見出し画像

8月5日 「SWATCH」

8月5日(土曜日)

 6月24日、祖父の墓参りに行った帰り、腕時計が止まっていることに気づいた。電池式で時々電池が切れるのだけれど、まだ切れるには早すぎる気がした。蒸し暑い日で、ガラスの内側が結露しているようにも見えた。家に帰って電池を交換しても、秒針が動くことはなかった。
 15歳の3月、高校の合格発表を父と見に行って(合格していた)、菊池寛通りのステーキ屋で一緒にステーキを食べた。そのまま当時瓦町駅にあったそごうの時計屋で腕時計を買ってもらった。それ以来、22年間、僕はこのSWATCHの腕時計を使い続けた。動かなくなったのはそういう時計だった。

 今度、小学生女子と都内に行くことになり、「小学生女子が楽しい場所は竹下通りだ」という助言を受けて、竹下通りを下見することにした。20年ぐらい前に歩いたことがあるのだけれど、どこにも立ち寄らなかったし、ほとんど何も覚えていない。通ったな、という記憶があるだけ。
 今日も相変わらず蒸し暑く、日なたに立つと背中から汗が噴き出る。風があるのがまだ救いだ。新しくなった原宿駅を降りる。昔の方が良かったなと悪態をつきたいところだが、古い駅舎のこともよく知らない。黙って竹下通りへ向かう。
 いやはや、すごい数の人だ。しかし見た感じ多くの人は歩いてそのまま通り抜けていて、店に入る人は少ないように感じる。あるいは人の数が多すぎてそう感じてしまうだけかもしれないが。これではただ通り抜けるために来たようなものだ。でもわざわざ立ち止まったり来た道を戻ったりしたいとも思わない。夕方が近く日陰が多くなっていたことが救い。
 しかし本当に小学生女子はここを楽しめるのだろうか。もう少し年齢が上の、中高生向けの場所の気がする。あと小学生女子が迷子になったら見つけられる気がしない。実際、年に何人かここでいなくなっているのではないか、そんなことを思うほどの混沌だった。この程度で音を上げてしまうのは、歳をとったということなのか。

 そのまま表参道に抜けて、スウォッチストアに行く。実はスウォッチの旗艦店は表参道にある。パパからもらった腕時計に22年の感謝を告げ(オ・パキャマラド)、新しい時計を買う。新しいのも22年ぐらい使えるといいのだけど。
 表参道をしばらく歩いた後、千代田線と小田急を乗り継いで世田谷代田に出てボーナストラックへ。広場に置かれたテーブルで大浪漫商店の魯肉飯や胃袋にズキュンはなれの焼き菓子を食べる。日も暮れて、屋外では食事をする人やグラスを傾ける人、手持ち花火で遊ぶ人たちなど。活気があるんだけどいやな騒がしさがあるというわけではない。つい先ほどまで自分がいた騒々しさから、まるで別世界だ。小学生女子とこういうところに来ると楽しいだろうなと思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?