも質の高い名品たちをまとめて見ることができる第1部と、卒業制作の一環で制作された学生たちによる「自画像」コレクションを通覧する第2部。

まったく違う側面からのアプローチながら、藝大(そしてその前身の美校)という日本を代表する美術学校が掲げる「本邦固有の美術を振興する」という根源的なミッションが、豊富で多様なコレクションから浮かび上がってくるようです。

会期が短いので、まだの方はお早めにどうぞ!

藝大コレクション2020

会期:2020年9月26日~10月25日
会場:東京藝術大学大学美術館(台東区・上野公園)
開館時間:10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで)、月曜休館
詳しくは藝大美HPもご覧ください

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